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法律コラム

公開日:2023.02.20

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共有制度見直し | 所有不明土地の解消へ | 民法改正 | 弁護士が解説

目次CONTENTS

2021年の改正民法が2023年4月に施行され、土地など財産の共有についての決まりが大きく見直されます。いままでは共有財産の利用について、共有者全員の同意が必要でしたが、不要になります。主な変更点について福岡・佐賀の弁護士法人 桑原法律事務所の弁護士が解説します。

所有者不明土地の解消が目的

「所有者不明土地」とは、下記などのようなケースをさします。

  • 登記簿など所有者が分かる台帳が更新されていない
  • 複数の台帳で記載されている内容が異なるので、だれが所有者なのかすぐに特定できない
  • 所有者が特定できても連絡がつかない
  • 登記名義人は亡くなっていて、相続人が多数
  • 所有者が分かる台帳に、共有者すべてが記載されていない

所有が分からなくなっている背景には、相続登記の申請が義務ではなく、申請しなくても当面、問題は少ないからです。

管理されていない土地に廃屋が立ったままになっていたり、草木が生い茂ったままになったりしていても、勝手に立ち入り、対処することもできません。

土地の共有者の中に所在不明の方がいると対応が難しく、問題を解決しようと、民法などが改正されました。

 

見直し①軽微な変更の同意:全員→過半数に

従前は共有物の増改築など行う場合に、共有者全員の同意が必要でした。

この点について、形状または効用の著しい変更を伴わない変更(軽微変更)については、持ち分の過半数で決定できるようになりました。例えば、砂利道のアスファルト舗装や、建物の外壁・屋上防水等の大規模修繕工事は、基本的に共有物の形状又は効用の著しい変更を伴わないものに当たると考えられています。

また、以下のような短期の賃借権(カッコ内の期間)などの設定も、持ち分の過半数でできるようになりました。ただし、建物の賃借権は、借地借家法の適用を受ける場合がありますので、注意が必要です。

  1. 樹木の植栽・伐採のための山林の賃借権など(10年)
  2. 1.に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権など(5年)
  3. 建物の賃借権など(3年)
  4. 動産の賃借権など(6か月)

 

見直し②共有物を使用する共有者

これまでは、共有物を使っている共有者(Aとします)がいると、Aの同意がなくても、持ち分の過半数で共有物の管理に関する事項が決められるかは明確でありませんでした。

このためA以外の共有者が、共有物を使うことは現実的には難しい状況でした。

改正法ではこの点などを見直し、Aがいても、持ち分の過半数で管理についての決まりを決めることができるようになりました。

見直し③賛否が分からない共有者がいる場合

共有物の管理に関心を持たない共有者がいる場合には、共有物の管理が困難になります。

改正法では裁判所の決定を得て、その共有者以外の共有者の持ち分の過半数によって、管理事項を決定できるようになりました。

ただし、変更する行為や抵当権の設定などには、利用ができません。

 

見直し④所在等不明所有者がいる場合の変更・管理

従前は、所在等不明共有者(必要な調査をしても氏名や所在などが分からない共有者。Bとします)がいる場合、Bの同意が得られないため、共有物の変更について必要な共有者全員の同意を得ることができませんでした。

管理についても、B以外の共有者の持ち分が過半数に満たない場合などでは、決定ができませんでした。

改正法ではBがいる場合、裁判所の手続きにより、以下の対処ができるようになりました。

  • B以外のすべての共有者の同意により、共有物に変更を加える
  •  B以外の共有者の持ち分の過半数があれば、管理に関する事項を決定する

Bの持ち分が、B以外の共有者の持ち分を超えていたり、複数の共有者の所在などが分からなかったりする場合でも、利用できます。

ただし抵当権の設定などについては、利用ができません。

 

見直し⑤共有物の管理者:共有規定・遺産共有持ち分

従前は、管理者についてはっきりした決まりはなく、選任の要件や権限の内容が判然としていませんでした。共有物に管理者を選任し、管理を委ねることができれば便利です。

改正法では、管理者の選任や解任は、共有物を管理するルールに沿って、共有者の持ち分の過半数で決定できるようになりました。

さらに、共有者以外を管理者とすることも可能です。

また従前は共有に関する規定は、持ち分の割合に応じたルールを定めていましたが、相続により発生した遺産共有では、①法定相続分・指定相続分と、②具体的相続分のいずれが基準となるのか不明確でした。

改正法では、遺産共有状態にある共有物に共有に関する規定を適用するときは、法定相続分

(相続分の指定があるケースは、指定相続分)により算定した持ち分を基準とすることを明記しています。

見直し⑥裁判による共有物分割

従前は、裁判による方法として現物分割と競売分割を定めていました。裁判所はまず現物分割の可否について検討した上で、現物分割が難しい場合には競売分割が選択可能でした。

判例では、共有物を共有者のうちの一人の単独所有または数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持ち分の価格を金銭で支払わせる「賠償分割」(全面的価格賠償)をすることも許容されています。

ただし民法では賠償分割についての明文の規定がありませんでした。

改正法では賠償分割に関する規律を整備しています。

  • 裁判による賠償分割を明確化しました。
  • 現物分割、賠償分割のどちらもできないケース、または分割によって共有物の価格を著しく減少させるおそれがあるケースに、競売分割を行うこととして、検討する順序を明確にしました。
  • 裁判所は共有物分割についての裁判において、当事者に対して、金銭の支払いや物の引き渡しなどを命ずることができることを明文化しました。

見直し⑦所在等不明共有者の不動産の持ち分の所得

従来は共有者が所在不明の場合、判決による手続きは可能ですが、すべての共有者を当事者として訴えを提起しなければならないなど、手続き上、少なくない負担がありました。

改正法では共有者は、裁判所の決定を得て、所在や氏名が分からない共有者の不動産の持ち分を取得することができるようになりました。

 

見直し⑧所在等不明共有者の不動産の持ち分の譲渡

従前では調査しても氏名や所在などが不明な共有者(所在等不明共有者)がいると、不動産全体を売却することは不可能でした。

改正法では、裁判所によって、申し立てをした共有者に、所在等不明共有者の不動産の持ち分を譲渡できる権限を与える制度ができました。

所在等不明共有者以外、すべての共有者が持ち分すべてを譲渡することを条件とし、不動産すべてを第三者に譲渡する場合でのみ行使できます。すなわち一部の共有者が持ち分の譲渡を拒む場合には、条件が成立せず、譲渡できません。

 

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※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。