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COLUMN

弁護士のコラム

公開日:2016.12.23

預貯金は遺産分割の対象となる(最高裁平成28年12月19日決定)

桑原ブログ , 判例について

皆様。預貯金債権が、遺産分割の対象となる、という画期的な最高裁決定が出されました。

「えっ、亡くなられた方に預貯金があったら、当然遺産分割の対象となるでしょう!」
「えぇ~、預貯金が遺産でないなんて、聞いたことがない!」

世間では、常識でもある上記考え方は、長い間、最高裁判所、ひいては全国の裁判所において、
否定されていたのです。

 

理屈は法律家らしい理屈で、以下の通り、従前の最高裁判決は考えていました。

預貯金債権は、要するに預貯金というお金を金融機関に対して、払戻請求できる権利、と考えます。
そして、お金を払戻請求できる権利は、分割できる可分債権であるから、相続が発生した場合に、民法427条に基づいて、分割債権として、各相続人に帰属する、と考えます。

たとえば、1000万円の預貯金を残して被相続人が死亡し、妻と子1人だけが相続人だとします。
それぞれの法定相続分は2分の1ずつなので(民法900条1号)、
相続発生により、妻が500万円、子が500万円の預貯金払戻請求権を行使できる、と解釈していたのです。

かかる考え方には、そもそも金融機関が事務処理の煩雑さ等を理由に大反対でしたし、また、預貯金等しかめぼしい遺産がない相続案件において、特別受益や寄与分が相当程度あった場合であっても、これが全く考慮されないなど、大いに問題のある法解釈でした。

 

今回、最高裁判所は、預貯金契約なるものが、不可分的な要素があるという理屈を加味することで、可分債権であっても不可分的要素のある預貯金債権は、相続発生と同時に法定相続人に自動的に帰属することなく、遺産分割協議(調停、審判)によってはじめて各相続人に帰属する、と判断を示しました。

預貯金債権以外の金銭債権については、従前どおり可分債権として、遺産分割の対象とはならない、との考え方が最高裁判所の多数意見で示された訳ですが、今までもめたら融通の全く効かなかった遺産分割手続きが、今後は預貯金債権の分配をめぐっても争う余地が出てきたわけです。

今まで預貯金は遺産分割の対象ではないので、裁判所は判断しない、などと言って常識はずれの判断をされていた方々も、今後は救済される画期的判決です。

法律実務に携わる方々は、是非、補足意見や意見も含め、全文を熟読されることをお勧めいたします。

最高裁平成28年12月19日決定はこちら

 

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