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COLUMN

弁護士のコラム

公開日:2022.10.17

部下を辞めさせる、その前に

桑原ブログ

パフォーマンスの低い部下を辞めさせたい、という相談をよく受けます。しかしながら、なぜ「辞めさせたい」という気持ちになったのかを、きちんと分析・検討した上で、「辞めさせる」べきか、それ以外の打ち手がないのか、見極める必要があるように思います。

まず、パフォーマンスの低さ自体を、客観的に分析する必要があります。クレームを受けたとか、業務上のミスをしでかしたとか、遅刻や私語など内容自体の問題なのか。その回数や頻度、程度といった数や量の問題なのか。

また、対顧客なのか、対取引先なのか、従業員や役員など内部人材との関係なのかといった人の問題なのか。パフォーマンスの低さ自体が、組織の売上や利益にどの程度の影響を与えたのかというお金の問題なのか、などです。

対顧客との関係でのクレームの方が、社内での私語よりは組織にとっての損失は一般的に大きいですし、数が多い、程度がひどい、売上を失った、多額のコストがかかったなどインパクトの大きい方が、「辞めさせる」との決断をする上で、合理性を基礎付けるものとなるでしょう。

また、当該従業員のパフォーマンスの低さの原因も、客観的に把握する努力が必要です。元々の能力や性格の問題なのか、短期的な悩みを抱えたことによる影響なのか。また、その原因は改善可能なのか、改善困難なのか。

人は、ある程度の時間をともに過ごすようになると、他人を自分なりの解釈で、いわゆる色眼鏡で見がちになるものです。短期的・個人的な悩みでパフォーマンスが一時的に落ちたに過ぎないのに、「辞めさせる」という決断を短絡的に行ってしまうことは、長期的に見れば組織にとっても損失ですし、法的にも解雇・退職トラブルとして、紛争に発展しやすいものです。

さらには、「辞めさせる」という打ち手以外の打ち手についても考察する必要があります。就業規則などではきちんと書かれているものですが、譴責処分(厳重注意・始末書)、賞与カット、減給、出勤停止などの打ち手も、「辞めさせる」つまり、退職勧奨後の自主退職または解雇といったインパクトの大きな打ち手よりも、組織にとって、また当該従業員にとって、効果が出やすい場合もあり得る訳です。

解雇は、基本的に労働審判や訴訟になると負けるものであり(労働契約法16条参照)、コストだけでなくその他諸々のダメージを受けやすいので、注意が必要です。

2:6:2の法則をご存知でしょうか。パレートの法則の発展形態ともいわれますが、どのような組織も、優秀な人が2割、普通の人が6割、パフォーマンスの低い人が2割となる、という理論です。

パフォーマンスの低い2割がいるからこそ、上位8割は精神的安定を保って会社に貢献するとも考えられます。
安易に「辞めさせる」という打ち手を用いて辞めさせることに成功しても、次のパフォーマンスの低い(と感じる)部下を生み出しかねない、という意識を持って、従業員の採用責任を果たしたいところです。

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