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弁護士のコラム

公開日:2023.11.01

所有者不明土地・建物管理制度等の活用

桑原ブログ

2023 年4月1日に改正民法が施行されて、所有者不明土地・建物に関する管理制度が始まりました(民法264-2,264-8)。
所有者が判然としない土地や建物があって困っている人(利害関係人)がいる場合に、従前の民法では不在者財産管理人や相続財産管理人などの選任申立てをしなければならないとされていました。

しかしながら、これら管理人は、不在者や被相続人の財産全般を管理しなければならないため、調査活動を含めてその負担が大きく、申立てをする際に30万円~100万円程度の予納金を納めなければならないものとされ、利用が敬遠される理由の1つとなっていました。また、そもそも所有者が特定されていなければ、これらの制度が利用できないことも課題とされてきました。

今回の法改正によって、所有者が特定されていなくても利用でき、特定の土地・建物に限られるので比較的低額の予納金で、所有者不明管理人を選任してもらえるようになりました。

要件としては、当該土地又は建物の、①所有者が不明な場合、②所有者の所在が不明な場合のいずれかとされています。
①については、登記簿上不明な場合や未登記建物等でその所有が不明な場合が考えられます。
②については、氏名は明らかだが当該氏名の方の住民票等を探索しても見つからない場合(行方知れず)が典型です。相続が絡む場合には、全相続人の居所を探索しなければなりませんので、1人でも行方知れずの方がいれば利用する余地が出て来ます。

また、申立権のある「利害関係人」の範囲についても、近隣で困っているなどの場合だけでなく、民間の買受希望者についても申立権がありうると解釈されているようです。

また、同じく2023 年4月1日の改正民法により、管理不全土地・建物管理制度も始まりました(民法264-9,264-14)。

この制度は、誰が所有者かははっきりしているが、当該所有者による不動産管理が不適当で、「他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある」場合に、管理不全管理人が選任されることになっています。

ごみ屋敷に近い状態の物件や、隣地にがけ崩れのおそれのある土地や倒壊するおそれのある建物に関して、その近隣の方などにより、この制度の活用が期待されるところです。

ただし、原則として所有者の陳述を聴かなければならないとされていますので、所有者が管理不全管理人の選任に断固反対する場合には、本制度は実効性がなくなってしまう可能性もあるようです。

現状制度も始まったばかりで、裁判所の統計情報も公表されておらず、利用状況については判然としませんが、近隣に困った物件が思いつかれる方は、一度、改正民法による各種管理命令制度が活用できないかどうか、検討されてはいかがでしょうか。

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