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COLUMN

弁護士のコラム

公開日:2012.05.16

義務履行地って、分かりにくい

桑原ブログ

「義務履行地」という概念。
言葉自体が法律的で難しいので、改めて解説しよう。

義務履行地とは、どの場所で約束を果たすべきか、という問題である。

例えば、秋田県に住むAが、青森県の農地で栽培しているある一本の木に実っているリンゴ100個を、佐賀県在住のBに、1万円で販売する契約を締結した。しかし、リンゴをどこで引き渡すのかを、契約で決めなかった。
Q:この場合、リンゴをどこで渡すべきだろうか?

① 売った農家Aが住む秋田でしょう
② 買ったお客Bが住む佐賀でしょう
③ リンゴが実っていた青森でしょう
④ 双方の交通の便を取って、東京でしょう

・・・・・

正解は、③

民法484条によると、「特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において」弁済をしなければならない、と規定されている。
ここでいう「特定物」とは、「ある一本の木に実っているリンゴ100個」のこと。
「債権」とは、リンゴ引渡請求権のこと。佐賀のお客Bは、秋田の農家Aに対し、リンゴ100個の引渡請求権を有している。
「物が存在した場所」とは、リンゴが実っていた、青森県の農地、ということになる。
つまり、「ある一本の木に実っているリンゴの引渡しは、リンゴ引渡請求権発生の時に、そのリンゴが存在していた、青森県の農地において」弁済をしなければならない。
ということで、正解は、①の青森県。

 

前述の設例は、

秋田県に住むAが、青森県の農地で栽培しているある一本の木に実っているリンゴ100個を、佐賀県在住のBに、1万円で販売する契約を締結した。しかし、リンゴをどこで引き渡すのかを、契約で決めなかった。

Q:この場合、リンゴはリンゴの実っていた農地のある青森県で渡すべきだったが、では代金はどこで支払うべきだろうか。

① 売った農家Aが住む秋田でしょう
② 買ったお客Bが住む佐賀でしょう
③ リンゴが実っていた青森でしょう
④ 今度こそ、双方の交通の便を取って、東京でしょう

・・・・・

正解は、①

この点、民法484条によると、「(その他の)弁済は債権者の現在の住所において」しなければならない、と規定されている。ここでいう(その他の)というのは、前回説明した、特定物引渡請求の場合以外の、という意味だ。
特定物引渡請求権以外の債権の弁済は、債権者の住所で弁済しなければならない、ということ。つまり、民法上の原則としては、義務履行地は、債権者の住所地なのだ。
本件では、売買代金請求権という債権を持つ、リンゴ100個を販売した農家Aの住所地、つまり、秋田県で代金を支払わなければならない。リンゴ100個が実っており、リンゴ100個を引き渡すべき、青森県ではないところが、民法の解釈は難しい。

民法上、義務履行地とは、原則「債権者の住所地」であり、「特定物の引渡しだけは例外的に物が存在した場所」となる。

最後に改めて整理すると、
お客Bが農家Aに対して有する、リンゴ引渡請求権は、物が存在する青森県で、
農家Aがお客Bに対して有する代金請求権は、債権者の住所地である秋田県が、
それぞれ義務履行地となる。

そして、義務履行地が、どの裁判所で裁判を起こせるのかを決める要素となる。

よって、佐賀のお客Bが農家Aにリンゴ引渡請求訴訟を起こす場合、被告住所地の秋田県か、義務履行地の青森県かで、裁判をしなければならない。

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