公開日:2026.09.01
早期事業再生法の積極活用に向けて
桑原ブログ
朝夕の心地よい風に秋の気配が感じられる頃となりました。皆様におかれましては、益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
さて、帝国データバンクが発表した令和8年上半期(1月~6月)の全国企業倒産は5,335件(前年同期比6.6%増)となり、4年連続の増加、2年連続で5,000件を超え、負債総額も7247億3600万円(同6.9%増)と、上半期としては4年ぶりに前年を上回りました。原因別では「販売不振」が4,278件(構成比80.2%)で圧倒的多数を占め、「売掛金回収難」等を加えた「不況型倒産」は4,350件(同81.5%)に達しました。「物価高」を主因とする倒産も556件と過去最多を大幅に更新し、価格転嫁の遅れが中小企業の資金繰りを圧迫している実態が改めて浮き彫りとなるとともに、「後継者難」を原因とする倒産も312件、「人手不足」を原因とする倒産も227件と過去最多を更新し、事業承継の遅れや人手不足が倒産リスクに直結している状況もうかがえます。
このような中、令和7年6月に成立した早期事業再生法(円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律)が、令和8年12月11日に施行されます。
同法は、経営が破綻する前の「経済的に窮境に陥るおそれのある」事業者を対象に、経済産業大臣の指定を受けた中立的な第三者機関(指定確認調査機関・法46条以下)と裁判所が関与し、対象債権(担保で保全されていない部分に限る)の4分の3以上の議決権額を有する債権者の同意(単一の債権者が議決権総額の4分の3以上を占める場合には、当該債権者を含む議決権者の過半数の同意も別途必要)により(法19条、20条)、非同意債権者を含めて貸付債権の減額・期限猶予等の権利変更を可能とする制度です。
対象債権は、銀行や貸金業者などの貸付債権等に限られ、仕入先や外注先などに対する商取引債権は対象外である(企業が通常通り弁済できる)ため、取引先の信用不安を招きにくいことも特徴です。
破産・民事再生等の法的整理手続は、原則として商取引債権も含めた全債権者を手続に取り込むため、裁判所の監督下で透明性は確保される一方で、取引先の信用不安を招きやすく、事業価値の毀損が大きいという難点があります。
また、従来型の私的整理手続(全銀協「私的整理に関するガイドライン」、中小企業の事業再生等に関するガイドライン、事業再生ADR等)は、対象を主として金融債権者を対象とするので法的整理手続と異なり、事業毀損を抑えられるという利点がある一方、全対象債権者の同意が必要であり、一部債権者の反対によって頓挫するリスクを常に抱えていました。多数決原理を採る早期事業再生法により、一部対象債権者が反対する場合でも、企業が早期に再生の糸口をつかめるという選択肢が増えることになったのです。
とはいえ、法20条に定める貸付債権者による可決要件以外にも、清算価値保障(破産した場合の回収見込み額を下回ってはならない。法3条1項4号、15条1項3号)、平等原則(対象債権者の権利変更内容は、原則として平等でなければならない。法13条)、履行可能性(変更後の「債務が履行される見込みがないことが明らか」でないこと。法15条1項2号、27条2項2号)などの要件に反することは許されませんので、要件を満たす申立手続には弁護士など倒産処理の専門家の支援が必要となってきます。
早期事業再生法は、破産や民事再生などの法的整理手続と、これまで存在していた各種私的整理手続の不便だった部分を埋める中間的な選択肢として、早期に事業再生を目指していく事業者のニーズをかなえるものです。私たち弁護士も法的整理のみを前提とするのではなく、こうした法的整理と私的整理の中間的な再生手続を積極的に提案し、企業が再生に向けてやり直していけるようサポートしてまいりたいと思います。

