公開日:2025.05.26
新入社員の退職急増と退職代行サービス
桑原ブログ
GW が明け、フレッシュな顔ぶれがオフィスを行き交う季節のはずが、入社1か月で退職代行を利用する新入社員が続出しているようですね。各種報道でも「退職代行の利用のピークはGW明け」という代行業者の話しが紹介されていましたが、当事務所でも退職代行サービスから従業員の退職希望の連絡が入った、どうしたらよいかとの相談が入りました。
法的にグレーとされる退職代行ビジネスの概要と会社としての対策について、考察してみます。
退職代行サービスは、①弁護士、②労働組合、③民間代行業者の3類型に大別されます。法律上の交渉権限を有するのは①と②のみで、③が有給消化や残業代の支払いなどの「法律事務」を「代理交渉」すると、弁護士法72条違反(非弁行為)となる可能性が高いです(2年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金刑)。
ところが③民間代行業者のWEB広告では「交渉も丸投げ」と誤認させる表現が多く、当事務所が先日交渉したケースでも、退職代行業者の担当者が退職希望の従業員の意向を、まさに代理人らしくいろいろと伝えてきていました。
また③民間代行業者が、弁護士法72条を潜脱する②労働組合を立ち上げて活動することも実態としては多そうです。相手方が②労働組合を名乗ったとしても、従業員が労働組合に加入したのはいつか、当該労働組合に正当な労働組合としての実態があるのか、正当な団体交渉権の行使なのか等により、労働組合としての正当な活動なのか、弁護士法72条違反の違法な犯罪活動であるのかの判断も分かれてきます。
企業側が留意すべきは、⑴従業員の退職の自由は保障しなければならない、⑵本人意思の真正確認(当該代行業者に何を依頼したのかの本人への直接確認)と退職届など証拠の確保、⑶退職代行業者との交渉自体が様々なリスク要因となることの認識、の3要素です。弁護士または正当な労働組合以外の代行業者からの連絡は、本人確認が取れるまでは応答を留保すべきですし、そのやり取りは可能な限り録音をすべきですし、労務・法務部門や顧問社労士・顧問弁護士などに窓口を一本化するなどの対応が必要です。
昨今の人手不足も相まって、就職市場は猛烈な売り手市場となり、転職市場も活性化しています。
当面、従業員が定着しにくい時代が続くと予想され、新入社員の一定割合が退職し、自分で退職意思を伝える心理的負担を回避するために代行業者に外注するという流れは、民間代行業者の活動がメディアでもたびたび取り上げられていることからも明らかでしょう。
従業員の退職に際して、①弁護士、②労働組合、③民間代行業者いずれかから何らかの連絡が入ってしまった場合には、企業が留意すべき3要素を踏まえて、適切な対応を取っていただきたいと思います。