公開日:2026.01.05
副首都議論から学ぶ組織の生存戦略
桑原ブログ
謹んで新春のお慶びを申し上げます。 皆様におかれましては、清々しい新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。 旧年中は格別のご厚情を賜り、厚く御礼申し上げます。
法律に「首都」の定義はない?
さて、新年最初の話題として、政権与党入りした大阪維新の会が提唱している「副首都構想」を法的な視点から紐解いてみたいと思います。実は、現在の日本の法律には「どこが首都であるか」を直接定義した条文が存在しないことをご存知でしょうか。かつて昭和25年には「首都建設法」という法律があり、第1条に「東京都を・・・首都として」という文言がありましたが、昭和31年に廃止されました。以降、東京が首都であることを明記した法律は存在せず、あくまで「公然の事実」という慣習に近い扱いに留まっています(「首都圏」という概念に東京23区が含まれることを定義した首都圏整備法などはあります)。
現行の地方自治法にも、「首都」とか、「副首都」といった概念は出てきません。
副首都構想が目指すのは、東京一極集中のリスクを分散し、大規模災害時にも国家機能を維持できる「バックアップ」の構築です。これは、アジアの拠点都市として成長を続ける福岡市にとっても、決して他人事ではありません。将来、福岡が「西の副首都」として名乗りを上げる日が来るかもしれません。
憲法と地方自治法が定める「壁」
しかし、副首都の実現には高い法的な壁があります。 憲法第92条は「地方自治の本旨」に基づき、地方公共団体の運営を法律で定めるとしています。ここで重要なのが、地方自治法における「普通地方公共団体」(都道府県と市町村)と「特別地方公共団体」の区別です(同法1条の3)。
現在、福岡市などの「政令指定都市」(252条の19)は「普通地方公共団体」であり、その中の「区(行政区)」(252条の20)は、市長の事務を分担する市の内部組織に過ぎません。法人格もなければ、区長も任命制です。対して、東京都の「23区(特別区)」(281条)は「特別地方公共団体」です。独立した法人格を持ち、区長は公選、区議会も存在します。
・行政区:市の内部組織。会社で言えば、「営業1課」のような部署。
・特別区:独立した地方自治体。会社で言えば、ホールディングス傘下の「独立した子会社」。
副首都構想は、東京以外の都市にも、この「内部組織」から「独立した子会社(自治体)」へと、意思決定の権限を分散・強化しようとする試みです。これは、現代の組織論にも通じる課題です。トップにすべての権限が集中する「一極集中型」の組織は、平時は強いですが、想定外の事態(災害や市場の変化)には驚くほど脆いものです。今、国も企業も、権限を分散させ、現場が自律的に動く「多極分散型」組織へのシフトを迫られています。
構造改革がもたらす「変化の時代」
このような統治機構の構造改革が進めば、日本の風景は一変します。特区制度による規制緩和や、地方への大幅な権限移譲が行われれば、地域ごとの独自性がこれまで以上にビジネスや生活に直結するようになるでしょう。
法は「固定された壁」ではなく、時代に合わせて「書き換えていく地図」であるべきです。構造的な制度疲弊状態の今の日本の統治機構において、副首都構想のような「構造そのものを疑う議論」は、停滞した空気を打ち破るきっかけになります。
憲法92条が定める「地方自治の本旨」とは、平たく言えば「自分たちのことは自分たちで決める」ということです。国が副首都を作るのを待つのではなく、私たち一人ひとりが、自分の人生や組織において「主体的(自治的)に変化を起こしていく」。そんな一年にしたいものです。
桑原法律事務所も、変化を恐れず、常に最新の知見やテクノロジーを吸収しながら、皆様と共に「新しい時代の地図」を描いていきたいと考えております。
本年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

