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弁護士のコラム

公開日:2023.11.28

ステルスマーケティング規制の開始

桑原ブログ

令和5年10月1日から、ステルスマーケティング(広告主が自らの広告であることを隠したまま広告を出稿すること)が、景品表示法上、禁止されることになりました。

従前から、景品表示法5条において、いわゆる「不当表示」は禁止されていました。そして「不当表示」として、
① 優良誤認表示 (商品やサービスの品質、規格などの内容について、実際のものや事実に相違して競争事業者のものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認されやすい表示) 例:育毛剤を使用するだけで、あたかも発毛効果が得られるかの表示など
② 有利誤認表示
(商品やサービスの価格などの取引条件について、実際のものや事実に相違して競争事業者のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認されやすい表示) 例:販売価格より高い価格を併記して、実際の販売価格が安いかのように表示するなど
③ 内閣総理大臣が指定するその他不当表示
(商品やサービスに関する事項について、不当に顧客を誘引し、一般消費者に誤認されやすい表示として、内閣総理大臣が指定したもの) 例:商品の原産国に関する不当表示や、おとり広告に関する表示など
が規定されていました。

いわゆるステルスマーケティングは、不当に顧客を誘引するものですので、上記③に該当しそうですが、それまでの6つの「指定商品(役務)」に「ステルスマーケティング」の手法が定められていなかったため、禁止の対象とはされずに、消費者庁による措置命令(違反表示の差止、違反したことの一般消費者への周知、再発防止等)を発令することができない状態でした。

今回、内閣総理大臣の告示として、「事業者が自己の供給する商品や役務の取引(サービス)について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められもの」が指定されましたので、「ステルスマーケティング」の手法が、法律上も禁止対象となった訳です。

「事業者による表示」が規制の対象ですので、口コミ投稿を頼まれたインフルエンサー自体や、場を提供したSNS 事業者等が、法律違反となるものではありません。

事業者の表示であるのか、第三者の自主的な意思による表示であるのか、判断が微妙な事案もあります。例えば、事業者が、自社商品の愛用者であるインフルエンサーに対して、SNS 投稿してくれたら嬉しいと伝えて商品をプレゼントしたところ、インフルエンサーが自主的に投稿してくれたような場合です。消費者庁のガイドブックでは、インフルエンサーによる投稿の自主性の度合いによって、違法か合法か、判断は分かれるように解説されています。

また、媒体としては、SNS、EC サイト、ポータルサイトなどインターネット上の口コミ投稿やインフルエンサーを装った広告などが主な規制対象となるのでしょうが、これに限られるものではなく、新聞やテレビ、ラジオ、雑誌などの媒体も含まれます。

一般消費者にとって、事業者による広告であることが明瞭であれば規制する必要がありませんので、「事業者の表示であることが分かりにくいこと」も規制するための要件となっています。

事業者の皆様も、自社サイトやSNS サイトを活用されていることと思われますが、消費者庁による措置命令の対象となってしまうのは法務リスクとしても大きいものです。この機会に、自社のサイト上の表示や投稿がステルスマーケティングと評価されるおそれはないか、検証されてみてはいかがでしょうか。

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