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弁護士のコラム

公開日:2020.10.30

大阪医科薬科大学事件・最高裁判決(続編)

萬代ブログ , 判例について

先日、大阪医科薬科大学事件最高裁判決に関する記事をアップいたしましたが、今回はその続編になります。

【概要】

元アルバイト労働者が、正社員と同じ仕事をしているのにも関わらず、賞与が支給されないという待遇格差は違法だとして、損害賠償などを求めたもの。

【争点】

正社員とアルバイトとの待遇の違いが労働契約法20条(現:パートタイム労働法8条)で禁じられている「不合理な待遇格差」に当たるかどうか。

【最高裁判決】

正社員とアルバイトとの待遇の違いが「不合理な待遇格差」には当たらないと判断し、労働者からの請求を退けた。

【判決理由】

まず、「正社員と同じ仕事をしているのにも関わらず」との労働者の主張に対し、最高裁は、アルバイト職員の業務内容について、「相当に軽易である」と認定し、それを否定しています。
つまり、同じ仕事をしているのに待遇が違うのはおかしい、という労働者の主張に対し、そもそも職務の内容に一定の相違があったと判断しています。
さらに、本件事案では、主に以下の点につき、労働者側には不利(使用者側に有利)な事情があったことも判断に影響したと考えられます。

  • 正社員登用制度が存在すること
    (⇒ アルバイトから正社員になる者も多くいたが、本件の当事者は、登用試験に不合格だった。)
  • 雇用上限があったこと
    (⇒ 長期雇用が予定されていないことが明確で、企業としては、正社員とは違う、と主張しやすい事案だった。)
  • 就業規則が別に適用されていたこと

【今後への影響】

以上のように、今回の最高裁判決はあくまで複合的な事情を組み合わせた事例判断であり、契約社員と正社員との職務の内容が違うと言いやすかったが故の結果かもしれません。したがって、今後、より職務の内容が近いような事案では、全く別の判断になる可能性があります

そこで、使用者側としては、少なくとも以下の点は意識して事前に会社のルール作りをしておくべきでしょう。

  • 賞与の性質、目的を踏まえた判断がなされるので、各社において賞与をどのような趣旨目的で支給するのかを明確に記載しておくこと
  • 登用制度を設け、実際にも運用実績を積んでおくこと
  • 契約社員の契約期間について上限を定めておき、長期雇用を前提としていないことを明確にしておくこと
  • 職務内容が明確に違うと説明できるようにしておくこと

さいごに

弊所では、労働問題に関する相談も多く取り扱っております。労働問題でお困りの方は、ぜひ一度、弁護士への法律相談をお勧めいたします。
 

 

【参照条文】

 

①労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)

有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

②パート・有期労働法8条(短時間労働者の待遇の原則)

事業主が、その雇用する短時間労働者の待遇を、当該事業所に雇用される通常の労働者の待遇と相違するものとする場合においては、当該待遇の相違は、当該短時間労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

 

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