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COLUMN

弁護士のコラム

公開日:2017.03.25

2つの最高裁判決|預貯金債権は遺産分割審判の対象|相続税対策のための養子縁組は有効

桑原ブログ , 判例について

昨年末と今年初めに、相続分野で2つの画期的な最高裁判決(決定)が出されました。

1つ目は、預貯金債権が遺産分割審判の対象となる、という最高裁平成28年12月19日決定です。

常識的に、預貯金は遺産なのですが、長い間全国の裁判所において、預貯金が遺産分割審判の対象となることが否定されてきました。預貯金債権は、預貯金を金融機関に対して払戻請求できる権利であり、それは可分債権である(民法427条)から、相続発生と同時に法定相続分に従って、各相続人に帰属すると考えていました。

例えば、1000万円の預貯金を残して被相続人が亡くなられ、妻と子2人が相続したとしますと、妻が500万円、子がそれぞれ250万円ずつの預貯金を取得すると考えていたのです(遺言書があれば別)。かかる考え方は、金融機関に煩雑な事務処理を強いてしまうとか、預貯金しかめぼしい遺産がない相続案件において、特別受益や寄与分があっても考慮されないなど、大いに問題のある法解釈でした。

今回、最高裁判所は、不可分的要素のある預貯金債権は、相続発生と同時に法定相続人に自動的に帰属することなく、遺産分割協議(調停、審判)によってはじめて各相続人に帰属する、と判断しました。
預貯金債権以外の金銭債権については、従前どおり可分債権として遺産分割審判の対象とはならない、との考え方が最高裁判所の多数意見で示された訳ですが、今までもめたら全く融通の効かなかった遺産分割手続きが、今後は預貯金債権の分配をめぐっても争う余地が出てきたわけです。

2つ目は、相続税対策のための養子縁組であっても、当該養子縁組は有効であるとの最高裁平成29年1月31日判決です。

第2審が、節税のための養子縁組であって、民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がない」に当たるとして、養子縁組が無効であると判断していたのを、最高裁は、「相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るものである。」と判示した上で、「専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう『当事者間に縁組をする意思がないとき』に当たるとすることはできない。」と判断しました。

 

相続対策は法務・税務両面で複雑な知識が要求される分野ですので、しっかりと専門家に頼んで、争いのない経済的な相続対策を、しっかりと行ってまいりましょう。

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