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COLUMN

弁護士のコラム

公開日:2021.11.24

労働判例:キャバクラ運営A社従業員事件(交際禁止同意書)

萬代ブログ , 判例について

本日は、最近の労働判例の中から、気になったものを簡単に紹介したいと思います。

キャバクラ運営A社従業員事件(交際禁止同意書)

【事案の概要】※

Xは飲食店の経営を目的とする有限会社であり、ガールズバーやキャバクラ店を多数経営している。
Xは、その業務内容の中心が男女間の接待であり、従業員が私的交際を行うと担当する客が離れてしまうこと等を懸念し、全従業員に対し、私的交際の絶対禁止とそれに違反した場合の違約金200万円の支払を内容とする同意書への署名を求めていた。
Yは、Xの従業員であり、上記を納得の上で本件同意書に署名し、これを約していた。
しかし、Yは、本件同意書に反してZと私的交際を開始したため、Xは、Yに対し、本件同意書に基づき、違約金等を請求した。

※事案の概要は、簡略化しています。

【結論】

裁判所は、以下のとおり判示し、Xの請求を棄却しました。

本件同意書は、①労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償を予定する契約をしたりすることを禁じた労働基準法16条に違反していること、②人が交際するかどうか、誰と交際するかはその人の自由に決せられるべき事柄であって、その人の意思が最大限尊重されるべきであるところ、本件同意書は、個人の自由ないし意思に対する介入が著しく、公序良俗(民法90条)に反することから、無効である。
したがって、本件同意書が有効であることを前提としたXの請求には、理由がない。

【さいごに】

この判決のように、使用者と労働者とが書面にて約束を取り交わすことは多々あると思います。
しかし、仮に労働者がその場では納得して同意した(ように見えた)としても、内容によっては、後日争われ、無効となる余地があります。
したがって、書面で同意をとったから大丈夫、ではなく、しっかりとその内容を吟味する必要があるといえるでしょう。

【参照条文】

(賠償予定の禁止)
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

(公序良俗)
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

【参考文献】

労働判例 2021.2/15 No.1233 産労総合研究所

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