公開日:2022.06.03
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自己破産したら持ち家はどうなりますか?引っ越しできますか? | 弁護士が解説

【本記事の監修】 福岡の弁護士 弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋 (代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。
目次CONTENTS
借金を減らす法的な手続きの一つである自己破産をすると、住まいはどうなるのでしょうか。自己破産したあとの住まいへの影響について、債務整理に精通する福岡・佐賀の弁護士法人 桑原法律事務所の弁護士が解説します。
Q. 自己破産中に引っ越しはできますか?
A. 破産手続き中の引っ越しや旅行は裁判所の許可が必要です。許可がなければできないとされています。
破産した人を破産手続きに協力(説明義務の履行など)させる一方、逃走や財産隠しなどを防ぐためです。
もし許可なく引っ越せば、借金が免除されない理由(免責不許可事由)となりえます。
問題なければ許可されます
とはいえ、居住・移転の自由は憲法上の基本的人権です。引っ越しや旅行が破産手続き上、問題であると明らかでなければ、許可される運用となっています。
Q.自己破産をすると賃貸アパートを退去しないといけませんか?
A. すぐに退去しなければならないということはありません。
自己破産するとしても家賃の滞納がなく、家賃を支払う限り住み続けられます。
Q.家賃を滞納しています。自己破産すれば払わなくてよくなりますか?
A. マンションやアパートの家賃を滞納している場合、裁判所による「破産手続開始決定」より前の滞納分は「破産債権」となり、免責(免除)の対象となります。
なお、不法行為による損害賠償請求権など「非免責債権」といわれる債権については免責の対象から除かれますが、滞納家賃が「非免責債権」に該当するケースは少ないでしょう。
Q.家賃を滞納しています。自己破産後も住めますか?
家賃の滞納があると、破産が家主との信頼関係に決定的な亀裂を生じさせかねません。
引き続き住みたければ、家主の反応を想定しながら慎重に計画する必要があります。
「滞納家賃をまとめて支払えばよいのではないか」と思われるかもしれませんが、そうすると一部の債権者のみを優遇する「否認行為」に該当する危険性があります。
破産手続きにおいて後々問題となりえます。弁護士への相談をおすすめします。
Q.持ち家です。自己破産すると、すぐに手放さなくてはなりませんか?
A. 多くの場合、すぐに自宅を手放さなければならないわけではありません。
自宅が破産者名義の住宅であれば、その方の財産ですので「破産手続きの中でお金に換えましょう」という基本的な考え方は、他の財産と同じです。
よって原則、お金に換えられたうえで債権者への配当に回ることになります。
住宅ローンなどの抵当権が設定されていない場合は、比較的早い時期に自宅を出ていかなければなりません。
もっとも自宅が「お金に換えにくい住宅」の場合は、結果的に手元に残るケースもあります。
「お金に換えにくい住宅」とは住宅の敷地が別人の名義である場合や、住宅が共有名義の場合などです。
このような住宅は買い手が見つからず、残したまま破産手続きが終了することもあります。
Q.自己破産で持ち家を処分する場合、いつまで住めますか?
A. 自己破産で住宅を処分する場合、いつまで住めるかはケースバイケースです。
手続きにも一定期間を要しますので、破産したからすぐに自宅を出て行かなければならないというわけではありません。
住宅には「処分しやすい住宅」もあれば「処分しにくい住宅」もあります。
処分(売却)しやすい住宅であれば早く処分されるので、早期に退去を求められます。
一方で、処分しにくい住宅であれば処分も遅れ、退去の時期も後ろ倒しとなります。住宅が売却されるまで、任意売却であっても競売であっても数か月はかかります。
いずれにしても自宅の買い手が決まるまで、住み続けることができます。
Q.住宅ローンが残っています。自己破産するとどうなりますか?
A. 住宅ローンを借り入れるなどしていて、自宅に抵抗権が設定されている場合は、自己破産をしても、その財産的価値はすべて住宅ローン会社が押さえているとされ、破産手続きのなかで自宅が処分されない場合もあります。
しかし通常は、自己破産をする人は住宅ローンが支払えません。
連帯債務者や連帯保証人も支払いをしなければ、破産手続きとは別に抵当権者らの申し立てにより、不動産競売手続き(4、5か月~1、2年)によって売却されます。
Q.自宅は親の所有です。処分されますか?
A. 自宅が自己破産する人の所有でない場合(配偶者や親の所有など)、自己破産をしても自宅が失われることはありません。
Q.親と共有名義の家も処分しなければなりませんか?
A. 住宅の共有持分が破産財団となり、換価の対象となります。
自己破産をした場合、換価(お金に換えること)の対象となるのは「破産財団」と呼ばれる破産者の財産です。
住宅の共有持分についても「破産財団」となり、共有持分に限り換価の対象となります。
ただし共有持分だけを買いたい人はめったにいません。なかなか買い手が見つからず、住宅を手元に残したまま破産手続きが終わることもありえます。
Q.自己破産で住宅が処分される方法とは?
A. 自己破産で住宅を処分する方法としては、下記などがあります。
- 債権者らが住宅の不動産競売を申し立て、第三者の落札によって退去を求められる
- 破産管財人が買い主を見つけ、任意売却によって退去を求められる
手続きが簡単でない場合もありますので、このような不安をお持ちの方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
当事務所では借金問題について、無料相談(電話・Web、初回30分)を実施しております。ご来所での相談も、もちろん可能です。お気軽にお問い合わせください。
参考文献:破産実務Q&A 220問/木内道祥[監修]/全国倒産処理ネットワーク[編]
※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。

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