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COLUMN

弁護士のコラム

公開日:2021.11.01

保険金請求手続代行サービスの犯罪性(NHK党と弁護士法72条)

桑原ブログ

2021年10月末、弁護士資格がないのに火災保険金を請求する法律事務をしたとして、警視庁が弁護士法違反の疑いで、リフォーム会社社長や投資用不動産会社社長を逮捕しました。報道によりますと、不動産会社が自社のマンション購入者らに持ちかけて、2億円の保険金が支払われ、報酬として半額の1億円が支払われたとのことです。

逮捕容疑自体は、共謀して2019年1月、報酬を得る目的で埼玉県や東京都の集合住宅の保険契約者2人から依頼を受け、弁護士資格がないのに、2018年の台風24号で被害を受けたとして火災保険の支払い請求書を作成するなどの法律事務をした疑いとのことです。推測ですが、逮捕された2件は全体の多数ある犯行の一部であり、余罪も含めて合計2億円が支払われた可能性があります。

素人感覚では、保険金の半分の1億円もの莫大な報酬をもらっている時点で、取り過ぎ、悪質ということで、逮捕も当然だとなるのかもしれませんが、法律の専門家の立場で言えば、警視庁はよくチャレンジしたなと思います。

弁護士法72条は、要約しますと、「①弁護士でない者は、②報酬を得る目的で、③訴訟などの法律事件に関して④法律事務を取り扱うことを⑤業とすることができない。」と規定しています。

世の中のコンサルタント的な業務も、一種の「④法律事務」ではありますので、あらゆるコンサルタント的な業務が犯罪になりそうなのですが、弁護士法72条は「③法律事件に関する」「④法律事務」という限定を付しています。

訴訟など裁判所での攻防が将来的に予想されるような紛争に関する法律事務、と狭く解釈しますと、保険会社に対する火災保険金請求自体は、未だ「紛争」にいたっていない「法律事務」と解釈する余地もある訳です。その場合、弁護士法72条違反とはならない(不当逮捕の)可能性がでてきます。

報道が簡易なものですので、当該事案では、「紛争」性が出てきた後も代行的業務を遂行し続けた、ということなのかもしれませんが、そうではなく「火災保険金請求」という法律事務の代行だけで逮捕したのであれば、警察庁が新判例を狙って、本件のような事案に対処したという評価ができるのかもしれません。今後の事件の展開に注目したいところです。

「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」という党名を冠する政党の立候補により、にわかに弁護士法72条がクローズアップしたタイミングでの逮捕劇。同種の悪質な請求代行サービス事業者に対する、警鐘を鳴らす意味合いもありそうです。

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