公開日:2019.10.18
CASE
- 労働問題(企業側)
- 労働問題(労働者側)
警察に逮捕された従業員を懲戒解雇できる?
目次CONTENTS
Q.逮捕された従業員を懲戒解雇としても問題ないでしょうか?
先日、従業員Aが居酒屋で泥酔し、店員を殴って警察に逮捕されてしまいました。その後起訴され、罰金刑となりました。犯罪者を従業員のままにしておくわけにはいきません。我が社の就業規則には、懲戒解雇事由として「私生活上の非行により有罪判決を受けたもの」というものがあります。懲戒解雇としても問題ないでしょうか。
A.懲戒解雇とできるか否かはケースバイケースです。
使用者は、企業秩序を定立し、維持する権限を持つとされており、その一環として、一定の条件下では懲戒権を行使することができるとされています。
それでは、上記のようなケースで懲戒解雇とすることもできるのでしょうか。
飲みの席での暴行ですので「私生活上の非行」とはいえそうです。また、これにより罰金刑の「有罪判決」を受けてもいます。よって、「就業規則に定める懲戒解雇事由に該当するので、懲戒解雇として特に問題ない」と考えることもできそうです。
もっとも、場合によってはそう簡単ではありません。というのも、懲戒権は先に述べたとおり企業秩序の維持のための権限です。私生活上の非行が直ちに企業秩序を乱すことにつながるでしょうか。つながる場合もあればつながらない場合もあるといったところかと思います。
つながらないような場合にまで懲戒解雇としてしまうと、のちに「当該解雇が無効と判断されてしまう(労働契約法15条、16条)」、「解雇後無効と判断されるまでの間Aは働いていないのに働いていたものとして給料を支払わないといけなくなる」…ということになりかねません。
実際に、無効と判断した裁判例も数多く存在します。ですので、是非とも慎重な判断をなさることをお勧めいたします。

【監修】 弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋 (代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。