MENU
お問合せ

COLUMN

弁護士のコラム

公開日:2021.04.25

発信者情報開示請求手続きの簡略化の法改正

桑原ブログ

フジテレビの人気番組「テラスハウス」の出演者が、SNS 上での誹謗中傷を受けて自殺した事件をきっかけとして、投稿者を特定するための発信者情報開示請求手続きについての法改正が検討されています。

昨年8月には、総務省令の改正により、開示情報として、投稿者の電話番号が追加されましたし、先月には改正法の閣議決定がされました。今後、国会で審議された上で成立し、来年中には施行する予定とのことです。
予定されている改正内容は多岐にわたりますが、昨年12月に総務省が公表した「発信者情報開示の在り方に関する研究会 最終とりまとめ」によれば、大きな改正事項として、

A: 発信者情報の開示対象の拡大(ログイン時情報への拡大)と、
B: 新たな裁判手続の創設及び特定の通信ログの早期保全

が、挙げられます。

Aは、かなり専門的・技術的な話になりますので、興味ある方は上記最終とりまとめをお読みいただくとして、被害者の方にとっても興味深いと思われるBについて、法改正の内容を整理してみます。

新たな裁判手続の創設及び特定の通信ログの早期保全

現行法では、被害者は、

① コンテンツプロバイダに対する発信者情報開示の仮処分申請を行い、そこで得た情報を元に、
② アクセスプロバイダに対する発信者情報開示請求訴訟を行って投稿者を特定した上で、
③ 発信者への損害賠償請求訴訟を起こさなくてはなりません。

①②③の3つの法的手続それぞれで、必ずしもうまくいく保証はなく、各手続を行う労力、コスト、期間も相当程度必要だったので、多くの被害者の方が、泣き寝入りを決断することが多かった訳です。

改正法では、発信者情報を特定するための①②の手続きを包括的に行える制度を創設するとともに、被害者側の主張・立証活動を相当程度軽減する仕組みが制度設計される模様です。

現行法では、発信者情報開示の場面において、アクセスプロバイダが保有するIPアドレスなどのログが手続中に消去されて発信者の特定に至らない可能性がありましたが、この点に関するケアも予定されているようです。

とはいえ、被害者側でプロバイダ責任制限法4条に定める開示のための要件(特に「権利が侵害されたことの明白性」)を主張・立証しなければならないことや、発信者が特定された後に別途③の損害賠償請求訴訟を行わなければならないことも、変わりません。

 

以前よりは、難易度と労力が軽減された分、我々弁護士がサービスを提供する際のコストも少しは低めに設定できるかもしれませんが、れっきとした裁判手続きですので、素人の方が自分で裁判所に行って投稿者を特定できるほど、簡単な手続きとなる訳ではなさそうです。

ご相談から解決まで、
高い満足度をお約束。

ご相談から解決まで、高い満足度をお約束。

最初にご相談いただくときから、問題が解決するまで、依頼者様の高い満足度をお約束します。
そのために、私たちは、専門性・交渉力(強さ)×接遇・対応力(優しさ)の両面を高める努力をしています。