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相続問題と株式の承継

-力丸ブログ , ■弁護士ブログ

2018.04.24

【 Q 】

一人株主で中小企業を経営しています。
子に長男と次男がおり,妻は既に他界しています。
すぐに経営を任せるわけにはいかないものの,私の亡き後は長男を後継者にと考えています。
将来,会社を長男に継がせるために,どのような事をしておけばよいでしょうか。

 

【 A 】

佐賀新聞のコラムでも概略を説明したものですが, 事業の承継のためには色々な問題が生じうるところ,今回は,株式の承継に特化して記述します。

 

■まず,何もしないまま相続となった場合の法律関係を説明しておきます。

株式は,相続されると,相続分に応じた割合での相続人の準共有状態となります。

例えば発行済株式総数100株の場合,長男と次男とに50株ずつ分配されて相続されるわけではなく,1株ずつが,持分2分の1準共有状態となります。
議決権行使には過半数の持分が必要なので,2分の1の持分では議決権を行使できません。

子らの意見が割れたり遺産分割で揉めたりすれば,会社の意思決定をすることができない状態,いわゆる「デッドロック」(行き詰まり)の状態に陥り,事業が大きく停滞してしまうことが懸念されます。

 

その予防策として,種類株式の活用遺言民事信託について以下お話します。

 

■種類株式の活用

長男に株式の全部(又は一部)を生前贈与してしまう方法では,まだ経営経験の浅いと感じている長男に,早くも会社の実権(の一部)を譲ってしまうことになりそうです。
しかし,この経営権に関する問題は,議決権制限株式取得条項付株式拒否権付株式(通称「黄金株」)などの種類株式の活用によって対策することが可能です。

しかし,種類株式を新たに発行したり,普通株式を種類株式に転換したりするには,会社の定款や法人登記の変更などの手続が必要になります。
また,黄金株はデッドロックの要因となりますので,後継者以外に渡ってしまわないよう手当を講じる必要があります。

 

そこで,会社の定款変更等をせずに事業承継を行うための主な方法として,遺言民事信託も検討しましょう。

 

■遺言

遺言については,遺言書を作成して,株式の相続人を長男とし,遺産分割方法を指定しておくことになります。
新たな遺言書を作成すれば,その新しい遺言書が有効になり,ご自身のみでいつでも変更できるのはメリットのひとつです。

しかし,他方で,将来ご自身の判断能力が多少低下してきた場合に,相続人から促され,判断能力の乏しいままに新たな遺言書を書いてしまうようなケースもありますので,注意が必要です。
また,遺言書の検認,株主名簿の名義書換等の手続に一定期間を要することはひとつのデメリットとも言えます。

 

■民事信託

民事信託のバリエーションはいくつかあります。

例えば,経営者が,信託銀行等(受託者)と,次のような条件の契約内容で株式を譲渡するという信託契約を締結することが考えられます。

 

①議決権行使の指図権は経営者(委託者)が有し,経営者の指図に従い,受託者が議決権行使する。

②経営者の死亡により,信託契約は終了する。

③信託契約の終了に伴い,受託者は長男に株式を交付する。

 

信託契約では,死亡後も一定期間の効力を継続させることができます。
例えば,信託契約の有効期間を,「経営者の死亡後10年間」などとして,その間,後継者には議決権行使の指図権のみを与えておくことなども可能です。
死亡によって当然に契約内容に応じた効力が生じ,比較的期間を要しないのもメリットです。

また,民事信託は,遺言と同様に,事業承継に関すること以外においても活用できます。
例えば,自身の預金や自宅などの財産を対象に子と信託契約を締結し,死亡後は信託契約に従って財産を分けるように,と決めておくことなどが可能です。

一方で,民事信託については,信託法で規律されており,誰とでも自由な契約を締結できるわけではありませんのでご注意下さい。

 

■まとめ

以上,ご紹介したいずれの方法をとるにせよ,次男の遺留分には配慮する必要があります。

事情に応じて最適な方法は異なりますので,ご検討の際には専門家へのご相談をお勧めします。

 

 

弁護士 力丸

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