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弁護士のコラム

公開日:2024.03.26

令和6年4月1日 相続登記の義務化開始

桑原ブログ

令和6年4月1日から「相続登記の義務化」が始まります。
相続によって不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。また、遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記をしなければなりません(不動産登記法76条の2)。そして、正当な理由なく相続登記申請義務に違反した場合には、10万円以下の過料の制裁が課せられることになっています(不動産登記法164条)。
相続登記の義務化ですが、令和6年4月1日以前に開始した相続にも適用されます(不動産登記法改正附則5条6項)ので、相続登記されていない過去の相続物件すべてに適用されます。法律施行日から3年間の猶予期間が設定されていますので、令和9年3月31日までに相続登記を済ませなければならない、ということです。
ところで、所有名義が曾祖父や祖母名義のままであるといった土地も多く、法定相続人が数人~数十人単位となる場合には、戸籍の探索活動も大変で、それだけで数か月以上の期間を要する場合もあり得ます。また、法定相続人間でもめてしまった場合には、猶予期間である3年を経過しても当該不動産相続のあり方が決まらない、という事態も想定されます。そのような場合の多くは、「正当な理由」で相続登記できない訳ですので、3年以内に相続登記をしなかったとしても過料の制裁とならないことが多いでしょうが、いかなる場合に過料が課せられるか判然としないため、不動産を法律上相続することとなった多くの方が不安定な状態に置かれてしまいます。
そこで、暫定的に相続が発生した事実を法務局に届出をする「相続人申告登記制度」も設けられています(不動産登記法76条の3)。これは、被相続人と届出人本人の戸籍等だけを取り寄せて、相続が開始した旨と、自らがその相続人である旨を申し出ることで、相続登記申請義務を履行したとみなす制度です。戸籍取寄せの範囲が少なく、他の相続人らの関与なく単独での申請が可能であるなど、相続人が容易にできる手続となっています。とはいえ、不動産についての権利関係を対外的に公示する訳ではないので、いずれどこかで相続に関する正規の登記をしなければ、対外的に自らが当該不動産の単独所有者であることを訴えづらいという状況は変わりません。

相続登記が義務化されることで、一定数の不動産に関しては相続登記が促進されるのでしょうが、相当程度の不動産については放置されてしまうことが予想されます。そうした場合、法務局が法定相続人に過料の制裁を発動しながら、相続登記の履行を促していくことになるのでしょう。また、再び何らかの法改正が行われ、相続登記が法務局主導で強力に進められていくことになるのかもしれません。

いずれにせよ、手間やコストの面から敬遠されがちな登記手続。国も手間とコストを削減する様々な仕組みをいろいろと検討しているようですので、ご自身が該当する場合にはきちんと義務を尽くすようにいたしましょう。

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