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法律コラム

公開日:2019.05.14 最終更新日:2022.08.25

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万引きで逮捕されたらどうなる?|示談、執行猶予、保釈について解説

目次CONTENTS

万引きは、窃盗罪にあたります。万引きの具体例としては、「コンビニで商品を手に取ったものの、その商品をかばんに隠し、そのまま金銭を支払わずに店を出る」といったケースが挙げられます。

コンビニの商品は「他人の財物」であり、金銭を支払わずに店外に持ち出す行為は「窃取した」ということになります。したがって、万引きをした場合は窃盗罪が成立し、10年以下の懲役または50万円以下の罰金という重い刑罰を受ける可能性があるのです。

刑法235条
他人の財物を窃取したものは、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

万引き(窃盗罪)で逮捕される場合とは|いつ逮捕される?

万引きで逮捕される場合として、どのような場合があるでしょうか。

具体例としては、「スーパーで万引きをした場合、万引きをした被疑者が店の外に出たときに、万引きGメンに声をかけられ、逮捕される」というケースがあります。

現行犯逮捕は、警察官でなくてもできます。

刑事訴訟法213条
現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。

「何人でも」という要件がありますので、一般人でも逮捕できるのです。

また、逮捕する場合には、原則として逮捕状が必要ですが(刑事訴訟法199条1項)現行犯逮捕の場合は逮捕状は不要です。

刑事訴訟法199条1項本文
検察官、検察事務官又は司法警察員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。

以上のとおり、万引きの場合は、犯行直後、その場で逮捕されるというケースが多いでしょう。

Q. 万引きでの逮捕後はどうなる?|身柄拘束される

万引きで逮捕された後はどうなるのでしょうか。

逮捕後は、最大で72時間身柄拘束され、その後、勾留された場合は、最大で20日間身柄拘束されることになります。

身柄拘束が長期に及んだ場合、勤務先から解雇される可能性もありますので、被る不利益は非常に大きいです。逮捕された場合はすみやかに弁護人を選任し、身柄解放に向けて活動してもらいましょう。

弁護人は、検察官に対して勾留請求しないよう求め、仮に勾留請求された場合には、裁判所に対して勾留請求却下を求めます。残念ながら、このような請求は認められにくいのが現状ですから、刑事事件に精通した弁護人を選ぶことをおすすめいたします。

当事務所には、勾留を未然に阻止した実績や勾留の取消しを認めてもらった実績もありますので、お悩みの方はぜひお早めにご相談ください。

Q. 万引きで後日逮捕されることはある?

万引きでの逮捕で、犯行直後ではなく、後日警察が逮捕するケースはあるのでしょうか。

結論からいうと、万引きで後日逮捕されるケースはあります。例えば、以下のようなケースが考えられます。

スーパーの店員が、陳列棚の商品が減少しているのに売り上げが計上されていないことに気づき、監視カメラをチェックしたところ、被疑者が万引きをしていた状況が監視カメラに記録されていた。警察に被害届を出し、警察が捜査をしたところ被疑者が特定できたため逮捕した。

このように、証拠が残っていれば、警察は被害届を受理して捜査をしますので、後日逮捕がされる可能性は十分あるといえるでしょう。

もっとも、証拠の内容や被害額などの事件態様や、逮捕要件をみたすかなど、検討すべき事情は多くあります。

そうであるとしても、万引きは重大な犯罪の一つであり、スーパーを経営している事業者にとっては許せない行為でしょうから、やはり逮捕される可能性は十分あると認識しておくべきでしょう。

Q. 万引きをして現行犯逮捕されたら、すぐ家に帰ることはできる?

「万引きをして現行犯逮捕され、これまでに何度も万引きをしていたケース」で考えてみましょう。

このケースでは、「万引きが発覚したのは今回が初めて」であり、「万引きした商品の金額が小さく被害者が許している」場合は、48時間~72時間以内に家に帰ることができる可能性は高いでしょう。

まずは、逮捕後の流れを見ていきましょう。

1. 逮捕後48時間

被疑者が現行犯逮捕された場合、逮捕された時から48時間以内に検察官に送られます。もっとも、事案によっては、検察官に送られず、釈放される場合があります。例えば、万引きはしたものの、100円の商品を1個万引きした、というケースでは、すぐに釈放される可能性は十分あるでしょう。

2. 逮捕後72時間

被疑者が検察官に送られた場合、検察官は、被疑者を受け取った時から24時間以内に、勾留請求するかどうかを決めます。

検察官が裁判所に勾留請求をしない場合には、その時点で被疑者は釈放されることになります。したがって、この段階であれば、逮捕から72時間以内に被疑者は釈放されます。

3. 勾留(最大20日間)

検察官が裁判所に勾留請求をした場合、裁判官が勾留するかどうかを決めます。

裁判官が被疑者の勾留をしない場合には、その時点で釈放されることになりますが、勾留をする場合には、原則として10日間勾留されることになります。検察官は、裁判所に対し、さらに10日間の勾留の延長を請求することができます。したがって、被疑者は、最大で20日間勾留されることになります。

勾留請求されるのは、被害金額が大きく、過去に何度も万引きをして逮捕されているなど、事案が軽微でないケースが多いと思われます。

そして検察官は、勾留期間が満了する前に、被疑者を起訴するかどうかを決めます。

4. 起訴後勾留(無期限)

被疑者は起訴されると被告人という立場になりますが、被告人は、起訴後にも勾留される場合があり、最初に2か月間勾留され、その後1か月毎に勾留が更新されることが多いです。

もっとも、保釈により勾留が停止され、身柄が解放される場合もあります。保釈が認められるためには保釈保証金が必要ですが、万引きの場合、事案にもよりますが、100万円~200万円程度は必要だと思われます。

5. 判決

被告人が罰金や執行猶予判決を受けた場合には、判決の言渡しによって勾留は失効します。したがって、罰金や執行猶予判決まで勾留されているようなケースでは、この時点でようやく釈放されることになります。逮捕された時点から身柄が解放されるまで、早くても5か月程度はかかるものと思われます。

結論:万引きした金額が小さく被害者も許していれば、早期に釈放される可能性は高い

今回は、万引きが発覚したのは今回が初めてであると思われます。今回の万引きをした商品の金額や、被害者の感情などにもよりますが、おそらく勾留される可能性は低いと思われます。

したがって、「すぐに家に帰ることができるのか」という質問に対しては、「万引きした商品の金額が小さく、被害者が許しているのであれば、48時間~72時間以内に家に帰ることができる可能性は高いでしょう」という回答になります。

ただし、万引きも事案によっては勾留が長引きますので、逮捕されたらお早めに弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

逮捕期間中の面会は弁護士のみ認められていますので、身内の方が逮捕されたらすぐに、弁護士に被疑者との面会を依頼し、事情を把握するべきでしょう。

Q.万引きで逮捕されました。初犯ですが前科はつくのでしょうか?

前科がつくということは、検察官によって起訴され、裁判で有罪となることをいいます。したがって、検察官に起訴されず、裁判とならなければ、前科はつきません

日本の刑事司法においては、起訴の権限を有しているのは検察官です。検察官は、起訴をするのか、しないのかについて裁量権を有しています。罪を犯したからといって、必ず検察官が起訴するとは限りません。

また、軽微な事件の場合には、微罪処分といって、検察官に事件が送られないこともあります。微罪処分の基準については、あらかじめ、検事正が定めています。

初犯の万引きの場合、犯罪の悪質性にもよりますが、基本的には、微罪処分起訴猶予処分となり、検察官から起訴されることはないのではないかと考えられます。したがって、前科はつかないのではないかと思われます。

もっとも、逮捕されたことにより、前歴は残ることになりますので、万が一再度罪を犯した場合には、厳しい処分がなされる可能性があります。

適切な処分がなされるように、まずは弁護士にご相談されることをおすすめいたします。

Q. 万引きで逮捕された場合、不起訴になりますか?

刑事訴訟法では、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。」と定められています(刑事訴訟法248条)。したがって、検察官は、様々な事情を考慮して、起訴、不起訴を決めます。

窃盗罪に限ったものではありませんが、平成29年版犯罪白書によれば、刑法犯の起訴率は38.2%であり、起訴されないことも十分にありえます。

検察官が起訴の判断を行う際の一材料として、被害弁償がなされているか、示談が成立しているのかも考慮要素となります。犯人本人が、被害弁償と謝罪に赴いたとしても、被害者の方に応じていただけないことも少なくなく、このような場合には、弁護士が入ることで、被害弁償や示談に応じていただけることもあります。

また、何度も万引きを繰り返してしまうという場合には、治療が有効な場合も少なくないため、弁護士がその旨を検察官に対して述べることもあります。

弁護士の様々な活動によって、不起訴となる可能性が高まると考えられます。そのため、万引きで逮捕された場合には、まず弁護士に相談していただくのが重要です。

Q.万引きで逮捕された場合、執行猶予はつけられる?

ここでは、「前科がない場合」と「前科がある場合」の執行猶予の要件について見ていきましょう。

1.前科がない場合

前科がない場合の執行猶予の要件は、簡潔にいうと、以下のとおりです。

  1. 3年以下の懲役、禁錮、50万円以下の罰金の判決であること
  2. 情状として執行猶予に付すべきであること

したがって、前科がないのであれば、前科がある場合に比べ、執行猶予が認められやすいと思われます。

2-1.前科がある場合:前刑の執行猶予期間が満了している

前科がある場合、その状況によって、執行猶予の要件が変わってきます。

前刑の執行猶予期間が満了している場合の執行猶予の要件は、前科がない場合と同様です。

  1. 3年以下の懲役、禁錮、50万円以下の罰金の判決であること
  2. 情状として執行猶予に付すべきであること

もっとも、前科があるということで、情状として執行猶予に付すべきという部分の判断が厳しくなされることになると考えられます。

2-2.前科がある場合:前刑の執行猶予期間中

この場合の執行猶予の要件は、以下のとおりです。

  1. 1年以下の懲役、禁錮の判決であること
  2. 情状として執行猶予に付すべき特に酌量すべき事情があること

特に酌量すべき事情が必要となりますので、厳しい要件となっています。

2-3.前科がある場合:前刑により刑事施設に収容され出所した場合

この場合の執行猶予の要件は、以下のとおりです。

  1. 執行を終えてから5年経過していること
  2. 3年以下の懲役、禁錮、50万円以下の罰金の判決であること
  3. 情状として執行猶予に付すべきであること

もっとも、前科があるということで、情状として執行猶予に付すべきという部分の判断が厳しくなされることになると考えられます。

Q. 窃盗事件の被害者と示談するには?

窃盗罪とは、他人の財物を窃取する犯罪ですしたがって、窃盗罪の場合は、財物を盗まれた被害者がいるということになります。

窃盗にあった被害者は、加害者(被疑者)に対し、盗まれた物を返してほしいと望むでしょう。また、コンビニやスーパーで食品を万引きされた場合、盗まれた商品を販売するわけにはいかないので、被害者である店舗としては、被疑者が商品の代金を支払うことを望むでしょう。さらに、被害者は、被疑者からの謝罪を望んだり、二度と店舗に立ち入らないように望んだりするかもしれません。

そして、被害者と示談をするためには、主として以下のような条件が必要になるでしょう。

  1. 被害者に謝罪をする
    まず、被害者に対しては素直に罪を認めて、真摯に謝罪をすべきです。
    身柄拘束されて直接謝罪ができない場合は、謝罪文や反省文を作成して渡すという方法もあります。
  2. 被害の弁償(回復)をする
    盗んだ物を返す、盗んだ物と同程度の金額を支払うなどして、被害の回復を図ります。
  3. 今後被害者と接触しないことを約束する
    被害者は、被疑者と関わりたくないと思うのが通常です。万引きの場合は、店舗に立ち入らないことを約束するなどが考えられます。

上記1~3のような対応は、もちろん被疑者自身でも可能です。しかし、被害者は、「被疑者と関わりたくない」「被疑者と直接やりとりをしたくない」と思われる方も多くいらっしゃいます。

そのような場合は、弁護士に依頼をして、被害者と示談の話をすることになります。そして、弁護士は、被害者に対して、被疑者を許してもらい、厳重な処罰を求めないようお願いするなどして、少しでも刑事処分が軽くなるような示談を目指します。

無事に被害者と示談ができた場合には、弁護士は、警察や検察に対して示談書を提出するとともに、意見書を提出するなどして、不起訴などの処分を求めることになります。

窃盗事件の被害者と示談できない場合はどうなる?

それでは、被害者と示談ができなかった場合、被疑者はどうなってしまうでしょうか。

事案の内容や前科の有無などにもよりますが、示談ができた場合と比較すると、起訴され、前科がつく可能性は高まるでしょう。したがって、できる限り示談ができるよう努力すべきです。

もっとも、示談ができなかった場合に、必ず重い刑事処分を受けるかというとそういうわけではありません。示談ができなくても、示談に向けた努力をしたことを捜査機関に伝えることにより、処分が軽くなる可能性が高まります。

例えば、被害弁償を受け取ってもらえない場合には、法務局に供託をすることになりますし、示談の経緯(弁護士が被害者と連絡をとり、謝罪文を渡したこと、被害弁償や示談の申し出をしたこと等)や示談ができなかった理由を警察や検察に伝えることにより、示談に向けて努力したことを考慮してもらえるよう求めることになります。

Q.窃盗の被害金額の多い・少ないによって起訴・不起訴が決まりますか?

5000円の現金を盗んで、捕まってしまいました。被害金額の多い・少ないによって、起訴・不起訴されるかどうかが違ってくるのでしょうか?

起訴・不起訴については、検察官が判断することとなります(刑事訴訟法247条)

そして、検察官が、起訴・不起訴の判断を行う際には、「 犯人の性格年齢及び境遇犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況 」を考慮することとなっています(刑事訴訟法248条)

窃盗罪は「財産に対する罪」ですので、被害金額の大きさは当然犯罪の軽重に影響することとなりますので、検察官の判断に影響を及ぼすこととなります。

もっとも、被害金額だけの問題ではなく、どのように犯罪行為を行ったのか、常習性はあるのか、前科・前歴はあるのか、被害弁償はしているのか等の事情も、検察官の判断に影響を及ぼすことになります。

Q. 防犯カメラに映った万引き行為…映像だけで逮捕される?

万引きをして自宅に帰ってきたのですが、お店の至るところに防犯カメラがあり、おそらく万引きをしているところが映っていると思います。万引きが防犯カメラに映っているだけで、逮捕されることはあるのでしょうか。

A. 万引きが防犯カメラに写っているだけで、逮捕される可能性があります

逮捕の種類には、通常逮捕、現行犯逮捕、緊急逮捕があります。上記の事例では、通常逮捕という方法ができるのかという点で検討します。

通常逮捕の場合、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由(逮捕の理由)と、逮捕の必要性が認められる必要があります。

防犯カメラ映像は、逮捕の理由を判断する資料のひとつとなります。防犯カメラ映像、その他の資料から、逮捕の理由があると判断されれば、逮捕が認められることとなります。そのため、万引きが防犯カメラに写っているだけで逮捕される可能性はあり得ます。

Q.執行猶予中に万引きをして再度逮捕されたらどうなる?

「万引き(窃盗)で執行猶予判決が下され、執行猶予期間中に再度万引きをしてしまった」という場合はどうなるのでしょうか。主としてどのような可能性があるのか、具体的にみていきましょう。

まず、執行猶予とは、有罪判決に基づいて宣告された刑について、情状によってその執行を一定期間猶予し、その言渡しを取り消されることなく執行猶予期間が満了した場合には、刑罰権を消滅させる制度をいいます。例えば、懲役1年、執行猶予3年という判決の場合、裁判が確定した日から3年が経過すれば、刑罰権が消滅することになります(刑法第27条)

ここで、執行猶予の要件について見ておきましょう。

  1. 前に禁固以上の刑に処せられたことがない者か、前に禁固以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁固以上の刑に処せられたことがない者
  2. 3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたこと
  3. 情状

上記の1~3を充たした場合には、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができます(刑法第25条第1項)。これは、初めて執行猶予が付される場合についての要件です。

では、執行猶予期間内に、再度罪を犯してしまった場合はどうなるのでしょうか。この場合でも、執行猶予が付される可能性があります(刑法第25条第2項)。

執行猶予中の再犯の場合の、執行猶予の要件は以下のとおりです。下記の1~4を充たした場合には、再度、執行が猶予される可能性があります。

  1. 前に禁固以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者であること
  2. 1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けたこと、
  3. 情状に特に酌量すべきものがあること
  4. 保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者ではないこと

したがって、質問の例では、再度犯した万引きについて懲役1年の判決を宣告され、情状に特に酌量すべきものがあれば、再度執行猶予が付与される可能性があります。

Q.執行猶予中の万引きの再犯で、執行猶予は取り消される?

万引きで執行猶予中に、再度万引き(再犯)をしてしまったら、どうなるでしょうか。

執行猶予期間内に再度罪を犯してしまった場合、執行猶予が取り消されるケースもあります。

執行猶予の取消しには、必要的取消し裁量的取消しがあります。

1.必要的取消し

執行猶予の期間内に更に罪を犯して禁固以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないときには、執行猶予は必要的に取り消されます(刑法第26条第1号)

したがって、ご質問の場合、再度犯した万引きについて、懲役2年の判決を宣告された場合(執行猶予の言渡しがない場合)には、執行猶予が必要的に取り消されることになります。

2.裁量的取消し

執行猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたときには、裁判所は、刑の全部の執行猶予を取り消すことができるとされています(刑法第26条の2第1号)

したがって、ご質問の場合、再度犯した万引きについて、罰金刑を宣告された場合には、裁判所の裁量で執行猶予が取り消される可能性があります。

このように、執行猶予期間中に再度罪を犯した場合でも、様々な結論が予想されますが、上記は予想される結論のうち、主なものに限定して説明しています。さらに詳しく知りたいという方は、一度弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

Q. 万引き(窃盗罪)での保釈は可能?

万引き(窃盗罪)での保釈については、事案にもよりますが、可能です。今回は、以下のような万引きの事例で、保釈が可能かについて検討します。

事例
妻と子がいる会社員であるAさんが、スーパーで食料品等10点(3000円相当)を万引きしました。子どもはまだ幼く、妻はパートをしていますが、生活のためにはAさんの収入が必要不可欠な状況です。Aさんは以前にも万引きをして逮捕されたことがありました。Aさんは後日起訴されました。なお、万引きは窃盗罪であり、法定刑は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

まず、保釈とはどのような手続でしょうか。

刑事訴訟法第88条第1項
勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができる

刑事訴訟法第88条第1項で「被告人」と規定されているとおり、保釈は起訴後にしか認められません。起訴後に勾留され、身柄を拘束されている被告人は、保釈が認められれば勾留の執行が停止され、身柄が解放されることになります。

では、どのような場合に保釈が認められるのでしょうか。

保釈の類型として、必要的保釈(刑事訴訟法第89条)職権保釈(刑事訴訟法第90条)があります。

1.必要的保釈

必要的保釈とは、保釈の請求がなされた場合に、刑事訴訟法第89条に定める事由に該当しなければ、必ず認められるものです。

刑事訴訟法第89条(必要的保釈)

保釈の請求があったときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
1 被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
2 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
3 被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
4 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
5 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏い怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
6 被告人の氏名又は住居が分からないとき。

それでは、本件において、必要的保釈が認められるでしょうか。

本件は窃盗罪であり、法定刑が「10年以下の懲役」と定められています。これは、刑事訴訟法第89条第1項の、「被告人が」「短期1年以上の懲役」「に当たる罪を犯したものであるとき」に該当しますので、必要的保釈は認められないということになります。

2.職権保釈

もっとも、必要的保釈が認められない場合であっても、裁判所は職権で保釈を許すことができます(職権保釈)。

職権保釈については、刑事訴訟法第90条に以下のとおり規定されています。

刑事訴訟法第90条(職権保釈)

裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。

それでは、本件において職権保釈が認められるでしょうか。

弁護人としては、妻と幼い子どもを捨てて逃亡する可能性は低いこと、被疑事実の内容から、罪証隠滅の可能性は低いこと、身体拘束が長期化することでAさんが職を失い、家族の生活も苦しくなる可能性が高いこと、などを主張することになるでしょう。

本件においては、保釈が認められる可能性は十分あると思われます。

Q. 万引き(窃盗罪)の保釈金の金額は?

上記のような万引き(窃盗罪)の事案で、保釈が認められる場合、保証金はいくらになるのでしょうか。

保釈は保証金を納めなければ許されませんので(刑事訴訟法94条)、Aさんが保証金を納めることができるか、その金額が問題になります。

保証金額は、犯罪の性質および情状証拠の証明力ならびに被告人の性格および資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な額でなければならないとされています(刑事訴訟法第93条第2項)

一般的な万引きの事案であれば、保証金は150万円程度が相場といわれています。もっとも、被告人の資力が高い場合や、事案が悪質であり、実刑判決が予想されて逃亡のおそれが高い場合などは、高額になるケースもあると思われます。

仮に、被告人が逃亡したなど、刑事訴訟法第96条第1項の事由が生じた場合には、保釈が取り消される可能性があります。その場合、保証金の全部または一部が没収される可能性があります(刑事訴訟法第96条第2項)。

刑事訴訟法第96条(保釈、勾留の執行停止の取消)

裁判所は、左の各号の一にあたる場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定を以て保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる。
1号 被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。
2号 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
3号 被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
4号 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。
5号 被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。

2 保釈を取り消す場合には、裁判所は、決定で保証金の全部又は一部を没取することができる。

3 保釈された者が、刑の言渡を受けその判決が確定した後、執行のため呼出を受け正当な理由がなく出頭しないとき、又は逃亡したときは、検察官の請求により、決定で保証金の全部又は一部を没取しなければならない。

 

※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。