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法律コラム

公開日:2018.08.25 最終更新日:2022.08.25

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会社の破産(法人破産)の流れ|メリットやデメリット|弁護士が解説

目次CONTENTS

会社経営をしていると、どのように経営努力を重ねても、多額の債務を抱えて経営が立ちゆかなくなることがあります。そのような場合、やむを得ず、会社が破産しなければならない状況も発生する可能性があります。

会社の破産手続き(法人破産)は、どのような流れで進んで行くのでしょうか。弁護士が詳しく解説します。

会社の破産(法人破産)

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会社(法人)の破産手続きとは

会社などの法人も、破産することが可能です。破産法では、破産者について、法人か個人かの制限を設けていないからです。

法人の破産手続きは、法人を清算する方法の1つです。裁判所に破産の申立てをして、法人の財産を換価(お金に換えること)して債権者に配当して清算し、最終的に法人は消滅します。会社が債務超過になっている場合、通常の方法では清算ができないため、破産することが必要となります。

会社(法人)の破産手続きの流れ

 

会社の破産手続きの流れは、以下のとおりです。

1. 破産の申立て

会社が破産するときには、まずは必要書類を集めて、裁判所に申立をする必要があります。

一般的には弁護士に依頼するので、まずは弁護士に相談に行く必要があります。破産手続きを弁護士に依頼すると、弁護士が必要書類を作成し、裁判所に申立を行います。

2. 三者審問(破産審尋)

破産の申立てをすると、破産手続き開始決定前に破産審尋が行われることがあります。

破産審尋とは、破産手続き開始決定をすべきかどうか、裁判所が判断をするために債務者に質問をする手続きです。このとき、破産管財人候補者を交えて、裁判官、債務者の3者で協議する「三者審問」という形で運用されるのが通常です。審問は裁判所で行われますが、弁護士も同行してサポートをします

3. 破産手続き開始決定

裁判所が破産手続き開始決定をします。このとき、破産管財人が選任されます。

破産管財人は、法人の財産を調査し、それを換価(現金化)し、債権者に配当することを含む様々な業務を行う人です。破産手続きが開始されると、法人の財産の管理処分権は、すべて破産管財人に委ねられることとなります。

4. 換価と配当

破産手続き開始決定が下りると、破産管財人により、法人の財産状況の調査、代表者との面談、聞き取り調査、財産の換価などが順次進められていきます。その間、裁判所では3か月に1回程度、債権者集会が開かれます。集会には、原則法人の代表者も出席していただくことになります。

5. 破産手続きの終結

すべての財産の換価と債権者への配当が終了したら、破産手続きが終了して法人は消滅します。ただし、配当するほどの財産が築けなかった場合は、配当の手続きは省略されます。

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法人破産のメリット

法人破産のメリット

1. 代表者が、法人から解放されて0からスタートできる

法人が破産をすると、法人は消滅するので、代表者は負債を抱えた法人の経営から解放されることになります。このことにより、代表者は新しい人生の再スタートを切ることが可能となります。

2. 弁護士に依頼すると、督促が止まる

破産手続きを弁護士に依頼すると、その後、債権者は弁護士宛に連絡をしてくるようになるので、債権者から督促を受けることがなくなります。これらのことで、経営者としては、非常に気持ちが楽になるでしょう。

3. 取引先にかける迷惑も小さくすることができる

売掛先や貸付先が破産をすると、取引先は、経理上「貸倒れ」などと処理することができるので、単に支払をしていない状態で放置されるよりも、少なくとも税務上は有利になります。破産をすると、取引先にかける迷惑が小さくなると考えることもできるということです。

法人破産のデメリット

法人破産のデメリット

1. 法人の有形無形の財産が消滅する

法人が破産すると、その法人は消滅します。そこで、これまで培ってきた企業の歴史や信用、技術やノウハウ、育ててきた従業員などは、すべて失われてしまいます。

また、破産後、その法人において事業を継続することは不可能です。破産を選択したら、愛着のある事業であっても、断念しなければなりません。

2. 代表者への信用が失われる

破産をすると、代表者個人に対する信用が失われることも多いです。

3. 代表者に、会社の保証債務の返済義務が残る

中小企業などで代表者(社長)が会社の債務を保証していると、代表者が会社の債務を返済しなければなりません。このときには、代表者個人の財産も取り立ての対象となります。返済できないと、債権者から裁判を起こされて、代表者個人の財産が差し押さえられてしまう可能性があります。

会社(法人)の破産と社長(個人)の破産

会社の破産と社長の破産

会社が破産するときには、代表者が保証をしているため、代表者も会社とともに破産やむなしとなるケースが多いです。代表者個人に負債があったり法人の保証をしていたりする場合には、代表者個人が破産しない限り、会社だけが破産しても代表者の債務が残るので、問題を解決できないからです。このような場合、会社と代表者個人の2件分の破産手続きが必要です。

ただ、会社と経営者が同時に破産をするとき、裁判所における手続きとしては、事実上一緒に処理されることが多いです。関連事件として、1人の管財人がつきますし、裁判所に納めるお金も、2件分より安くなることがあります。

代表者個人が破産をした場合、代表者の保証債務と個人の債務もすべて免責の対象となるので、破産後、代表者はまた0からやり直すことが可能です。

Q. 法人が破産したら、法人の債務はどうなる?

A. 法人が破産した場合、法人の債務は消滅します。

自然人の債務者が破産した場合、その方の経済的再出発を促すため、最終的には裁判所が「免責決定」と呼ばれる決定を出すことをもって、その方は借金苦から解放されます。一方で、法人が破産した場合、裁判所がその法人に対して免責決定を出すことはありません。

なぜなら、法人の場合、破産手続の終了とともにその人格が消滅するのが原則であり、当該消滅に伴い法人の債務負担も消滅するため、わざわざ免責決定を出す必要がないのです。

会社が破産宣告を受けたあと破産終結決定がされて会社の法人格が消滅した場合には、これにより会社の負担していた債務も消滅するものと解すべきであり…。
(最高裁判例平成15年3月14日)

以上のとおりですので、法人が破産した場合、法人の債務は消滅します。

Q.法人が破産したら滞納した税金はどうなる?

税金の画像

A. 法人が破産した場合、滞納した税金も消滅するため支払う必要はありません

法人が破産した場合、法人格の消滅により法人の債務が消滅しますが、消滅の対象となる債務は税金か否かを問いません。すなわち、税金であってもその債務は消滅することとなります。

一方で、自然人が破産した場合、裁判所が下す免責決定をもって、その方は借金苦から解放されます。もっとも、税金等に関する請求権は例外で、免責の効力が及ばないとされています(破産法253条1項)。よって、税金等に関しては、免責決定が下されても、その支払いから逃れることはできません(とはいえ、分割払い等の柔軟な支払いに応じてくれる場合が多いようです。)。

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Q. 法人破産で同時廃止となることはある?

法人破産で同時廃止になることはある?

A. 法人の破産については同時廃止を認めないとする裁判所が多いです。

破産手続の開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をすることを、同時廃止あるいは同廃(どうはい)といいます。この場合、開始決定と同時に廃止決定が出されますので、破産管財人も選任されず、その時点で破産手続が終了することとなります。

裁判所は、以下の要件が具備されている場合に、同時廃止の決定を出すことができます(破産法216条)。

  1. 破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認められること
  2. 財団不足が破産手続開始の決定前に判明したこと
  3. 手続費用の予納がないこと

法人が破産を申し立てた場合でも、上記1~3の要件が具備されていると認められるのであれば、文理上は同時廃止とすることは可能です。

しかし、法人の場合、自然人の場合に比べて財産状況の把握が困難であることが多く、破産管財人が調査を行うことによってはじめてその財産関係を明らかにすることができる事案が多いため、慎重な運用を心がける必要があります。

そのため、法人の破産については同時廃止を認めないとする裁判所が多いというのが実態かと思います。ちなみに、福岡地方裁判所も佐賀地方裁判所も、法人の破産手続については同時廃止を認めていません(2018年12月現在)。

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Q. 会社を破産する時に事業用賃借物件の明渡しができない場合どうなる?

この度、会社を破産の上、たたむことにしました。テナントビルの一室を賃借し、そこを事務所として使っていたのですが、費用の問題から明渡しをすることができませんでした。この場合、どうなるのでしょうか?

賃貸物件・貸店舗の写真

A. 破産管財人による明渡しの作業がなされることとなります。

破産手続が開始されるとともに「破産管財人」が選任されますが、当該事務所は事業用の賃借物件ですので、会社の事業継続がない以上は使い続ける必要もなく、できる限り速やかに破産管財人による明渡しの作業がなされることとなります。

明渡しにかかる費用がない場合は、法人の財産を換価する(お金に換える)等して費用を捻出したり、賃借人と交渉したうえで和解的な解決を図るなどし、対応されることになります。

Q. 会社を破産した場合、自社ビルを賃借りしている人との権利関係はどうなる?

私が経営する会社では、自社ビルを賃貸しています。この度、会社を破産した上で、たたむこととしたのですが、この場合、自社ビルを賃借りしている人との権利関係はどうなるのでしょうか。賃借りしている人は追い出されてしまうのでしょうか?

A. この場合、賃借人が自身の賃借権を対抗できるか否かによります

賃借権について登記をしている場合(民法605条)賃借人が建物の引渡しを受けている場合(借地借家法31条1項)など、賃借権に第三者対抗要件が備わっている場合は、破産手続が開始されても賃貸借契約が解除されることはありませんので、賃借人は、引き続きその建物を使用し続けることができます

一方で、賃借権に第三者対抗要件が備わっていない場合は、破産手続開始後、破産管財人により破産法53条に基づき契約の解除が通告される場合があります

Q. 会社の資金繰りが悪化して手形の不渡りを出してしまいそうな時はどうすればよい?

資金繰り

A. 会社の収益状況や支出状況などを精査して、今後会社の再生ができるのか、清算をするのか、検討する必要があります。

また、破産や民事再生などの法的手続に進まざるを得ないとしても、いつどのタイミングで、どのような処理をすべきか(あるいはしてはならないのか)、手続きを行う上でどのような問題があるのかは、会社の資産や負債の状況、保証人の有無等によって様々です。

素人判断でしてはいけないことを行ってしまい、あるいは速やかに行うべきことを失念するなどして、倒産処理が紛糾したり混乱したり、思わぬ不利益を被ることもあり得ますので、お早めに弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

Q.新型コロナウイルスの影響で経営が悪化し、会社の倒産を考えています。どのように進めればよいですか?

A. 会社の状況によりケースバイケースですので、お早めに弁護士にご相談ください。

営業の停止、債権者への説明、従業員への説明等々、会社の倒産とひと口に言っても、初動にて対応すべきことは様々あります。どれから手をつけるべきかはケースバイケースであり、会社の置かれた状況により異なります。

これらを適切に判断できるのは、倒産処理の専門家である弁護士をおいて他にはいません。まずは、弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

Q. 返済のリスケ(リスケジュール)について弁護士に相談できますか?

A. もちろん可能です。

新型コロナウイルスの影響で資金繰りが悪化し、金融機関への返済が困難となった場合の、返済のリスケ(リスケジュール)についても弁護士に相談できます。

リスケのための返済計画の策定等のお手伝いをはじめ、金融機関との協議の際の同席など対応することが可能です。

会社の破産に関するご相談は桑原法律事務所へ

会社が債務超過になっても、ただちに破産が必要ということにはなりませんが、決断が必要なケースはあります。どのような対応をとるにせよ、早く対処すればするほど、良い選択肢の幅が広がります。経営状況が苦しいと感じたら、状況が悪くなる前に、早めに弁護士に相談しましょう。

当事務所は、会社(法人)の破産手続きについて、無料相談(初回30分)を承っております。

会社の経営上の問題に対し、法律の専門家の立場からサポートいたします。経営に関する問題は、ご遠慮なくご相談ください。

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※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。