公開日:2024.05.28
フリーランス保護法・施行まであと半年
桑原ブログ
フリーランスとして働く人が増え、業務委託者から搾取されることが社会問題化したことなどを背景に、令和5年4月に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」いわゆるフリーランス保護法が成立しました。令和6年11月1日の施行が予定されていますので、個人事業者と取引を行う可能性のあるすべての事業者が、その内容をある程度理解しておく必要があります。
まず、同法の適用対象となる「特定受託事業者」(=フリーランス)という概念ですが、業務委託の相手方である事業者のうち、従業員を使用しない個人事業者と、代表者以外に役員がおらずかつ従業員を使用しない法人(1人法人)が対象となります(法2条1項)。したがって、個人事業者でも従業員を雇っている事業者は「特定受託事業者」とはならず、本法律では保護されません。
また、「業務委託」の内容として、物品の製造の委託、情報成果物の作成委託又は役務提供の委託が明記されています(法2条3項)が、これには外部委託可能性のある広範な業務が含まれますので、結論として従業員等を使用しない個人事業者又は1人法人に何らかの業務を委託(発注)すれば、本法が適用されることとなります。
本法では、「業務委託事業者」(=発注事業者)に、以下のような義務を課しています(それぞれ原則規定を掲載)。
① 給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を書面又は電磁的記録により明示する義務(法3条)。
② 発注事業者が給付を受領した日から60日以内の報酬支払義務(法4条)。
③ 給付の受領を拒んだり、給付に係る物を返品したり、報酬を減額したり、不当に安い報酬を定めたり、経済上の利益を提供させたりする行為の禁止(法5条)。
④ 業務委託の募集の際の虚偽表示や誤解表示の禁止(法12条)
⑤ 妊娠・出産・育児・介護に対する配慮(法13条)
⑥ セクハラ、マタハラ、パワハラが行われないように適切に対応するために必要な体制整備等(法14条)
⑦ 継続的業務委託契約を解除する場合の30日以上前の予告義務や、請求がある場合の解除理由の開示義務(法16条)
発注事業者が上記義務違反行為を行った場合、フリーランス側は公正取引委員会又は中小企業庁長官に(①~③の場合)又は厚生労働大臣に(④~⑥の場合)報告をした上で、適当な措置を求めることができます。
そして、違反事実が認められる場合は勧告、命令(公表)の対象となり、命令違反等があれば発注事業者には罰金などの刑罰も課せられることになっています。
施行まであと6か月を切りました。自社の業務運営の中でフリーランスに何らかの業務委託をする場合、委託業務内容を明示するとともに、フリーランスに不当な取引条件を設定したり、不当な対応をしたりしないよう、注意いたしましょう。