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弁護士のコラム

公開日:2020.10.30

同一労働・同一賃金 最高裁判決

桑原ブログ , 判例について

10月13日と15日に、非正規労働者に関する同一労働・同一賃金に関する最高裁判決がありました。

10月13日の大阪医科大学事件においては、教室事務員として稼働していたアルバイト職員と正社員との賞与、私傷病欠勤中の賃金の有無に対する待遇格差が問題となり、大阪高裁では不合理として一定額の支払を命じていたのに対し、最高裁は不合理ではないと判断しました。

同じく10月13日のメトロコマース事件においては、売店業務に従事していた契約社員と正社員との退職金の有無に関する待遇格差が問題となり、東京高裁では不合理として正社員の4分の1相当額の支払を命じていたのに対し、最高裁は不合理ではないと判断しました。

また、10月15日の日本郵便関連事件では、郵便配達業務に従事していた有期契約労働者と無期契約労働者との年末年始勤務手当、年始期間の勤務に対する祝日給、扶養手当、夏期冬期休暇、病気休暇に関する待遇格差が問題となり、大阪、東京、福岡の各高裁において区々の判断が下されていたものを、最高裁は全て不合理であると判断しました。

 

両日の判決の結論だけ見れば、賞与や退職金に関する待遇格差は違法でないと判断していますので、これらについては非正規職員に認めなくても大丈夫と判断してしまいがちですが、判決文をしっかりと読む限り、そう簡単な話ではありません。

最高裁も、賞与や退職金に関する待遇格差が不合理と判断されることはあり得る、と明言しています。その上で、大阪医科大学やメトロコマースにおいては、非正規と正規との間で職務内容や配置転換の範囲に差異があったことや、正社員登用への道があったこと、訴えた原告らと比較対象とされた正社員を巡る様々な歴史的経過等を総合考慮の上で、ギリギリの判断として、待遇格差が不合理とまでは言いきれない、というニュアンスで判断しているのです。メトロコマース事件の退職金に関しては、最高裁裁判官の1人は不合理であるとする反対意見も残しています。

加えて、日本郵便事件では、最高裁で争点となった各種費目につき、ことごとく不合理であると判断されており、企業にとっては非常に厳しい内容の判決となっています。ざっくりいえば、非正規社員でも、正社員と近い内容の職務を行い、実質的に長期雇用となっている実態が伴う場合には、待遇格差が違法となりやすいということが言えるでしょう。

 

企業の立場においては、労働時間、労働期間、職務内容、配置転換の有無等様々な要素において、正社員と非正規社員との実態が同一又は類似している場合には、就業規則や賃金規程等をどんなに作り込んでいたとしても、待遇格差が違法と判断されやすいことを意識しなければなりません。すべての企業が、同一労働・同一賃金の実現に向け、取り組んでいく必要があると思われます。

弁護士 桑原 貴洋
 

 

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