公開日:2019.10.29 最終更新日:2022.08.25
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過失致死罪と過失傷害罪|業務上過失致死傷罪と重過失致死傷罪|違いを解説
【本記事の監修】 福岡の弁護士 弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋 (代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。
目次CONTENTS
この記事では,①過失致死罪と過失傷害罪、②業務上過失致死傷罪と重過失致死傷罪、③自動車運転過失致死傷罪について、それぞれ弁護士が解説いたします。
①過失致死罪と過失傷害罪
刑法第210条 過失により人を死亡させた者は,50万円以下の罰金に処する。 |
刑法は,故意による犯罪を原則としており,過失の処罰は例外とされています(刑法38条1項)。本条における行為は,過失により人を死亡させることであり,故意により人を死亡させた場合は,殺人罪(刑法199条)となります。
また,結果が傷害にとどまる場合には,過失傷害罪が成立します。
刑法第209条第1項 過失により人を傷害した者は,30万円以下の罰金又は科料に処する。 |
過失致死罪(刑法第210条)と過失傷害罪(刑法第209条)における過失とは,業務上の過失,重過失,自動車運転上の過失に当たらない注意義務違反を意味します。
具体的な例としては,スポーツでの事故,自転車と歩行者の事故などが挙げられます。
②業務上過失致死傷罪と重過失致死傷罪
仮に,業務性がある場合には「業務上過失致死傷罪」が問題となり,過失の程度が重い場合には,「重過失致死傷罪」が問題となります。
刑法第211条第1項 業務上必要な注意を怠り,よって人を死傷させた者は,5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も,同様とする。 |
業務性がある場合や,過失が重い場合には,格段に重い刑罰が課されることになります。
「業務性」の意義
本条における「業務」とは,本来人が社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為であって,かつ,その行為は他人の生命身体等に危害を加えるおそれのあるものをいいます(最判昭和33年4月18日)。
「重過失」の意義
本条における「重過失」とは,一般的には,注意義務違反の程度が著しいことをいいます。
③自動車運転過失致死傷罪
自動車を運転していたところ,過失により傷害を負わせたか,死亡させた場合には,自動車運転過失致死傷罪が成立します。
自動車運転過失致死傷罪は,単なる過失致傷罪よりも刑罰が重く,業務上過失致死傷罪や重過失致死傷罪よりも重く規定されています。
刑法第211条第2項 自動車の運転上必要な注意を怠り,よって人を死傷させた者は,7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし,その傷害が軽いときは,情状により,その刑を免除することができる。 |
なお,「傷害が軽いとき」にあたるか否かは,加療期間のみではなく,傷害の種類,内容等も考慮し,社会通念によって決定されることになります。
(参考文献:「条解刑法 <第3版>」(編)前田雅英ほか,弘文堂,2013年)
※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。