公開日:2020.11.15 最終更新日:2022.04.26
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個人再生は自宅を残して債務整理ができる|住宅資金特別条項とは|弁護士が解説

【本記事の監修】 福岡の弁護士 弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋 (代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。
目次CONTENTS
Q. 個人再生は自宅を残したまま借金を整理できる?
自宅(持ち家)を残したまま借金を整理したいのですが、可能でしょうか。借金は、住宅ローンを含めて相当額あります。個人再生という手続きがあると聞いたのですが…。
A. 個人再生では自宅(持ち家)を残して借金を整理する方法があります。
以下で、弁護士がくわしく解説いたします。
守りたい財産がありますか?
自分に合う債務整理の方法を
シミュレーションする
自宅を残したい場合は個人再生がおすすめ
自宅を残しながら債務整理をしたいという方にとって、検討していただきたいのが個人再生です。
たとえば、借金を整理する場合に「自己破産」を選択すると、破産をする方は免責決定により借金を返済しなくてよくなる一方、その方が所有する不動産は原則、換価(売却など)されてしまいますので、自宅を残すことが困難となります。
そのため、「自宅がないとその後の生活が立ち行かない」「一緒に生活する家族のことを考えると自宅はどうしても残したい」という人にとっては、破産は必ずしも適切な債務整理の方法とはならないことがあります。
個人再生の住宅資金特別条項を利用すれば、自宅を残すことができる
通常、個人再生を行った場合、借金が圧縮されることになります。そのため、何もしなければ住宅ローンも圧縮され、これに伴って債権者から担保権(たとえば抵当権)を実行されてしまい、結局不動産を確保できなくなってしまいます。
ただし、住宅資金特別条項というものを利用したうえで個人再生を行えば、住宅ローンをそれまでどおりの約定で支払うことで住宅を確保しながら、それ以外の借金は圧縮されます。そのため、持ち家を残しながら借金の整理を図ることができるのです。
住宅資金特別条項を利用できる場合とは?
どういった場合に、個人再生の住宅資金特別条項を利用できるのでしょうか。住宅資金特別条項を利用するためには、該当する借金が住宅資金貸付債権でなければなりません(民事再生法196条1項4号)。
住宅資金貸付債権とは?
住宅資金貸付債権とは、以下のとおり定められています(民事再生法196条1項2号)。住宅ローンが以下に該当する場合は、持ち家を残したまま借金を整理できる可能性があるということになるでしょう。
- 住宅の建設もしくは購入に必要な資金または住宅の改良に必要な資金の貸付けに係る分割払の定めのある再生債権であって、
- 当該債権又は当該債権に係る債務の保証人の主たる債務者に対する求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されているもの
持ち家が住宅兼店舗のようなケースはどうなる?
他方でたとえば、「事業を営んでおり、持ち家が自宅兼店舗だったような場合」はどうでしょうか。この場合、住宅ローンは、民事再生法196条1項2号にいうところの「住宅」に関する再生債権といえるのでしょうか。
民事再生法上の「住宅」の要件に該当すれば、住宅資金特別条項を利用できる
民事再生法上、住宅とは、以下の4つの要件をすべて満たす建物のことをいうとされています(民事再生法196条1項1号)。
- 個人である再生債務者が所有する建物であること
- 再生債務者が自己の居住の用に供する建物であること
- 建物の床面積の2分の1以上に相当する部分が専ら自己の居住の用に供されること
- 上記1~3の要件を満たす建物が複数ある場合には、これらの建物のうち、再生債務者が主として居住の用に供する一の建物であること
自宅兼建物であってもこの要件に該当する場合は、これにかかる住宅ローンは住宅資金貸付債権であるということができ、個人再生の住宅資金特別条項を利用できるということになります。
守りたい財産がありますか?
自分に合う債務整理の方法を
シミュレーションする
単身赴任中の場合は住宅資金特別条項を使える?
ご相談内容
自宅を所有しているのですが、現在単身赴任中です。そういう場合でも、住宅資金特別条項を使って個人再生をすることはできるのでしょうか?
A.単身赴任中でも住宅資金特別条項を利用できる場合があります。
個人再生手続のメリットのひとつとして、「住宅が残せる」というメリットがありますが、そのためには住宅資金特別条項が利用できる場合でなければなりません。
ご質問のケースは、「相談者が単身赴任中で、対象となる自宅に現に住んでいない」ということになりますので、そのような場合、その建物は再生債務者が自己の居住の用に供している建物といえるのか?ということで上記2「再生債務者が自己の居住の用に供する建物であること」の要件の該当性が問題となります。
「再生債務者が自己の居住の用に供する建物」とは
この要件は、工場用建物のように専ら事業の用に供する建物、賃貸アパートのように専ら他人の居住の用に供する建物などを、再生法上の「建物」から除外するために設けられたものです。
通常は、現に居住している建物が対象となりますが、それを徹底してしまうと、持ち家取得後に転勤により単身赴任する、といったよくあるケースで住宅資金特別条項が利用できないことになってしまいます。しかし、要件が設けられた趣旨に照らしてみても、このようなケースを除外しなければならない理由はありません。また、規定ぶりとしても、自己の用に「供している」ではなく、「供する」となっています。
よって、転勤終了後に、その建物を自己の居住の用に供するであろうことが客観的に明らかである場合は、(2)の要件を満たし、住宅資金特別条項が利用できると考えられています。
個人再生について弁護士に無料相談ができます
以上のように個人再生の住宅資金特別条項については少々複雑ではありますので、お悩みの際には、弁護士にご相談されることをおすすめいたします。
当事務所では、個人再生をはじめとする借金問題のご相談について、無料のオンライン相談(電話・Web)を実施しております。ご来所でのご相談も、もちろん可能です。お電話・Webで無料相談(初回30分)ができますので、お気軽にお問い合わせください。
※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。

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