公開日:2018.07.17
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暗号資産(仮想通貨)は遺産分割の対象になる?

【本記事の監修】 福岡の弁護士 弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋 (代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。
目次CONTENTS
ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)は、遺産分割の対象になるのでしょうか。以下で、弁護士が解説します。
遺産分割の対象になる財産とは
裁判所の遺産分割審判手続においては、遺産分割の対象とならないとされている財産が多く存在することに注意が必要です。
最高裁判例では、金銭債権などの可分債権は、被相続人の死亡によって法律上当然に分割されて、各共同相続人がその相続分に応じて権利を取得します(最高裁最昭和29年4月8日判決等)。
この可分債権とは、例えば、貸金、不動産賃料、交通事故による損害賠償請求権などです。これら可分債権について、遺産分割協議によって相続人間で合意することは可能です。しかし、話し合いが調わずに裁判所に判断を求めようとしても、法律上当然に相続分に応じた権利を取得するものとされるだけで、裁判所は審判を下してくれま
せん。
預貯金ですらも、従前は、金融機関に対する払戻請求権という可分債権であり、遺産分割の対象にならないものと解されてきました。しかし、平成28年12月になってようやく、預貯金制度の整備の調っている現在、その性質上、法律上当然に分割されるものではないとして、遺産分割の対象になるものと解され、判例変更されました(最高裁平成28年12月19日決定)。
仮想通貨は遺産分割の対象となる?
さて、前記の状況を踏まえて、ビットコインなどの仮想通貨については、遺産分割の対象となるのでしょうか。今後、裁判での争いも増えそうです。
仮想通貨は、日本通貨ではないため、遺産価値をいかに算定するかという問題も生じえます。この点は、基本的には審判時を基準に仮想通貨を取引相場で円換算することになるでしょう。また、仮想通貨の保有者死亡後に人知れずとなるケースや、アクセス不能になるケースなど、事実上承継されないまま有耶無耶となってしまう現実問題も想定できます。
行政で税制を中心に法体制が進んできてはいますが、どのように法整備されるのか、遺産分割において、裁判所はどのような判断を下していくのか、注目されますが、預貯金制度ほどの整備がされていない現状では、審判においては遺産分割の対象とならない可分債権と解されるでしょう。
仮想通貨を利用する場合に、死後承継されないことを予防するための現状策としては、
- 自分の死後にもアクセス可能となるよう情報を残しておく
- 遺言書に誰が承継することになるかを記載しておく
などの対応が重要といえます。
※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。