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COLUMN

弁護士のコラム

公開日:2018.11.25

非弁行為・不動産業(不動産管理会社)の家賃取立て活動について

桑原ブログ , 法律コラム

「非弁行為」という言葉をご存知でしょうか。

「非弁行為」とは、弁護士法72条に違反する行為のことで、①弁護士でない者が、②報酬を得る目的で、③他人の法律事件に関して法律事務を取り扱うことを、④業とすること、を言います。かかる活動は、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられる犯罪行為でもあります(弁護士法77条3号)。

 

例えば、他人の債権取立て業務を請け負って、取立てが成功したら、取立て額の半分を報酬としてもらうということを複数回行なえば、「非弁行為」として、違法な犯罪行為と評価されることになります。
ところで、世の中には、「非弁行為」の自覚なく、自らの商売のやり方が正しいと確信(誤解)して、実質的な「非弁行為」が行われてしまいがち、なのをご存知でしょうか。

 

例えば、不動産管理業を営む不動産会社が、家賃を何か月も滞納している借家人に対して督促する行為は行われがちですが、以下のどの段階から「非弁行為」と評価されるか、分かりますか?

【A】 請求書を毎月送る行為、
【B】 借家の扉に「家賃滞納中、速やかに支払われたし!」と貼り紙を貼る行為、
【C】 借家を訪問して借家人と家賃支払い方法に関する交渉をする行為、
【D】 大家の代わりに訴状を作成して大家の名前で裁判所に訴状を出してあげる行為。

多くの方が、【C】【D】は、「非弁行為」となりそうだ、と考えられたのではないでしょうか。
しかし、実は【A】【B】でも、「非弁行為」と評価されるおそれがあります。不動産管理契約の当事者や内容にもよるのですが、とりあえず不動産管理業者と大家との管理契約があったとした場合、以下のように考えられます。

家賃が何か月も滞納しているということは、大家と借家人との間の家賃の支払を巡る紛争が既に発生していますので、
① 不動産業者という「弁護士でない者が」、
② 不動産管理業における「報酬を得る目的で」、
③ 大家という「他人の」家賃滞納の処理という「法律事件に関して法律事務を取り扱」っていると評価される可能性があります。
④ 「業とすること」というのは、反復継続して同種の行為を行うことですので、日常業務では行っていないのに家賃滞納時に必ず【A】【B】のような行為を行っていますと、④の要件も満たすことになってしまいます。

【A】や【B】は、大家との契約に基づいてやっている日常業務だから③「法律事件」ではないとか、大家との管理契約に付随するサービスとしてやっているので②「報酬を得る目的」がない、といった言い分が成り立つ可能性はありますが、過去の裁判例も乏しく、最終的にどう判断されるかはグレーです。

 

いやしかし、多くの不動産管理会社が【A】【B】【C】くらいまでならやっているでしょうとか、うちは今まで何十件と【D】までやったこともあるがトラブルになったことはないよ、などと思われるかもしれませんが、業界の一般的なやり方だからと言って、あるいは過去問題視されたことがないからといって、「非弁行為」とならない、という訳ではありません。たまたま、誰も問題視しなかったので、今まで取締りがされなかっただけに過ぎない可能性もあるのです。労働基準法の労働時間規制が実態としては守られていない企業が多い、というのと変わりません。

 

判例でも、経営不振に陥っている会社経営者に会社分割することで事業を継続しようとアドバイスしたコンサルタント会社の行為が「非弁行為」と評価された事例や、ビル解体のため全借家人らとの立ち退きに関する交渉業務を受託した会社の業務自体が「非弁行為」と評価された事例などがあり、契約に基づいて業務をやっているだけだとしても、弁護士法72条の要件に該当すれば、それは「非弁行為」として犯罪となる可能性があります。

 

不動産賃貸人の皆様。管理会社にサービスとしてやってもらっているうちに、徐々に明らかな「非弁行為」である【C】や【D】まで、管理会社の担当者にやってもらったりしていませんか。

また不動産管理会社の皆様。業界の慣例で何となく、あるいは家主からの強い要望で断り切れずに、上記のような「非弁行為」を行ってしまってはいませんか。

今は、この分野で大きな事件も起きておらず、弁護士業界からもさほど問題提起されていませんが、一度何らかの事件が発生しますと、一気にこの論点が世の中でクローズアップされ、皆様の業態が問題視される可能性もあります。「非弁行為」については、自ら対応しようとせず、法律によって禁じられていることを賃貸人も不動産管理会社も理解し、しっかりと弁護士に対応を委ねることを意識いたしましょう。

弁護士 桑原

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