公開日:2022.04.15
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交通事故、慰謝料の相場 | 2022最新 | 福岡の弁護士が解説

【本記事の監修】 福岡の弁護士 弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋 (代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。
目次CONTENTS
交通事故における慰謝料とは、被害者が交通事故によって受けた精神的苦痛に対する賠償金です。慰謝料の相場はどれくらいで、どうやって計算するのでしょうか。交通事故に精通する福岡・佐賀の弁護士法人・桑原法律事務所の弁護士が分かりやすく解説します。
交通事故の慰謝料とは:3つの基準
交通事故の慰謝料の計算には、下記の3種類の基準があります。
- 自賠責保険(共済):車やバイクの所有者に、加入が義務付けられている「自賠責保険」から支払われる場合の基準です。過失相殺の有無などといった観点を除けば、3つの基準のうちで最も金額が低くなることが多いです。
- 任意保険:自動車の所有者が任意で加入する保険会社による独自の基準です。1日当たりの基準額は会社により異なります。
額は一般的に、自賠責より高く、裁判基準より低くなります。
- 裁判(多くの弁護士はこの基準で交渉):交通事故裁判の判例などから算出した基準です。3つの基準のうちで最も金額が高くなる傾向です。毎年発行される「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(発行:日弁連交通事故相談センター東京支部、通称:赤い本)に算定表が掲載されています。
弁護士に交渉を依頼した場合に多く用いられる基準です。
交通事故の慰謝料とは:入通院、後遺障害など4種類
交通事故での慰謝料は、ケガや死亡といった「人」への損害がある場合などで認められます。損害で受けた精神的苦痛の原因によって、主に下記のように分けられます。
- 入通院(傷害)慰謝料:ケガの治療のため医療機関へ入院・通院した結果、生じた精神的苦痛
- 後遺障害慰謝料:事故で残った後遺症(後遺障害)による精神的苦痛
- 死亡慰謝料:亡くなった被害者と遺族が受けた精神的苦痛
- 近親者の固有慰謝料:被害者の家族が受けた精神的苦痛
入通院慰謝料の相場①自賠責だと「1日4,300円」
自賠責保険(共済)では、ケガで入通院した場合の慰謝料は1日4,300円で計算されます。
ケガの程度や実際に通院した日数などを考慮して「治療期間」内で決められます。
通院の場合、基本的には実際に通院した日数の2倍か、治療開始日から終了日までの全日数のうち、少ないほうの日数を基準に算定します。入院していたら実際に入院した日数になります。
自賠責では後遺障害がない場合、慰謝料のほか治療費や休業による損害など、すべての費目を足した額が「120万円」を限度に支払われます。
自賠責の限度額を超える部分があっても、加害者には請求できます。加害者が任意保険に入っていれば、通常は任意保険会社がカバーします。
入通院慰謝料の相場②裁判(弁護士)基準は自賠責の4倍
多くの弁護士が基準とする入通院(傷害)慰謝料の算定表は2種類あります。骨折など重傷の場合と、むち打ちなど軽傷の場合で分けています。それぞれ入院か通院かでも額が違います。
重傷の場合の基準(別表Ⅰ)は下記になります。入院だけなら横軸、通院だけなら縦軸、両方の場合は該当する月数が交差するマスの額になります。
例えば
- 入院3か月なら145万円、6か月なら244万円
- 通院3か月なら73万円、6か月なら116万円
- 入院3か月+通院3か月なら188万円
出典:民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(赤い本)2022年版
入院の場合で自賠責の額と比べてみましょう。
- 入院1か月(30日間):自賠責12万9千円、裁判基準53万円(裁判基準が4.1倍)
- 入院3か月(90日間):自賠責38万7千円、裁判基準145万円(同3.7倍)
裁判基準(赤い本基準)では長期にわたって通院すると「実通院日数×3.5」程度を算定の目安にすることもあります。たとえば主に経過観察のためだけに、期間としては長期の通院が必要となるケースなどです。
むち打ちなど軽傷に適用となる基準(別表Ⅱ)は下記です。見方は別表Ⅰと同じです。
出典:民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(赤い本)2022年版
たとえば
- 入院1か月:35万円(自賠責12万9千円)
- 入院3か月:92万円(自賠責38万7千円)
です。軽傷でも通院が長期にわたる場合、「実通院日数×3」程度を算定の目安にするケースもあります。
後遺障害慰謝料の相場①自賠責の場合
交通事故で後遺障害が残ったら、後遺障害の等級に応じた損害賠償を受けることができます。
後遺障害の場合は「残った障害の重さ」に応じ、逸失利益(事故がなければ得られるはずだった収入など)や慰謝料などが支払われます。
「障害の重さ」はまず「介護の要・不要」で2つに分けられ、さらに下記の等級に分けられます。
- 介護を要する後遺障害:1級、2級(自動車損害賠償保障法 別表1)
- 上記を除く後遺障害:1~14級(自動車損害賠償保障法 別表2)
等級によって支払われる自賠責保険の限度額(逸失利益と慰謝料などを合計した額)は、4,000万円〜75万円の範囲で定められています。
要介護の後遺障害の慰謝料:1級=1,650万円、2級=1,203万円
被扶養者(未成年の子どもなど)がいると加算され、要介護1級は1,850万円、2級は1,373万円になります。
また初期費用として1級には500万円、2級には205万円が加算されます。
介護を要さない後遺障害の慰謝料:1級=1,150万円、14級=32万円
1〜3級で被扶養者がいれば増額になります。
後遺障害慰謝料の相場②裁判(弁護士)基準の場合
弁護士が一般に用いる基準(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準)では、介護が必要かどうかに関係なく、14の等級に分けられています。
1級の2,800万円を筆頭に、14級は110万円です。被扶養者がいる場合の加算は具体的な額として示されていません。
出典:民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(赤い本)2022年版
自賠責と裁判(弁護士)基準の慰謝料の比較:裁判が2~3倍
後遺障害のケースで、自賠責と裁判基準で得られる慰謝料を比較しました。
自賠責は金融庁・国土交通省の告示
裁判基準は「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 2022年版」(赤い本)より
自賠責保険だと基本1,650万円ですが、裁判(弁護士)基準だと基本2,800万円になり、2倍近くになります。
また、裁判(弁護士)基準もあくまで基準額(目安額)です。個別具体的事情が勘案されます。
当事務所でも後遺障害慰謝料3,100万円を獲得した例など、基準額を超える認定例が多数あります。
死亡慰謝料の相場①自賠責の場合
被害者が死亡の場合、自賠責からは葬儀費、逸失利益(事故がなければ得られるはずだった収入など)、被害者と遺族の慰謝料が支払われます。トータルの限度額は3,000万円です。
亡くなった本人の慰謝料は、400万円と定められています。
自賠責保険上、遺族で慰謝料を請求できるのは、故人の父母(養父母を含む)、配偶者、子どもです。
請求者の人数により、下記の額が加算されます。
- 1人:550万円
- 2人:650万円
- 3人以上:750万円
さらに故人に被扶養者(未成年の子どもなど)がいれば、200万円が加算になります。
たとえば死亡した被害者に配偶者と10歳の子1人、両親がいるとします。
請求権者は3人以上、被扶養者あり=400万円+750万円+200万円=1,350万円
となります。
死亡慰謝料の相場②裁判(弁護士)基準の場合
出典:民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(赤い本)2022年版
裁判(弁護士)基準の場合、上記のように3つに分けられています。
裁判(弁護士)基準も、あくまで基準額(目安額)であり、個別具体的事情が勘案されます(下記裁判例参照)。
一家の支柱:2,800万円
「一家の支柱」とは、世帯が暮らすための主な収入を得ていた被害者を意味します。
【裁判例】
- 1つの事故で両親が死亡、遺児2人(9歳、6歳)に各2,800万円
母親、配偶者:2,500万円
【裁判例】
- 主婦(39歳)について本人分2,200万円、夫250万円、子250万円、両親各150万円、合計3,000万円
その他:2,000~2,500万円
「その他」とは単身者や子ども、高齢者が含まれます。
【裁判例】
- 単身者(男性・31歳・会社員)について、一人息子で父親の会社を継ぐ立場だったことなどから、本人分2,200万円、両親各300万円、合計2,800万円
交通事故の慰謝料は弁護士に相談を
交通事故被害にあうと「相手や保険会社の誠意を感じられない」「相談できる相手がいなくて心細い」といった悩みを抱えがちです。
創業25年目の桑原法律事務所は、佐賀・福岡において交通事故の弁護を手がけています。約2億5,200万円の賠償(当初提示額の約4.5倍)を獲得するなど、高額な賠償などの実績もございます。
交通事故については、無料で相談(初回30分)をお受けしております。
提示された慰謝料の額についても、弁護士が無料で妥当なのかどうかなど診断しますので、まずはお気軽にご相談ください。
福岡県の交通事故状況
福岡市では2006年、飲酒運転の車に追突され、幼児3人が死亡しました。この事故は「福岡の3児死亡飲酒事故」として、全国的にも大きな社会問題となりました。
福岡県では2011年にも、高校生2人が犠牲となった飲酒事故があり、2012年から「福岡県飲酒運転撲滅条例」が施行されています。
福岡県警の統計によると2021年、福岡県で起きた交通事故は20,066件(前年比6.6%減)でした。亡くなった人は101人(前年比11%増)で、このうち飲酒運転による死者は6人でした。
※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。