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公開日:2022.05.11

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試用期間中の解雇|「能力不足」理由はOK?|弁護士が解説

目次CONTENTS

従業員を採用する際に、試用期間を設ける企業は多いでしょう。試用期間中に、能力不足などの理由により解雇することは問題ないのでしょうか。企業法務に精通する福岡・佐賀の弁護士法人 桑原法律事務所の弁護士が解説します。

試用期間とは

法律上には「試用期間」についての明確な定めはありません。「試用期間」とは、一般的に、従業員としての適格性を観察・評価するための期間のことをいいます。

その法的性質ですが、最高裁は、個々の事案に応じて判断すべきとしつつ、解約権が留保されている労働契約が成立していることを認めます。この場合、労働契約が成立してはいますが、解約権が留保されていますので、客観的・合理的理由があり、社会通念上相当な場合は、当該解約権を行使し、採用を拒否することができます。

試用期間であっても、労働時間や最低賃金、労働保険や社会保険などは、通常の労働者と同様のルールが初日から適用されます。

試用期間の有無や期間については、求人票に明記しておくのが原則です。業務内容は、試用期間の終了後に従事する業務ではなく、試用中に従事すべき業務を明記します。

試用期間の長さについて法的な定めはありませんが、一般的には3か月〜半年です。あまりに長期の試用期間を定めてしまうと、公序良俗に反するとして試用期間に関する定めが無効となることがあり得ますので、注意が必要です。

試用期間は解雇しやすいですか?問題はありますか?

試用期間なら解雇しやすい?

試用期間中あるいは終了後の「解雇」は、留保していた解約権の行使とみる場合が多かろうと思います。裁判例では、留保の趣旨からみて、本採用後よりは解雇が認められやすいと判断されています。

とはいえ、解雇権の行使である以上、客観的・合理的理由があり、社会通念上相当でなければなりません。これらの要件を満たさない場合は、留保解約権の行使であるとはいえ無効となります。

試用期間中の解雇が有効とされた裁判例

採用時には知りえなかった事実が判明し、本採用しないと判断したことに客観的・合理的理由があり、社会通念上相当であれば解雇は有効とされます。

解雇が有効と判定された裁判例は、下記などです。

  • 周囲とのトラブルが絶えなかった労働者が、就業規則にある解雇事由「就業態度が著しく不良で他に配置転換の見込みがないと認めたとき」に該当(雅叙園観光事件、東京地裁・1985年)
  • ①緊急の業務指示に速やかに応じない、②面接でパソコン使用に精通していると述べていたのに満足にできない、③代表取締役の業務上の指示に応じない(ブレーンベース事件、東京地裁・2001年)
  • シニアマネージャーとして高い能力の発揮が求められていたが、十分な時間をかけて指導したのに単純作業を適切にできないなど基本的な業務遂行能力が乏しく、管理職としての適格性に疑問を抱かせる態度もあり、事業の規模から配置転換も困難であるなどから解雇が有効とされた(キングスオート事件、東京地裁・2015年)

解雇通知書の画像

試用期間中の解雇が無効とされた裁判例

解雇が無効とされた裁判例は、下記などです。

  • 会長に声を出してあいさつしなかった」という解雇理由は、社会通念上相当性を欠く(テーダブルジェー事件、東京地裁・2001年)
  • 証券営業マンの成績不振を理由とした解雇に対し、わずか3か月の手数料収入のみで資質などが従業員として適格でないとは認めることはできない(ニュース証券事件、東京地裁・2009年)
  • 年俸1300万円で採用した部長につき、「業務の速やかさに欠け、会社の方針に合わない」として2か月余りで本採用を拒否した事案で、判決では、業務遂行の状況は不良とはいえず、たとえ能力が期待通りでなかったとしても、2か月で職責を果たすことは困難とした(オープンタイドジャパン事件・東京地裁、2002年)

試用期間中に「能力不足」で解雇できますか?

試用期間中に能力不足で解雇できますか?

能力不足による解雇が有効かどうか、上記のとおり事案によって裁判所の判断は異なります。前述のとおり、試用期間中であっても解雇には制限があり、「能力不足」だからといって自由に解雇はできません。

能力や適性などを理由にした解雇が認められるには、以下の点などが問われる場合があります。

  • 経営に影響を及ぼすような著しい成績不良
  • 客観的で合理的な評価
  • 教育や訓練が十分だったか
  • 能力が発揮できる替わりの職場はなかったか

試用期間の延長は可能ですか?

正社員として採用されました。3か月の試用期間が満了になる2週間前に、「試用期間を1か月延長します」と言われました。就業規則では、試用期間について「総合的に判断して本採用の有無を決定する。試用期間は延長することがある」との記載があります。

適性を判断するのに合理的な期間を超えて試用するのは、前述したとおり公序良俗に反する可能性があります。

試用期間を延長する場合は、以下の点に注意が必要です。

  • 就業規則に定めている
  • 合理的な理由があるか
  • 延長期間が社会通念上妥当な長さであるか
  • 試用期間満了前に告知しているか

上記のケースでは、試用期間を延長するのに「合理的な理由があるか」という点がポイントとなるでしょう。

就業規則の写真

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※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。