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COLUMN

弁護士のコラム

公開日:2026.03.02

退職代行「モームリ」報道から考える「適法ライン」

桑原ブログ

令和7年10月、退職代行サービス「モームリ」を運営する会社が家宅捜索を受け、令和8年2月3日、代表者らが弁護士法違反の疑いで逮捕されました。報道では、退職希望者を特定の弁護士へ紹介し、その見返りとして「広告費」等の名目で金銭を受領していた疑いがあるとされています。さらに、紹介を受けた側の弁護士らについても書類送検に至った旨が報じられ、東京弁護士会も遺憾の意を表明しています。

弁護士を紹介していた「モームリ」側も、紹介料を支払っていた「弁護士」側も、法律違反、犯罪となる可能性があります。
「モームリ」側についていえば、弁護士でない者が、報酬目的で、弁護士の周旋(紹介)を業として行っていたことが、弁護士法72 条(非弁行為)違反の問題となります。「弁護士」側についていえば、非弁行為を行っている業者と提携していること(いわゆる「非弁提携」)の問題となります(法27,72 条)。
「モームリ」側も弁護士側も、これら非弁行為、非弁提携に該当すれば、2年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金となります(法77 条)。
これらの条項は、法律の専門家とは言えない者による不適切な法的処理を抑制して当事者に被害が発生することを防止するとともに、事件屋や反社会的勢力の介入を阻止し、公正かつ適正な手続を維持することなどを目的としています。

今回は、「モームリ」による弁護士の紹介と、弁護士からの紹介料の受領(キックバック)の弁護士法72条違反が問題視されましたが、そもそも「モームリ」が大々的に行っていた退職代行サービス自体は、非弁行為とはならないのでしょうか。
結論としては、退職代行サービス自体が直ちに違法・犯罪となるわけではありません。「モームリ」が、本人の使者として「退職意思を会社へ通知」するだけなら、典型的な法律交渉とはいえず、直ちに非弁行為には当たらないと解釈される可能性があります。
他方で、現実の退職局面においては、退職意思を伝えるだけで交渉が終了することは少なく、退職に当たっての諸々の条件調整が必要となることも多いものです。例えば、退職日はいつなのか、残存有給休暇の消化は不要なのか、未払賃金はないのか、その支払方法、貸与品の返還や経費精算、その他の引継ぎ作業など、「退職意思」を伝えるだけで企業側の退職事務処理が終わる訳ではありません。かように、退職事務処理のあり方を諸々と協議する場面に突入した瞬間に、「モームリ」が行っていた退職代行サービス自体、非弁行為となるリスクが高まります。

当事務所でも、「モームリ」に退職代行を依頼した従業員の退職案件で、顧問先企業の代理人弁護士として「モームリ」側とやり取りしたことが何件かありましたが、「退職意思」を伝える以外の諸々の要請事項を何往復か伝達し合いましたので、あれはあれで、業としての法律事務の提供という非弁行為に該当していた可能性があった訳です。

退職代行サービスは、直接職場に退職意思を伝えづらいとか、退職意思を伝えた際に上司から慰留されるのが面倒くさい(まさに、もう「無理」)など、最近の従業員ニーズを踏まえて生まれてきたものです。
とはいえ、雇用契約の解除(退職届・解雇)にしろ、賃貸借契約の解除・明渡にしろ、離婚(婚姻契約の解消)にしろ、契約関係解消の事務処理は両当事者間の紛争となりやすいので、かかる解消処理を定型的な事務処理ととらえて安易にサービス提供することのリスクを、今回の「モームリ」報道は浮き彫りにしたといえるのではないでしょうか。

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