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COLUMN

弁護士のコラム

公開日:2023.12.28

私人逮捕系ユーチューバーの逮捕報道

法律コラム

12月に入って、ぐっと寒くなってきました。温度変化が激しいので、睡眠・栄養・防寒対策をしっ
かり行うなど体調管理に注意しましょう。
さて近頃、表題の報道をたびたび目にするようになりました。ユーチューバーが、犯罪者(とされる
人)を追い詰めて、素人であるにもかかわらず身柄を拘束して、その動画をユーチューブに投稿する
訳です。
ユーチューバーはより過激な動画を投稿することで、閲覧数・クリック数を増やして広告料を稼ぎた
かったとのことのようですが、このような一般素人による逮捕行為(=私人逮捕)は、そもそも許さ
れるのでしょうか。

逮捕とは、被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐために、一時的に身柄を強制的に拘束することです。被疑
者からすれば、自らの行動の自由を奪われるものですので、逮捕行為は原則として違法であり、逮捕
罪(刑法220条)という犯罪も成立するのが原則です。
しかし、例外として認められているのが、刑事訴訟法213条の「私人逮捕」です。
現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
刑法上犯罪として規定されている逮捕行為を、例外的に合法とする根拠条文です。

あくまでも、「現行犯人」であることが要件ですので、その要件を満たしていない状態での私人によ
る逮捕は、違法かつ犯罪行為であるということへの理解が大切です。

しかし、「現行犯人」の定義も、かなりのグレーゾーンがあります。
刑事訴訟法212条では、「現行犯人」の定義について、以下のとおり定めています。
現に罪を行い、又は現に罪を行い終った者を現行犯人とする。
①犯人として追呼されているときや、②盗んだ物や明らかに犯罪に用いた凶器等を所持しているとき、③身体や服に犯罪の顕著な証拠があるとき、④呼ばれて逃走しようとするとき、には、「現行犯人」とみなす。

例えば、①男性がある女性を追いかけて、「その女を捕まえてくれ~」と叫んでいた場合に、「その女」が現行犯人かは微妙です。女性が男性の財布を盗んで追いかけられている可能性もありますが、別れ話のもつれで追いかけられているだけかもしれません。

また、④いかつい男性2名が覚せい剤所持のうわさのある細身の男性に近付いて声掛けをし、細身の
男性が逃げだした場合に、「呼ばれて逃走しようする」には該当しそうですが、覚せい剤所持の発覚
を恐れて逃走したのか、いかつい男性が2名も近付いてきたので単に怖くなって逃げただけなのかも
しれません。

結局は、結果論として、「その女」が窃盗犯であり、「細身の男性」が覚せい剤を所持していれば、私人による逮捕行為は合法とされるのかもしれませんが、全くの冤罪だった場合には、逮捕行為をした者が「逮捕罪」で逮捕される可能性もある訳です。
さらには、ユーチューブという動画にアップロードする行為は、被害者に対する名誉棄損罪(刑法2
30条)にも該当して、こちらの犯罪でも処罰される可能性があります。

私人逮捕を実質的な職業とするような活動は、辞めるべきでしょう。

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