公開日:2024.07.26
ステルスマーケティングで措置命令
桑原ブログ
皆様、梅雨入りしましたね。雨の日も多くなり、外出も憂鬱に感じやすい時期ですが、こういう時こそ心を豊かにするために、積極的に読書や映画鑑賞など文科系の趣味を楽しみたいところです。
先日報道されましたが、消費者庁は、令和6年6月6日、医療法人団祐真会に対し、同法人が運営する「マチノマ大森内科クリニック」と称する診療所において供給する診療サービスに係る表示について、景品表示法に違反する行為(同法第5条第3号(ステルスマーケティング告示)に該当)が認められたことから、同法第7条第1項の規定に基づき、措置命令を行いました。
措置命令の対象となった行為は、令和5年12月8日以降に、インフルエンザワクチン接種のために来院した顧客に、グーグルマップの「クチコミ」に★5か★4の投稿をすることを条件に接種費用を割り引くことを伝え、当該顧客ら45名が★5の投稿をし、それがグーグルマップの「クチコミ」欄に表示されていた行為です。投稿をしたのは顧客側ですので、ステルスマーケティング規制の要件である「事業者による表示」と言えるかが問題となりますが、消費者庁は接種費用を割り引くという利益を提示して高評価を獲得していますので、事業者が顧客をコントロールしていると認定しました。
景品表示法7条は措置命令として、不当表示等の行為を行った事業者に対して、その行為の差止め、再発防止のために必要な事項、これらの実施に関連する公示(対外的な公表)その他必要な事項を命ずることができるとしています。これを受けて消費者庁は、対象事業者に対して、以下の措置命令を発令しました。
①当該表示行為を速やかに取りやめること。
②当該表示が、景品表示法に違反する旨を一般消費者に周知徹底すること。
③再発防止策を講じて、これを役員・従業員らに周知徹底すること。
④今後、同様の表示を行わないこと。
さて、問題の「マチノマ大森内科クリニック」ですが、グーグル検索をしてみますと、6月26日現在で337件のクチコミがあり、平均点数は2.2とひどい数字となっています。一部★1の方の投稿内容を引用します。「被害者続出のうわさ通りの病院。」「他の方が書いている通り、必要以上にオプション検査を大量にぶっこまれます。そして検査結果は伝えられず。」「ここは定期的に不正行為を行い、星評価に変更を加える詐欺クリニックです。以前は閉業を偽装して何百もあったお客様の口コミを削除しています」
該当期間中★5の「クチコミ」は既に見当たりませんので、事業者又はグーグルの判断で、不当表示である★5の「クチコミ」は削除されたようです(措置命令①の実行)。
しかし、消費者庁による措置命令を受けた経営陣による謝罪コメントや再発防止に向けた取り組み等は、同クリニックのホームページ等では発表されていないようです(措置命令②の未実行?)。事業者が何もしていないとすれば、不祥事公表直後の初動対応としてはお粗末です。
こうした報道を他山の石として、自組織のコンプライアンス意識の向上に努めてまいりたいところです。