公開日:2022.10.17
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飲食店の破産|注意点|費用が捻出できない場合は|弁護士が解説
【本記事の監修】 弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋 (代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。
目次CONTENTS
新型コロナウイルスや物価高などの影響で、経営が苦しいという飲食店も多いでしょう。飲食店が破産する場合の注意点や流れについて、企業法務に精通する福岡・佐賀の弁護士法人 桑原法律事務所の弁護士が解説します。
飲食店は「個人の破産」の場合も|法人の破産とは
飲食店は、法人ではなく個人事業主であるケースも多いかと思います。その場合の破産手続きは、法人破産ではなく個人の破産となります。
法人破産とは、借金が返せなくなったり債務超過になったりしている会社について、会社の負債と資産を清算する裁判手続きです。裁判所によって選ばれた破産管財人が財産を換価(財産を処分してお金に換えること)し、債権者に配当するなどして会社を清算します。
飲食店の破産:注意点とは
債務の取扱いについて
飲食店が破産手続きをするにあたっては、すべての債務を裁判所に届け出なければなりません。飲食店を営む事業者が注意すべき「債務」には、下記などがあります。
それぞれの債務について対応すべきことがありますが、基本的には申立代理人の弁護士や、破産管財人が対応することが多いかと思います。ご自身の判断で対応することはせず、まずは弁護士に相談するようにしましょう。
債務の種類
1:買掛金
飲食店を営業するために食材や酒類などを仕入れますが、月ごとの支払いにしているケースも多いと思われます。
まだ支払っていない代金は「債務」となります。
2:リース代金
飲食店では、大型の調理器具や空調設備などを、リース契約で使用しているケースもあるでしょう。破産する際に、リース契約を解除して返却する場合、リース業者との調整が必要です。
途中解約をして残りのリース代の支払いを求められると、これも「債務」となりえます。まずは契約書を確認する必要があります。
3:従業員の給与
従業員を雇っており、未払いの給与がある場合も、債務となります。
4:賃貸物件の賃料など
店舗が賃貸物件(テナント)の場合は、速やかに解約する旨を通知します。
解約に伴って発生する費用についても、賃貸借契約書を確認しなければなりません。
テナント退去時には原状回復作業を行う必要がありますが、「居抜き」で賃貸借契約を引き継いでくれる賃貸人が現れれば、原状回復費用を抑えられる可能性もあります。
支払いだけではなく、敷金や保証金などは解約時に戻ってくるケースがありますので、確認しておく必要があります。
「債務」について正しく認識しましょう
債務について正確に認識しないまま破産申立てをしてしまうと、債権者が破産手続きに参加できないまま手続きが進んでしまいます。
特に個人飲食店が破産する場合は、債権者が漏れてしまった結果、当該債権者から請求を受ける、債務が免責されないなどのリスクもありますので、注意が必要です。
また、「債務」との認識がないまま、一部の債権者だけに買掛金などを支払ってしまうと、「偏頗(へんぱ)弁済」とみなされます。債権者平等の原則を破ることになり、破産管財人から否認されて弁済額を回収されてしまう可能性があります。
飲食店が破産手続きをとる際には、注意すべき点が多々あり、破産手続きに向けて計画を立てて、準備をしていく必要があります。
什器備品や食材等の処分について
キッチンの器具や家具などの什器備品を、リースではなく法人(事業主)が所有しており、仮にこれを申立て前に処分する場合は、売却代金や処分費用について客観的な査定を行ったうえで、適正な価格で売却することが必要です。
同業者などに適正な価格よりも大幅に安い価格で譲渡するなどといった処分をしてはいけません。
食料在庫についても同様に、売却代金や処分費用に関する査定が必要です。また、消費期限等が迫っているものは速やかに適正額で売却する、電気契約を継続して冷蔵庫に保管したうえで管財人に引き継ぐ、といった対応も検討する必要があります。
法人破産の費用とは
法人破産をする際には、下記のような費用がかかります。
弁護士費用(当事務所の場合)
当事務所は、法人破産に関する無料相談(初回30分)を承っております。
法人破産の着手金は、55万円からとなっています。報酬金は、原則としていただきません。
予納金
予納金とは、裁判所に納める費用です。
法人の破産申立ての場合、裁判所に一定のお金を納める必要がございます。
額はケースバイケースですが、福岡地方裁判所の場合、少なくとも20万円~となっております。
手数料
印紙代、官報公告予納金、郵送料などがかかります。
破産の費用が捻出できない場合は
弁護士費用や予納金などをあわせると、法人破産には少なくとも70万円以上が必要になります。
費用が捻出できない場合は、下記のような方法が考えられます。
引継予納金の分納
裁判所によっては、予納金の分納ができる場合があります。
ただし、分納できる回数など、各裁判所の運用によって異なりますので、裁判所や弁護士に相談しましょう。
弁護士依頼後に破産費用を捻出する
破産手続きの依頼を受けた弁護士は、各債権者に対して速やかに「受任通知」という書面を送ります。受任通知を受け取った債権者は、弁護士介入後は債務者に直接請求できないことになっているため、督促(取り立て)が止まります。
督促が止まるだけでなく、返済を続ける必要もなくなりますので、返済に使っていたお金を予納金の積立てなどに充てることができるようになります。
売掛金の回収
売掛金などの債権があり、回収ができれば、破産費用に回せる可能性があります。
資産の売却
資産を売却することにより、破産費用を捻出する方法も考えられます。
ただし前述のとおり、資産の売却にあたっては査定を行い、適正な価格で売却する必要があります。自己判断するのではなく、弁護士に依頼したうえで、適切に売却手続きを進めることをおすすめします。
飲食店の破産については弁護士にご相談を
経営が立ち行かなくなった時は、まずはお早めに弁護士にご相談ください。今後の見通しを立てながら、スムーズに破産手続きを進められるように一緒に準備をしていきましょう。
また、破産を選択すべきか、再建の道を選ぶべきかは、会社の状況に応じて適切に判断する必要があります。 弁護士は債務整理の専門家として、会社の状況を整理した上で、最適な方法をご提案いたします。
当事務所は、会社(法人)の破産手続きについて、無料相談(初回30分)を承っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。