公開日:2021.09.17 最終更新日:2022.07.01
CASE
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同一労働同一賃金とは|企業の注意点とリスク|弁護士が解説

【本記事の監修】 福岡の弁護士 弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋 (代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。
目次CONTENTS
同一労働同一賃金制度は、パートタイム・有期雇用労働法により規律され、大企業では2020年4月1日から、中小企業では2021年4月1日から施行されています。
同一労働同一賃金とは
同一労働同一賃金とは、正規雇用労働者(いわゆる期間の定めのない雇用契約を結んでいる正社員) と非正規雇用労働者(期間の定めのある雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者等)との間の不合理な待遇格差の是正を目指すものです。
わかりやすく言えば、契約形態に関わらず、同じ労働をしているのであれば、同じ待遇をしてあげましょうという考え方です。
また、待遇には、給与や賞与だけではなく、各種手当や福利厚生等あらゆるものが含まれることにも留意が必要です。
同一労働同一賃金:企業の注意点とリスク
仮に、同一労働同一賃金に違反し、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で不合理な待遇格差が存在している場合、企業は、労働者から待遇格差を補填するための損害賠償請求を受けるリスクがあるうえ、労働局長から助言・指導・勧告等の行政処分を受けるリスクもあります(パートタイム・有期雇用労働法24条1項)。
したがって、同法の施行に際し、雇用契約、就業規則の見直し対応をとっていない企業は、常に上記のようなリスクに晒されているといえますので、早急な対応が必要です。
少なくとも、以下に該当する企業は、専門家に依頼し、就業規則の見直しをすべきと思われます。
- パート社員・契約社員・派遣社員などの非正規雇用労働者がいる
- 非正規雇用労働者について、正規雇用労働者(正社員)と待遇の差がある
- 2の待遇の差について、職務内容(業務の内容+責任の程度)、職務内容・配置変更の範囲、その他の事情から、合理的に説明することができない
同一労働同一賃金=「不合理」な待遇格差を是正する
ただし、最高裁判例によれば、正社員と非正規社員との待遇の違いをすべて解消することが求められているわけではなく、あくまで、「不合理」な待遇格差を是正することが求められているに過ぎません。
そして、「不合理」か否かは、当該格差の趣旨、目的、内容、程度等、あらゆる事情を考慮した上で判断されるため、企業によってケースバイケースとなり、決して一義的ではありません。
したがって、企業の実態に応じ、個別具体的に就業規則の適法性を吟味していく必要があります。
仮に不合理な待遇格差が存在する場合は、先に述べたリスクを回避するため、早急に不合理な待遇格差を是正する取組が必要になります。
例えば、非正規雇用労働者の職務範囲を別途明確に定めたり、正規雇用への登用・転換制度を新設したりすることにより、待遇格差を合理的なものとしていくことが考えられます。
待遇の格差について裁判等が起きていることも事実
正規雇用労働者と非正規雇用労働者との待遇格差に関する世の中の考え方は急速に変わってきており、企業にも早急な変化が求められます。
事実、待遇格差の是正を求める労働審判、裁判等の法的紛争は多数発生しており、企業側に義務違反が認められることも少なくありません。
パートタイム・有期雇用労働法はすでに中小企業にも施行されておりますので、少しでも不安がある場合は、速やかに専門家にご相談いただき、就業規則等をチェックしてもらうことをおすすめいたします。
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