公開日:2019.01.25
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法定利率の改正と逸失利益の算定への影響
【本記事の監修】 弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋 (代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。
目次CONTENTS
改正民法・商法(改正債権法)の施行が迫っています(2020年4月1日施行)。
今回は、法定利率の改正についてご紹介します。
改正後の法定利率
現行法上の法定利率: 民事5%・商事6%
↓
改正法上の法定利率: 一律3%(変動制[3年毎見直し])
法定利率が活用される場面とは
契約等の場面における利息(利率)は、基本的に合意によって定めることができるので(約定利率)、法定利率が活用される場面の多くは、不法行為等の損害賠償金の不払いの遅延損害金の算定や、交通事故等で被害者が死亡した場合や後遺障害の残存した場合の逸失利益の算定です。
逸失利益とは
逸失利益とは、将来得ることが出来たはずの収入を失ったことの賠償です。
将来の年収分の損失も現時点で一時金賠償(一括支払い)するのが原則となります。
法律上、金銭は所持している間は利息がつくという考え方がとられていますので、将来得られるはずだった年収が現時点で支払わられる場合には、利息を控除した上で支払われることになります(「中間利息控除」と言います)。
逸失利益の計算
例えば、【 交通事故によって、2018年現在、今後のみ1年間仕事が出来なくなった、という年収500万円の被害者の損害(逸失利益)】について考えてみます。
2019年に得られるはずであった年収500万円について、中間利息控除の考え方によって、現行法上、“ 現在の価値として476万2000円を支払えば、2019年には法定利息の5%が加算されて、概ね500万円になる ”という前提での取り扱いになり、逸失利益の賠償金は476万2000円となります。
改正法が適用される仮定であれば、法定利息が3%になるので、逸失利益の賠償金は485万4369円となります。なお、利率の適用は、損害賠償請求権発生時(事故時)と定められていますので、2020年4月1日施行前の事故であるのか同日以降の事故であるのかで現行法が適用されるのか改正法が適用されるのかが区別されることになります。
賠償金が増額することになるので、損害保険料も増額する流れとなるかもしれません。
※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。