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破産者マップの問題点

-桑原ブログ , 弁護士ブログ

2019.05.30

今年3月に、政府の個人情報保護委員会が、自己破産等の手続きをした方の氏名や住所をネットに掲載していた「破産者マップ」に対し、閉鎖を求め行政指導をし、同サイトが閉鎖された、との報道がありました。

「破産者マップ」では、グーグルマップ上のピン表示をクリックすると、過去の破産等事件の申立人の氏名や住所が表示される仕組みとなっていました。閉鎖前、サイト開設者は、官報という政府の発行する新聞で公開された情報だから、これをネット上に公開しても問題ないなどと投稿していましたが、果たして何が問題なのでしょうか。

 

まず、破産者の立場で考えましょう。破産申立等をする段階で、破産者は自己の氏名や住所が一定期間「官報」に載ることは認識しています(法令上の根拠がありますので、法令など知らないという言い分は通りません)。その範囲で、自己の個人情報が一定期間公開されることは了解しているといえます。ところが、これがネット上で長期間公開されることは了承していません。仮に、将来ネット上で公開される可能性があるならば、破産自体しなかったのにと考える人も出てきそうです。法律論でいえば、「破産者マップ」は、個人情報保護法18条(利用目的の本人への通知)や、同法23条(個人情報の第三者提供の禁止)に違反するものであり、また破産者の名誉権やプライバシー権も侵害する違法行為であり、損害賠償や刑事罰の可能性があると思われます。

また、官報を発行した政府の立場ではどうでしょうか。官報は、新聞という紙媒体か、インターネットで、原則として有料で閲覧できる仕組みとなっています。本来有料でしか取得できない情報を、インターネット上サイト開設者が無償で提供する訳ですから、国家に対して損害を与えるものとして損害賠償の対象にはなるのでしょうし、著作権法の問題も出てきそうです。

破産者等の情報を官報公告する趣旨は、債権者その他の利害関係人が破産手続に意見表明できるよう担保する趣旨ですので、そもそも国民一般の知る権利のために「公開」されている訳ではありません。

 

サイト開設者の言い分からは、「公開」を、広く一般人が知った状態である「公知」と混乱しているように感じます(公知情報なら、公開しても違法とは評価されにくい)。しかしながら、一時的に又は媒体限定的に公開された情報を、永続的に又はより広範囲に公開(拡散)してよいかは別問題です。

例えば、日本の裁判は公開が原則です(憲法82条)が、裁判の公開がされた刑事法廷を、裁判所に秘密裡に録画して、被告人の表情や発言をネット配信することは、違法です。これも、裁判公開の趣旨から考えれば分かることで、国民の選挙で選ばれていない裁判官による裁きが公正に行われているかを国民の目にさらすという趣旨であって、広く国民一般の知る権利を保証するための制度ではありません。そのため、その趣旨に反して公開してしまえば、名誉権やプライバシー権の侵害となる訳です。

 

弁護士 桑原

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