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COLUMN

弁護士のコラム

公開日:2017.03.11

内定取消しを考える|採用内定は法律的にどのような意味を持つのか

江頭ブログ

今回は、内定取消しの問題について考えてみたいと思います。

先日、Aという大学生に対し、採用内定通知を出しました。
内定通知送付後、たまたまAのフェイスブックを見る機会がありました。そこで見るAの日常生活は、飲み会、飲み会、飲み会…といったもので、不真面目な様子が見て取れ、弊社の社風に合わないと思われました。
「入社後の勤務に不適当と認められたとき」という内定取消事由をもって内定を取り消そうと思うのですが、可能でしょうか。

 

この問題を考えるにあたっては、まず採用内定が法律的にどのような意味を持つのかを確認しなければなりません。

この点につき、最高裁は、「採用内定とは、始期付き解約権留保付きの労働契約の成立である」と考えています。すなわち、法律的には、採用内定者は、勤務開始前ではあるものの、労働契約によって保護されることとなります。そして、翻って、使用者は、労働契約が成立している以上、当然に採用内定を取り消すことができないこととなります。

しかし、労働契約によって保護されているからといって、一切の内定取消しが違法になるわけではありません。内定取消しが適法になることだってあります。解約権が留保されているからです。留保されている解約権の行使が適法になされれば、内定取消しは有効となる訳です。

そうすると、大事になってくるのは、その解約権の行使が適法か否か、という点になる訳ですが、これを判断するに当たって、まず見るべきは、内定通知書や誓約書に如何なる内定取消事由が定められていたか、という点です。規定されている取消事由に該当するような行為があったのであれば解約権の行使が適法の方向に傾くでしょうし、他方で、問題行動がされたとはいえ取消事由には該当するものが無かったということであれば解約権行使は違法の方向に傾くでしょう。

ここまで読むと取消事由に該当するような行為があれば内定を取り消しても大丈夫だと思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではございません。取消事由に該当したからといって、すべからく内定取消しが適法になる訳ではありません。

それは、最高裁が、「(内定取消が適法となるのは)解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる。」との制限をかけているからです。
何が当該判示に該当するのかは、様々な事情を勘案して判断するものですので、一概に回答できるものではないのですが、例えば、グルーミー(陰気)な印象であることを理由として内定を取り消した事案については、当該内定取消しは違法であるとの判断が示されました。

上記質問の事案はどうでしょう。皆さん、考えてみてください。

弁護士 江頭太地

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