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COLUMN

弁護士のコラム

公開日:2023.09.26

ジャニーズ問題と企業のコンプライアンスとメディアの責任

桑原ブログ

先日、法曹(裁判官・検察官・弁護士のこと)25周年記念大会に参加してきました。同期のメンバーの見た目は多少変わっても、中身や思考法は皆さん変わっていませんでした。近況報告として、仕事やプライベート面で変わらない方もいれば、大きく飛躍された方もおり、同期の活躍を糧に私自身も刺激を受けました。

さて、先月のビッグモーター事件に続き、今回は8月29日に調査報告書 も公表されたジャニーズの性被害問題にフォーカスしたいと思います。
長年、被害を訴える人達がいたのにこれを取り上げず、また法廷闘争でジャニー元社長の性加害が認定されている(最高裁平成16年2月24日決定、東京高裁平成15日7月15日判決)のに(ジャニー元社長の虚偽主張、嘘が明らかとなったのに)、それを組織体として顧みることがなかった同族経営の弊害も明らかとなっていますが、同時にこれらの事実を報道して来なかったメディアの責任も、大きく問われています。

現在、被害者の会のメンバーとして声を上げている方々は、既にジャニーズ事務所を退所されている方々ばかりです。他方で、今もジャニーズ事務所に在職されている方々の中にも被害者がいることは容易に想像できます(調査報告書では、ヒアリング調査の結果として、1950年代から2010年代半ばまで満遍なく性加害が存在とか、性被害を受け入れた人ほど出世していくなどと記載)。
今もメディアで活躍されているメンバーの、昔の性被害が今後明らかになることは、彼らのプライバシーを侵害してしまうものであり、マスメディアで議論する上では非常に悩ましい問題です。

伯父でもある人物による、所属タレントに対する性加害という複雑な環境下にいた藤島ジュリー社長(調査報告書発表時)の立場には、一面同情すべき点もあるように思いますが、そのような異常な行動をしている社長のことを知らなかった、黙認していたという釈明だけではなかなか納得感が得られるものではありませんし、その組織の中で稼ぎを得て、これまで自らも利益を得てきたことは否めませんので、やはり組織の代表者の言動としてはお粗末です。調査報告書でも、取締役就任時から伯父による性加害の可能性については認識していたこと、積極的な被害調査の行動を起こさなかったことなどが報告されています。
調査報告書では、性加害が繰り返されてきた背景として、①同族経営の弊害、②ジャニーズJr. に対するずさんな管理体制、③ガバナンスの脆弱性(取締役会の機能不全と各取締役の監視・監督義務の懈怠、内部監査部門の不存在、基本的な社内規程の欠如、内部通報制度の不十分さ、ハラスメントに対する不十分な研修、④マスメディアの沈黙、⑤エンターテインメント業界の問題などの項目にて整理され、それを踏まえた再発防止策も提言されています。

④マスメディアの沈黙に関しては、視聴率を稼ぎやすいジャニーズタレントの出演する番組を多数抱えてきた民放テレビ局が、ジャニーズ事務所との相互関係・力関係からこの問題につき大きく報道して来なかった力学には理解できる面もありますが、NHK までこの力学に影響されてこれまで真実を極力放送してこなかったことなど、メディア業界全体としての未成熟さや、正義の意識の欠如などを感じざるを得ません。
マスメディアなど規制された業界は、規制によって守られる中で徐々に腐敗していく傾向にあるものですが、海外メディアやSNS などの外からの力によって、規制産業の在り方にメスが入って、業界が変革していくのは、世の常なのだろうと思います。

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