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法律コラム

公開日:2022.04.20

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内部通報制度とは | 公益通報者保護法が改正 | 中小企業がすべき対策

目次CONTENTS

内部告発は「内部通報」「公益通報」とも呼ばれ、企業の不正が見つかる端緒になっています。より告発しやすいよう「公益通報者保護法」が改正、2022年6月に施行されます。

「内部通報」というとネガティブなイメージですが、会社の不正を見つけ、コンプライアンス経営につながります。制度について、福岡・佐賀で中小企業の顧問を100社以上、務める弁護士法人 桑原法律事務所の弁護士が解説します。

内部通報制度

Q.内部通報制度とは何ですか?

A.職場の不正に気づいた従業員が通報できる専用窓口をもうけ、企業側が問題を調査・解決する仕組みです。

消費者庁が2016年に行った調査では、内部通報制度がある事業者は46.3%、「検討中」は 13.2%、「導入する予定なし」は 39.2%でした(回答3,471事業者)。

制度のある企業で不正が見つかる端緒としては、「内部通報(通報窓口や管理職などへの通報)」が最も多く(58.8%)、次いで「内部監査」(37.6%)「職制ルート(上司による業務チェックや従業員からの業務報告等)」(31.5%)の順となっています。

制度の意義として、消費者庁のガイドラインでは下記などを示しています。

  • 組織の自浄作用の向上
  • コンプライアンス経営の推進
  • 消費者や取引先、従業員、株主などステークホルダーからの信頼獲得
  • 企業価値の向上や事業者の持続的発展

企業の社会的責任を果たし、社会経済全体の利益を確保する上でも重要な意義があるとしています。

内部通報の事例:「人事上の不利益」発言、有罪

内部通報をめぐるパワハラ事件の裁判例をご紹介します。

内規違反を内部通報した福岡県内の郵便局長7人が、「郵便局長でつくる連絡会役員からパワハラを受けた」として役員3人を相手取り、損害賠償を求めた裁判がありました。

福岡地裁は2021年、3人に約200万円の賠償を命じる判決を言い渡しました。

判決によると原告らは2018年、被告のうちの1人の息子の内規違反について、日本郵便本社の内部通報窓口に通報しました。

本社からの連絡で通報を知った役員は2019年1月、原告の1人に対して「(通報者を)絶対つぶす」などと発言。ほかの被告も原告に役職を辞任するよう求めるなどしました。

判決では「人事上の不利益があることを示しつつ、通報者であることを認めさせようとした」として違法性を認めました。

役員は「内部通報を認めるよう強要した」として強要未遂罪で在宅起訴され、有罪判決が確定しています。

この裁判のように、通報した人が不利益を受ける事例はあとを絶ちません。2022年6月改正では、通報者を守るルールを強めています。

2022年の改正:通報しやすく・不正を是正しやすく

不正に気づき、勇気を出して通報した人が不利な状況に陥ると「黙っていたほうがいい」となり、会社の不正リスクを把握することはいっそう難しくなります。2022年改正では、通報者の保護がより強化されます。

改正のねらいは下記などにあります。

  • 従業員は通報しやすく、事業者は不正を是正しやすく
  • 行政機関などに通報しやすく
  • 通報者が保護されやすく

主な改正① 通報窓口の設置義務

常時使用する労働者」(パートタイマーを含む)が301人以上の企業では、通報窓口の設置が義務となります。

総務部や法務部が想定されますが、親会社や顧問弁護士など、外部でもかまいません。

企業は内部情報を受け付けて調査し、対応する担当者(公益通報対応業務従事者)を定めなければなりません。

主な改正② 通報窓口担当者に守秘義務

通報した人が誰なのか、特定しようとする「通報者探し」も原則、禁止になります。通報窓口の担当者(担当だった人も含む)は、通報した人につながる情報(氏名や社員番号など)の守秘義務が新たに課されます。

違反して情報を漏らすと、刑事罰(罰金30万円以下)の対象になります。

主な改正③ 行政・報道機関などに対する通報を保護

通報した人が保護を受けるための要件が緩和されました。

行政機関に対する通報では、これまでは通報の内容が「真実であると信ずるに足りる相当の理由」がある場合にのみ、保護の対象とされていました。

「相当の理由」と判断・証明するのは簡単ではありません。

このため改正法では、「通報の対象事実が生じ」ているか「まさに生じようとしている」と考えられ、かつ「通報者の氏名・住所」や「対象事実の内容」などを書面で提出すれば、保護の対象となるようにしました。

報道機関などに対する通報では、「生命・身体に対する危害」に加え「財産に対する損害(回復困難か重大なもの)」などのケースも保護の対象になりました。

主な改正④ 保護される対象が拡大

通報して保護される人には、社員やアルバイトに加え、退職後1年以内の人や役員も含まれるようになりました。

通報を理由とした解雇・減給・降格などの禁止に加え、派遣契約の解除や通報を理由とした損害賠償請求も禁止されました。

内容の保護対象も広がりました。これまでは刑事罰(懲役刑、罰金など)の対象となる法令違反だけだったのが、行政罰(過料など)も対象となりました。

中小企業のとるべき対策

中小企業(従業員300人以下)では、内部通報制度の整備は「努力義務」とされていますが、不正を防いでコンプライアンス経営をすすめる狙いから、体制をつくる会社も増えています。

社内に窓口がなければ、行政やマスコミが通報先として考えられます。社名が明らかになったり報道されたりすれば、イメージダウンなど経営に影響しかねません。

中小企業でも各社の事情に即した制度は必要でしょう。

内部通報制度について悩みがあれば、ぜひ当事務所にご相談ください。制度設計や相談窓口としての活動、制度を周知するための研修などアドバイスさせていただきます。