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法律コラム

公開日:2022.10.24

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不正競争防止法とは|違反の事例|注意点|弁護士が解説

目次CONTENTS

回転すしチェーン「かっぱ寿司」運営会社の社長(当時)が、「ライバル大手の仕入れ情報を持ち出した」などとして、不正競争防止法違反の疑いで逮捕されたと報道されました。不正競争防止法の概要と事例について、企業法務に精通する福岡・佐賀の弁護士法人 桑原法律事務所の弁護士が解説します。

不正競争防止法とは

 

不正競争防止法とは、企業間の不適切な競争を防ぐための法律です。

他人の商標などを使って混同させる行為や、不正な手段で取得した営業秘密を利用する行為などを禁じています。

営業の秘密が記された記録媒体を持ち出したり、コピーを作成したりした場合、10年以下の懲役または2千万円以下の罰金が科されます。

「不正競争」とは、内容によって下記の10類型に分類されています。

 

① 周知表示混同惹起行為

他人の商品・営業の表示(商品等表示)として広く認識されているものと同一または類似の表示を使用し、混同を生じさせる行為を指します。

「商品等表示」には、人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器・包装、その他の商品または営業を表示するものが対象となります。

 

② 著名表示冒用行為

他人の商品や営業の表示(商品等表示)として著名なものを、自己の商品・営業の表示として使用する行為を指します。

①のような混同を生じさせる行為ではないものの、顧客吸引力の不当な利用(フリーライド、タダ乗り)、ブランドイメージの稀釈化(ダイリューション)、ブランドイメージの汚染(ポリュージョン)などの悪影響を与えるような行為を指します。

 

③ 形態模倣商品の提供行為

他人の商品の形態を模倣した商品(デッドコピー)を譲渡などする行為を指します。

 

  • 「商品の形態」とは
    「需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識できる、商品の外部及び内部の形状並びに形状に結合した模様、色彩、光沢及び質感」をいい、外観上認識できるか否かがポイントとなります。なお、ありふれた形態である場合は、該当しません。

 

  • 「模倣」とは
    「他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すこと」をいいます。独自に創作した場合は該当しません。

 

④ 営業秘密の侵害

窃取等の不正な手段によって営業秘密を取得し、自ら使用する、もしくは第三者に開示する行為などを指します。

冒頭の「かっぱ寿司」前社長の行為は、この類型などに該当するとみられています。

なお、「営業秘密」として法律の保護を受けるためには、以下の3要件を満たす必要があります。

 

  1. 秘密として管理されている=秘密管理性
  2. 事業活動に有用な技術上または営業上の情報=有用性
  3. 公然と知られていないもの=非公知性

 

⑤ 限定提供データの不正取得等

窃取等の不正な手段によって限定提供データを取得し、自ら使用する、もしくは第三者に開示する行為などを指します。

「限定提供データ」とは、企業間で複数者に提供や共有されることで、新しい事業の創出につながるなど、その利活用が期待されているデータをいいます。

なお、「限定提供データ」として法律の保護を受けるためには、以下の3要件を満たす必要があります。

 

  1. 業として特定の者に提供する=限定提供性
  2. 電磁的方法により相当量蓄積されている=相当蓄積性
  3. 電磁的方法により管理されている=電磁的管理性

 

⑥ 技術的制限手段無効化装置等の提供行為

技術的制限手段により制限されているコンテンツの視聴やプログラムの実行などを可能とする(技術的制限手段の効果を無効化する)装置、プログラム、指令符号(シリアルコードなど)、役務を提供するなどの行為を指します。

「技術的制限手段」とは、音楽、映像、ゲーム等のデジタルコンテンツについて、無断複製や無断視聴などを防止するための技術的手段をいいます。

コピーガードやアクセスコントロールなどのプロテクトを破る行為は、これに該当します。

⑦ ドメイン名の不正取得等の行為

図利加害目的(不正の利益を得る目的または他人に損害を加える目的)で、他人の商品・役務の表示(特定商品等表示)と同一・類似のドメイン名を使用する権利を取得・保有、または使用する行為を指します。

「特定商品等表示」とは、人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、その他の商品または役務を表示するものをいいます。

 

⑧ 誤認惹起行為

商品・役務またはその広告等に、原産地、品質・質、内容等について誤認させる表示をする行為、またはその表示をした商品を譲渡するなどの行為を指します。

 

⑨ 信用毀損行為

競争関係にある他人の、営業上の信用を害する虚偽の事実を告知または流布する行為を指します。

 

⑩ 代理人等の商標冒用行為

パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者の代理人が、正当な理由なく、その商標を使用などする行為を指します。

 

不正競争防止法の罰則とは

不正競争防止法には、民事措置と刑事措置(刑事罰)が規定されています。

 

民事措置と刑事措置の両方が定められている行為

  • ①周知表示混同惹起行為
  • ②著名表示冒用行為
  • ③形態模倣商品の提供行為
  • ④営業秘密の侵害
  • ⑥技術的制限手段無効化装置等の提供行為
  • ⑧誤認惹起行為

 

民事措置のみ定められている行為

  • ⑤限定提供データの不正取得等
  • ⑦ドメイン名の不正取得等の行為
  • ⑨信用毀損行為
  • ⑩代理人等の商標冒用行為

 

刑事罰は、以下のとおり規定されています。

  • 営業秘密侵害罪:10年以下の懲役または2000万円以下の罰金(海外使用等は3000万円以下)
  • その他:5年以下の懲役または500万円以下の罰金

 

なお、法人の役員や従業員が、業務等に関連して違反行為をした場合は、行為者だけでなく法人も罰せられる可能性があります(両罰規定)。

  • 営業秘密侵害罪の一部について:5億円以下の罰金(海外使用等は10億円以下)
  • その他:3億円以下の罰金

 

不正競争防止法違反の事例とは

経産省の「不正競争防止法テキスト」には、下記のような不正競争防止法違反の事例が紹介されています。

 

  • ①周知表示混同惹起行為の事例
    カフェチェーン大手の「珈琲所コメダ珈琲店」と類似した店舗外観の同業者に対して、店舗外観の使用禁止を認めた事例(東京地判平28.12.19)。

 

  • ②著名表示冒用行為の事例

三菱の名称および標章(スリーダイヤのマーク)は、三菱グループおよびグループに属する企業を表す表示として著名であるとして、名称や標章を使用していた会社に対し、差し止めた各事例(三菱信販事件[知財高判平22.7.28]、三菱ホーム事件[東京地判平14.7.18]、三菱クオンタムファンド事件[東京地判平14.4.25])

 

  • ④営業秘密の侵害の事例

通信教育業を営む「ベネッセ」でシステム開発に従事していた派遣労働者が、約3000万件の顧客データを私物のスマートフォンなどに複製して持ち出し、このうち約1000万件を名簿会社などに開示したとして罪に問われ、懲役2年6月、罰金300万円に処された事件(ベネッセ事件[東京高判平29.3.21])

  • ⑥技術的制限手段無効化装置等の提供行為の事例

マイクロソフト社の「Office」のライセンス認証システムによる認証を回避し、製品を実行可能にするクラックプログラムを販売した者に対し、損害賠償を命じた事例

 

  • ⑦ドメイン名の不正取得等の行為の事例

「電通」と類似する「dentsu」を含むドメイン名を取得・保有し、電通に対し10億円以上で買い受けるよう通告してきた者に対し、ドメイン名の取得・保有および使用の差し止めと登録抹消申請手続き、損害賠償50万円を命じた事例(dentsuドメイン名事件)

 

  • ⑧誤認惹起行為の事例

富山県氷見市内で製造されず、原材料も氷見市内で産出されていないうどんに「氷見うどん」等と表示して販売する行為は、原産地の誤認にあたるとして、2億4000万円の損害賠償を命じた事例(氷見うどん事件)

 

不正競争防止法については弁護士にご相談ください

 

不正競争防止法に抵触する行為をしてしまうと、たとえ知らなかったとしても、民事上の損害賠償リスクや刑事罰を受けるリスクがあります。

そのため、どのような行為が違反となるのか、しっかりと理解したうえで事業活動を行うことが大切です。

ひとたびトラブルが発生すると、時間的・金銭的な負担が増大するだけでなく、企業イメージが低下してしまうおそれもあります。

ご不安な点があれば、まずは弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

当事務所では、個別の法律相談はもちろん、顧問弁護士として包括的なアドバイスを行うことで、将来発生する可能性のある法的リスクを未然に回避するためのサポートもいたします。

 

みなさまに安心して事業に専念いただけるよう、全力でサポートいたしますので、まずはお気軽にご相談ください。

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※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。