公開日:2020.09.04
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賃金・ボーナスの非常時払いに応じないといけない?|弁護士が解説

【本記事の監修】 福岡の弁護士 弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋 (代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。
目次CONTENTS
法律には、「賃金の非常時払い」という制度があります。以下のご相談を例に、桑原法律事務所の弁護士が解説いたします。
ご相談 先日、定年間際の従業員Aから、「このまま定年になると春のボーナスがもらえない。法律には、非常時払いというのがあると聞いた。これをもって春のボーナスを払ってもらいたい。」と言われました。応じないといけないのでしょうか? |
賃金の非常時払い制度:労働基準法25条
法律には、賃金の非常時払いという制度があります(労働基準法25条)。
使用者は、労働者が非常時払いを請求してきた場合は、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならないとされています。
要するに、前払いをしないといけないわけですね。
ここでいう賃金は、労働基準法11条にいう賃金と解されていますので、賞与も含まれることになります。
そうすると、従業員Aの請求にも応じないといけないようにも思いますが、法は、如何なる場合にでも非常時払いを認めているわけではありません。
支払いに応じる必要があるのは「非常時」
賃金の非常時払い制度は、「非常時」というその名のとおり非常時にしか認めていません。
非常時とは、具体的には、労働者または労働者の収入によって生活を維持する者の、出産、疾病、災害、結婚・死亡、労働者または労働者の収入によって生活を維持する者がやむを得ない事由によって1週間以上に渡って帰郷する場合です(労働基準法25条、労働基準法施行規則9条)。
従業員Aの非常時払いの理由は、このいずれにも該当しませんので、Aの求めには応じる必要はありません。
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※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。