公開日:2024.06.26
共同親権法案成立
桑原ブログ
5月17日、離婚した夫婦間の子の共同親権を導入する改正民法等が成立し、24日に公布されました。
公布から2年以内の施行が予定されており、未成年の子のいる夫婦では、施行日まで離婚成立を引き延ばそうとする動きも出始めています。
改正されたのは、離婚時に共同親権を選択できるという制度のほかに、法定養育費制度の創設や養育費等債権の先取特権化、養育費等請求時の配偶者に対する資産・収入情報開示命令制度の創設など、法律実務家にとっても大事な改正項目が並んでいます。
今回は、改正の目玉である共同親権制度を解説します。
夫婦は離婚時に、協議によって、共同親権を選択することができるとされ、協議が成立しない場合には家庭裁判所で親権者を定めてもらうこととされています(改正民法819条1項2項)。
そして家庭裁判所で親権を定める場合、当事者の一方が共同親権を望む場合は、共同親権となるのが原則である、ということです。
例外として単独親権を認めてもらえるのは、①父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがある場合、②暴力その他の有害な言動を受けるおそれの有無や離婚に至る事情を考慮して、父母が共同で親権を行うことが困難である場合、③その他子の利益を害する場合が掲げられています(改正民法819条7項)。ただし、裁判所は明確な証拠がないとその事実を認定してくれない傾向にあり、①②③のいずれかを立証するハードルは高いものです。すなわち、共同親権が原則となってしまうのです。
日本では離婚件数の80~90%が、裁判所を絡めることのない協議離婚です。改正法施行後も、協議離婚をして、親権を夫又は妻と決める単独親権を選ぶ夫婦が多いでしょうから、離婚した夫婦のほとんどが共同親権を選択することにはならないと予想されます。
しかしながら、親権者争いでもめた場合には、例外的な事情を立証できなければ共同親権となってしまいますので、これまで親権者争いで泣き寝入りしてきた方々が、共同親権を求めて争うようになるでしょう。
夫婦にいろいろなことが積み重なって離婚という選択をしても、子がいる場合は共同親権者としての関わりが続いていくことになります。離婚をする以上は、事実上どちらか一方の親が子を監護し、もう片方の親は面会交流等を通じて関与することになるのでしょうが、監護や面会交流をめぐる紛争も激化することが多いので、共同親権導入後の共同親権者間でもいろいろな紛争が発生することになるでしょう。
また、一度単独親権を定めて離婚をした夫婦であっても、「子の利益のために必要がある」ときは、家庭裁判所に共同親権への変更申立てをすることが可能です(改正民法819条6項8項)ので、子供ともっと関わりたいという親や、元配偶者に子供ともっと関わってほしいと願う親それぞれが、共同親権への変更申立てをすることも予想されます。
離婚をめぐる係争にまた新しく悩ましい論点が問題提起されました。離婚や家族間トラブルを多く扱う法律事務所として、よりよい判例と実務を形成すべく邁進してまいります。