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COLUMN

弁護士のコラム

公開日:2023.02.28

ネットの「拾い物」、ご用心

桑原ブログ

事件や事故の多い年明けでした。高齢者を狙った強盗事件では、闇バイトに誘われる若者の姿が浮き彫りになりました。博多駅前ではストーカー殺人事件が起きています。大きな事件や事故に巻き込まれてしまうと取り返しがつきません。いつ被害に遭うか分からないという意識で、トラブル予防の対策を考え、実践しなければならないと改めて考えさせられます。

企業間取引では、将来のトラブル回避やトラブル発生時のリスク回避のため、契約内容を書面化する訳ですが、ネット社会では「●●契約書 書式」などと検索するといくらでもその手の契約書式例がヒットします。そして、ネット書式を自分なりに若干アレンジした上で、契約書が作成されることも多いものです。

しかしながら、この手の契約書を作ってその後トラブルが発生してしまうと、紛争はますますエスカレートしがちです。契約書の記載内容が不明確なことも多く、裁判でも契約書の解釈をめぐってどちらが勝つかは分からないとなりがちですし、自分で作った書式が仇となって負けてしまうというといったことも起こります。

先日も、いわゆる業務委託契約をめぐる紛争案件があり、当方が委託者側だったのですが、受託者が自分に相当有利な内容の書式を用意して契約を締結していました。なぜか受託者が委託者に報酬●●円を支払うという記載があり、民法の「委任契約」の基本的考え方からするとあり得ない契約となっていました。民法の委任契約においては、何らかの事務処理を委任するのは委任者側なので、委任者側が事務処理をしてくれる受任者に対して報酬を支払わなければならないのですが、それが逆になっている訳です。

実態として、第三者である顧客との関係でお金を扱うのは受託者側でした。顧客売上を扱う受託者が、売上のうち一定額を報酬としてプールした上で、残った売上を「委託者に交付」するという内容だったのですが、この「委託者に交付」されているのは、本来委託者に帰属すべき売上という「預かり金」であって、決して「報酬」ではありません。

書式を用意した受託者はネットから「業務委託契約書」の書式を拾って、それを素人なりにアレンジして委託者に提案し、両者間で契約書が取り交わされていたのですが、契約書の記載内容にそのほかにも不備が多すぎる中、当方は委託者側で預け金返還請求等の訴訟を提起して、契約書の不備を徹底追及する中で、被告側が白旗を上げて、相当額の回収に成功しました。

契約書式を素人判断で、ネットから拾ってきてしまった結果、まさに自らが用意した書式が仇となって負けてしまった一例ですね。
「生兵法は大怪我の元」。きちんと、専門家を活用しましょう。

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