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弁護士インタビュー
代表・弁護士 桑原 貴洋

プロとして真のニーズを徹底的に深める|弁護士インタビュー|代表 桑原貴洋

Profile:神奈川県横浜市出身。1993年、中央大学法学部卒業。1998年、弁護士登録と同時に佐賀県武雄市に桑原法律事務所を創業。2012年に佐賀オフィス、2014年に福岡オフィス
を設立。2013年には史上最年少で佐賀県弁護士会会長に就任。趣味はトライアスロン、マラソン。

高3の秋、弁護士を志した

弁護士になろうと思ったのは高校3年の秋です。

中央大学法学部の推薦入試案内を見て、弁護士を日本一輩出している大学ということを知りました。

バブル最盛期の当時はまだ「24時間働けますか」の時代でした。敷かれたレールに乗って猛烈サラリーマンになるのは違うと思っていたこともあり、弁護士という選択肢を意識しました。

大学1年から司法試験をめざして、自分で勉強する方法を調べました。門をたたいたのが「憲法の伝道師」として知られる伊藤真先生の受験指導校です。

伊藤先生は「憲法の理念」の根幹である「個人の尊厳」を実現する法律家を育成するという目標を掲げています。講義を受けてますますやる気になりました。面白かったのです。

憲法とは何か、という基本から、「合格後を考える」という独自の指導理念まで。

伊藤先生のモットーは「やればできる。必ずできる。そして本物になる」。「ここで学べばみなさんも必ず通りますから」とやる気に火をつけてもらい、その気になりました。司法試験の合格率は2~3%という時代でした。

司法修習生として佐賀へ。武雄で即開業

司法修習でまったく縁のない佐賀の配属になりました。2年ほど研修を受けるうち、佐賀で弁護士としてスタートすることを考え始めました。先輩たちに相談すると「すぐ独立してもいいんじゃない?」と。実際に当時、佐賀県弁護士会の弁護士のうち、事務所に雇われている弁護士は2人しかいなかったんです。

同期は30代、40代の人が多く、修習を終えると即、独立する人が多かった。当時20代ではありましたが、私も独立するのは、自然な流れでした。

武雄を選んだのは当時、1人しか弁護士がいなかったからです。その弁護士も2年前に武雄に来たばかりで、その前30年ぐらいは「弁護士ゼロ地域」でした。

「弁護士が5人、10人いてもやっていける」とその先輩に言われ、なるほど、と(今は、佐賀西部地区だけで、実際10数名が活躍しています)。流れに乗って「武雄開業」を即決しました。

ハードルが高い案件で勝つ醍醐味

弁護士として25年、ジャンルを問わず、あらゆる事件を扱ってきました。勝つか負けるか判断がつかないようなハードルが高い案件で勝つと、印象に残りますね。

たとえば、夫のもとに子どもを残して家を出た女性の代理人になった事案です。親権者争いになると、子どもと住んでいる側に親権を認められやすくなりますが「子育てをちゃんとやっていたのはお母さんです」と主張、立証して勝つことができました。

依頼人の話をじっくり聞いて「常識論で勝たせてあげるべき」と思えば、チャレンジしましょう、となります。

依頼人との関係も大切です。

自分に不利なことでも打ち明けてくれているか、どうか。ある事実が、本人が言っていることと矛盾があると、先行きが見えなくなります。ただ、事実の糸がからまったなかでも、一貫したストーリーが見えてくることがあります。

依頼人と何度も打ち合わせして、本人の言っていることと事実関係が一致すれば、すっと糸がほどけます。そうなると、勝ちやすいですよね。

あとは、団体の内部紛争や、会社のトップとナンバー2の争いも印象に残っています。証言者もいて、依頼人もしっかりしていて、一貫していて、出すべき証拠をきちんと出してくれたおかげです。

勝つか負けるか。経験は裏切らない

弁護士になった最初の5年は、勝つか負けるか予想がつきませんでした。10年ぐらい経つと、予想できる部分がありつつも、それでもやっぱり2〜3割は外れます。負けると思っていた事件で勝つパターンもあります。

もちろん自分の理屈で論証しているので、勝てると思って活動する訳ですが、必ず勝つとは限りません。

経験を重ねるうちに、「勝つと思って勝つ」確率が高まってきたと感じます。予想があたるようになってきた。

弁護士になって四半世紀近くたっても、たった1年前の自分の弁護活動でも振り返ると、何とも言えない思いにとらわれることがあります。

「自分が未熟なせいで負けてしまったのではないか」「いまの成熟レベル、または5年後の成長レベルだったら勝っていたかもしれないのに、当時は実力不足で負けてしまったのではないか」という思いです。

20年、30年やっていても緊張感がある、と先輩たちも言いますね。

実力不足で負けた事件は記憶に残っています。もちろん自分より能力の高い人はいますから。

そういう謙虚さを持ちつつも、プロとしてやっている以上、だれにも負けないというプロの気概を胸に、目の前の案件に取り組めているか。いつも自分に問いかけています。

弁護士って究極のプロフェッショナルだと思います。サービス業的な要素はありますが、プロであるがゆえに価値を発揮して、信頼を勝ち取らなくてはなりません。

資格があるだけでプロと言われる仕事ではありますが、プロと名乗れるだけの本当の実力と実績を永遠に追求する。後輩の弁護士にも言っています。

おかげさまで創業以来、順調に歩んできました。有言実行するタイプで、やろうと強く思ったことはだいたい成し遂げてきました。「あきらめなければ夢はかなう」というのは実感ですね。

個人としては20代、30代の頃、あまり苦労をしなかったと思っていて、30代後半から、トレーニングを積んでいない自分を痛感しました。

MBAでの学びも糧になりました。論理的思考(ロジカルシンキング)やクリティカルシンキングを取り入れ、課題や問題に対して、まずは広げて、本質的なポイントに落とし込む手法です。

社会人力を磨くのは永遠ですね。人とたくさん交流して、弁護士会での活動も含め、与えられた役割は120%で対応しようと考えています。

ニーズを徹底的に見極める

問題の泥沼化が相当進んでしまうと、挽回が難しくなります。その前に相談したほうがいいですね。一人で悩んでいる間にダメージが深くなるパターンは多いです。

最近は依頼人に対して「法律的には」という枕詞を使わないようにしています。「法律的には」ではなく、依頼人が何を求めているのか、まずニーズをくみとろうとします。

特に民事事件や家事事件はニーズが多岐にわたります。ニーズに優先順位をつけることも大切です。上位3つのニーズが実現できそうなのか。難易度が高いのであれば、中位3つをめざすべきではないか。

優先順位をつけるためにも、依頼人が「慰謝料をとりたい」「相手に勝ちたい」と言っていても、本質的な要求は何なのかを見極めようとします。依頼人の言っていることが、目的ではなく手段であることも多いのです。

問題が起きて相手ともめているうちに、視野が狭くなったり、長い目でものが見られなくなったりしますから。

そうした依頼人の視野を広げてあげるのも、弁護士の役目です。本当にめざしたいポイントを見定め、そこに到達するために法が有効ならば、弁護士が引き受ける。

問題解決の切り口として、裁判所で白黒をつけるのが依頼人のためになるのかどうかを考えます。

別の打ち手を紹介することもあります。「すべて弁護士に任せます」ではなく、自分で手間をかけるのも打ち手としてはあるはずです。

「弁護士はお金がかかる」という印象があるかと思いますが、現在は業界も変わってきていて、費用オプションも様々あります。

当事務所は弁護士1人につき、スタッフが1人以上つく「チーム制」で案件と向き合っています。チーム制は開業10年目に導入しました。案件が増えたので、うまく対応するための仕組みをつくろうと。

スタッフが補助的な業務だけをしていると、案件が増えれば、弁護士だけが容量オーバーになります。うまく役割を分担し、弁護士が不得手なところはスタッフにまかせる。お互いのパフォーマンスが最適化されれば、もっと多くの人に価値を提供することができます。

佐賀の弁護士事務所としては、いち早くスタッフを活用するスタイルを築きました。コストはかかりますが、それ以上の価値を出せたと考えています。

まずは解決の打ち手を模索する。弁護士をネットで探して2〜3人に会ってみて、自分で対応するケースとも比較してみる。様々な打ち手を探して、その時点の自分に一番フィットしたやり方で、行動していくことが大切じゃないかと思います。