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債権法改正 ―法定利率の改正について―

-力丸ブログ , ■弁護士ブログ

2018.11.21

力丸です。

改正民法・商法(改正債権法)の施行が迫っています(2020年4月1日施行)。改正されるもののうち,法定利率の改正について書きます。

【現行法】

民事法定利率 5%
商事法定利率 6%

【改正法】

一律3%(3年毎見直しの変動制)

法定利率は,主に,遅延損害金の利率とされるほかは,交通事故等による損害賠償項目の逸失利益算定の前提とされていますので,① 改正によってどのような影響があるのか,② なぜ改正されたのかをご紹介します。

まず,「逸失利益」とは,将来得ることが出来たはずの収入を失ったことの賠償を言います。

将来の年収分の損失も現時点での一時金賠償(一括支払い)とされるのが原則となります。
しかし,法律上,金銭は所持している間は利息がつくという考え方がとられていますので,将来得られるはずだった年収が現時点で支払わられる場合,利息を控除した上での支払い義務がある,という取り扱いになります(「中間利息控除」)。

中間利息控除における利率は法定利率とする,との最高裁判決があります(最判平成17年6月14日)
例として,【 交通事故等によって,現在(2018年)植物状態となってしまった年収500万円の被害者の逸失利益 】について考えてみます。

まず,2019年に得られるはずであった年収500万円については,民事法定利率である5%の利息を控除した上で支払う,ということになります。
要は,現在の価値として476万2000円を賠償すれば2019年には利息5%が加算されて概ね500万円になる,というのが,中間利息控除による現価計算の考え方です。

(計算式)
※ 476万2000円×1.05≒500万円
※ 1÷1.05≒ライプニッツ係数0.9524(小数点以下5桁目四捨五入)
※ 500万円×労働能力喪失率100%×ライプニッツ係数0.9524=476万2000円

しかし,現在,定期預金に預けるなどしても5%の利息はもらえませんので,2019年には利息が加算されて500万円になる,という前提は,やはり現実とは乖離しています。

さらに,中間利息控除は,複利計算方式(利息を元本に組み入れて次期利息を計算する方式)による計算となっています。
【 交通事故で現在(2018年)植物状態となってしまった年収500万円の被害者 】の例について,32年後の2050年に得られるはずであった年収500万円は,どのように算定されるのかを見てみましょう。

まず,法定利率5%を前提にしても次のように計算できるので,2050年の年収500万円の現在価値は,192万3077円となるようにも思えます。
※192万3077円+(192万3077円×0.05×32)≒500万円

しかし,裁判では,複利計算方式により,32年後(2050年)の年収500万円の現在価値は104万9331円となります。

(計算式)
※ 104万9331円×1.05×1.05×1.05×1.05×1.05×・・・(1.05の32乗)≒500万円
※ 1÷(1.05の32乗)≒32年後の年収の現価計算のためのライプニッツ係数0.20986617

そして,2050年までの32年間分の逸失利益は,2018年から2050年までの年収を,それぞれ同じ様に計算した金額を合算したものとなります。

(計算式)
※ 1年後の年収現価+2年後の年収現価+3年後の年収現価+・・・+32年後の年収現価=32年分の年収の現価
※ 1÷1.05+1÷(1.05の2乗)+1÷(1.05の3乗)+・・・+(1.05の32乗)≒32年分の年収の現価計算のためのライプニッツ係数15.8027(小数点以下5桁目四捨五入))
※ 500万円×労働能力喪失率100%×ライプニッツ係数15.8027=7901万3500円

結論として,現行法では,32年間の労働能力喪失に伴う逸失利益は金7901万3500円とされます。

以上のように,これまでの後遺障害の損害賠償については,法定利率5%の中間利息控除が前提とされてきました。
しかし,法定利率が改正されることで,中間利息控除の利率も変わることになります。
「法定利率は3%としつつ,中間利息控除の利率は5%を維持する」という法務省法制審議会の中間試案もありましたが,その後の議論を経て,結局中間利息控除の利率も3%となることとされました。
利率の適用は,損害賠償請求権発生時(事故時)とされていますので,2020年4月1日施行より前の事故であるのか同日以降の事故であるのかで区別されることになります。

■逸失利益の損害賠償額が増額することになるので,損害保険料も増額する流れとなるでしょう。

■なお,上記複利計算によって年収500万円に回復するという前提での中間利息控除の考え方の合理性などについても,厳密には,議論の余地は残っているところと思っています。

 

弁護士 力丸

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