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慰謝料請求した不倫相手が自己破産…回収方法は?予防策は?

公開日:2021.10.25  最終更新日:2021.12.02

この記事の目次

Q. 慰謝料請求した不貞(不倫)相手が自己破産…慰謝料を回収できますか?

以前、妻の不貞相手に対し、慰謝料を求めて裁判をし、「300万円を支払え」という内容の判決を獲得したうえで、回収を図っていました。しかしこの度、裁判所から手紙が届き、その不貞相手について破産手続が始まったとのことでした。その後、免責決定も出ているようです。この場合、300万円を回収することはできなくなってしまうのでしょうか?

自己破産についてくわしくはこちら

A. 不貞(不倫)相手自身への請求は原則として困難でしょう。

以下で、弁護士がくわしく解説いたします。

自己破産とはどういう手続きなの?

自己破産とは、借金が返済できない場合に、債務者が裁判所に破産を申し立て、債務(借金)を免除してもらう手続きのことをいいます。

破産の免責決定後は債権回収ができなくなる?

破産の免責決定が確定した場合、破産者は、破産債権(破産手続きが始まる前に作っていた借金等のこと。ただし税金等は除く。)について、その責任を免れるとされています(破産法253条1項柱書)。よってこの場合、破産債権の債権者は、基本的には、債権回収をあきらめるほかなくなります。

もっとも、これには例外があり、免責決定後であっても、引き続き責任を免れることができない破産債権がいくつか存在します。これを法律上、非免責債権《ひめんせきさいけん》といいます。

破産の非免責債権とは

法律が、非免責債権として定めているのは、次の債権です。

  1. 租税等の請求権
  2. 破産者が悪意で加えた不法行為による損害賠償請求権
  3. 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
  4. 親族関係に係る請求権
  5. 雇用関係に基づく使用人の請求権及び使用人の預り金返還請求権
  6. 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった債権
  7. 罰金等の請求権

(破産法253条1項1号ないし7号)

不貞(不倫)の慰謝料請求権は非免責債権にあたる?

質問の事例では、慰謝料請求権も破産債権となりますので、免責決定が出て確定してしまった場合、上記の非免責債権に該当しない限り、回収は困難ということになります。今回の慰謝料請求権が、上記1、4~7に該当しないことは明らかですし、慰謝料は精神的苦痛に対しての賠償金ですので、3.人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権でもありません。

不貞行為が法律上の「悪意」といえるかがポイント

残るは、2に該当するかということになりますが、問題は「悪意」といえるかという点です。
ここでいう「悪意」とは、単なる故意ではなく、他人を害する積極的な意欲、すなわち「害意」を意味すると考えられています。質問者の方を害する目的で不貞に及んでいたというのであれば別ですが、そういった目的で不貞に及ぶという事例は極めてまれでしょうから、ご質問の事例も含め、不貞を理由とする慰謝料請求権が非免責債権となるケースは極めてまれといわざるを得ないでしょう。

不貞慰謝料の確実な回収のために…予防策はある?

示談の段階で保証人をつける

例えば、示談段階で保証人をつけるなどしていれば、仮に不貞相手が破産した場合でもその保証人に対して請求することが可能です。

減額や分割払いなどを提案する

また、大口債権者が当方だけの場合には、破産手続が具体的に開始される前に次のような施策をとることで、破産免責によって逃げられるのを予防する余地もあると考えられます。

具体的には、相手方が破産申立てを予告してきた段階で、当方が金額の減額に応じる余地があることや、分割払いを提案することなど、柔軟な対応を取ることです。破産手続きの開始要件として、債務者の「支払不能」という要件があります(破産法15条1項)が、債権者が金額面や支払方法を柔軟に提案することによって、債務者は「支払不能」とはいえないと債務者や裁判所に対してアピールするのです。

不貞慰謝料請求と破産については弁護士にご相談ください

相手方に金銭請求をする際には、その履行可能性を考慮しつつ、確実な回収を図る方法を模索しなければなりません。弁護士に相談・依頼することで、不貞相手の破産リスクも踏まえた交渉ができる場合がありますので、まずはご相談ください。

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※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。

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