MENU
お問合せ

LEGAL COLUMN

法律コラム

公開日:2022.09.01

CASE

  • 法律コラム
  • 労働問題(企業側)
  • 企業法務

女性活躍推進法|2022改正|一般事業主行動計画とは|わかりやすく解説

目次CONTENTS

女性活躍推進法は、働く場面で活躍したいという希望を持つ女性が、個性と能力を発揮できる社会を実現するために成立しました。2019年には改正⼥性活躍推進法が成立し、2022年4⽉に全⾯施⾏されました。一般事業主⾏動計画の策定や女性の活躍に関する情報公表の義務が、常時雇用する労働者数が301人以上の事業主から101人以上の事業主まで拡大されています。

今回は、新たに対象となった中小企業(常時雇用する労働者数が101人以上300人以下)を中心に、企業が求められる対応について、福岡・佐賀の弁護士法人 桑原法律事務所の弁護士が解説します。

女性活躍推進法 改正2022 中小企業の対応とは

女性活躍推進法とは

女性活躍推進法とは、正式には「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」といいます。女性が個性や能力を十分に発揮して働きやすい社会の実現を目指し、成立した法律です。2025年度末までの時限立法とされています。

働きたいと希望しながら、出産や育児などが壁となり、非正規雇用や職につけないといった女性が多い状況などを背景に、企業に対して女性の採用や管理職への登用を促す行動計画の策定を求めています。

行動計画の策定・公表の義務が、労働者101人以上の中小企業にも拡大

2022年4月1日から、女性活躍推進法に基づく「一般事業主行動計画」の策定・届出、情報公表が義務づけられる事業主の範囲が拡大されました。改正前は、常時雇用*する労働者が301人以上の事業主が対象でしたが、101人以上の事業主も対象となりました。

*「常時雇用」とは、正社員だけでなく、契約社員・パート・アルバイトなどの名称にかかわらず、以下の要件に該当する労働者も含みます。

  • 期間の定めなく雇用されている者
  • 一定の期間を定めて雇用されている者であって、過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者、または雇い⼊れの時から1年以上引き続き雇用されると⾒込まれる者

一般事業主行動計画とは

一般事業主行動計画とは

「一般事業主行動計画」とは、企業が自社の女性活躍についての状況を把握し、課題を分析したうえで、行動計画を策定するものです。

常時雇用する労働者数が101人以上300人以下の事業主については、以下の1〜4の取り組みが義務づけられました。

  1. 自社の⼥性の活躍に関する状況把握、課題分析
  2. 1つ以上の数値目標を定めた⾏動計画の策定、社内周知、外部公表
  3. ⾏動計画を策定した旨の都道府県労働局への届け出
  4. 取り組みを実施し、効果を測定

詳しくはこちら

常時雇用する労働者数が101人以上の企業で、まだ一般事業主行動計画の策定を行っていない企業は、早めに取り組みましょう。

なお、常時雇用する労働者数が100人以下の事業主については、上記1〜4が努⼒義務とされています。

女性の活躍に関する情報公表の義務:中小企業が公開すべき情報とは

常時雇用する労働者数が101人以上300人以下の事業主は、下記【1】【2】の全項目(計16項目)から任意の1項目以上を選択し、公表しなければなりません。

【1】⼥性労働者に対する職業⽣活に関する機会の提供

  • 採用した労働者に占める女性労働者の割合(区)
  • 男女別の採用における競争倍率(区)
  • 労働者に占める女性労働者の割合(区)(派)
  • 係長級にある者に占める女性労働者の割合
  • 管理職に占める女性労働者の割合
  • 役員に占める女性の割合
  • 男女別の職種または雇用形態の転換実績(区)(派)
  • 男女別の再雇用または中途採用の実績
  • 男女の賃金の差異*2022年7月新設
    →男性労働者の賃金の平均に対する女性労働者の賃金の平均を割合(パーセント)で示します。常時雇用する労働者が301人以上の事業主については2022年7月、公開が必須になりました。

【2】職業⽣活と家庭⽣活との両⽴に資する雇用環境の整備

  • 男女の平均継続勤務年数の差異
  • 10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用
  • 割合
  • 男女別の育児休業取得率(区)
  • 労働者の一月当たりの平均残業時間
  • 雇用管理区分ごとの労働者の一月当たりの平均残業時間(区) (派)
  • 有給休暇取得率
  • 雇用管理区分ごとの有給休暇取得率(区)

厚生労働省リーフレット「令和4年4月1日から女性活躍推進法に基づく行動計画の策定・届出、情報公表が101人以上300人以下の中小企業にも義務化されます」より

上記のうち、

  • (区)のマークがあるものについては、雇用管理区分ごとの公表が必要です。
    *「雇用管理区分」とは、職種、資格、雇用形態、就業形態などの労働者の区分です。たとえば「正社員、契約社員、パートタイム労働者」といった区分や、「事務職、技術職、専門職」といった区分が想定されます。
  • (派)のマークがあるものについては、派遣労働者を含めて公表が必要です。

なお、常時雇用する労働者数が301人以上の企業については、上記【1】【2】の区分からそれぞれ1項目以上(計2項目以上)を選択し、公表することが義務付けられています。

Q.行動計画はどのように策定すればよいでしょうか?

行動計画はどのように策定すればよいでしょうか?

A. 一般事業主行動計画の策定の流れは、下記のとおりです。

1:女性労働者の「活躍状況の把握」と「課題分析」

必ず把握すべきこと|女性労働者の活躍状況の把握と課題分析

まずは、自社における女性労働者の活躍状況を、以下の基礎項目に基づいて把握しましょう。そして、把握した状況から課題を分析します。

必ず把握すべき基礎項目

  • 採用した労働者に占める女性労働者の割合(雇用管理区分ごとに把握)
  • 男女の平均継続勤務年数の差異(雇用管理区分ごとに把握)
  • 管理職に占める女性労働者の割合
  • 労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間の状況

*「雇用管理区分」とは、職種、資格、雇用形態、就業形態などの労働者の区分です。たとえば「正社員、契約社員、パートタイム労働者」といった区分や、「事務職、技術職、専門職」といった区分が想定されます。

2:行動計画の「策定」と「社内周知」

上記1の分析結果を踏まえて、一般事業主行動計画を策定します。行動計画には、下記の項目などを盛り込みます。

  • 計画期間:2025年度までの期間で、自社の実情に応じておよそ2~5年間に区切り、定期的に⾏動計画の進捗を検証しながら、改定する。
  • 数値目標の設定
    ・常時雇用する労働者数が101人以上300人以下の事業主の場合: 上記【1】【2】に挙げた16項目のうち、1つ以上についての数値目標
    ・常時雇用する労働者数が301人以上の事業主の場合: 上記に挙げた【1】【2】の区分からそれぞれ1項目以上(計2項目以上)
  • 取り組み内容:数値目標の設定を⾏ったものにつき、目標達成に向けてどのような取り組みを⾏うべきかを検討します。
  • 取り組みの実施時期

策定した行動計画は、すべての労働者に対し、周知します。事業所の⾒やすい場所への掲示や、電子メールでの送付、企業内ネットワークへの掲載、書⾯での配布などの方法により周知しましょう。

3:行動計画を策定した旨の「届け出」と「外部公表」

一般事業主行動計画を策定したことを、管轄の都道府県労働局に届け出ましょう。電子申請、郵送、持参といった方法で届け出ることができます。

また、策定した行動計画を外部に公表しましょう。公表にあたっては、厚⽣労働省が運営する「⼥性の活躍推進企業データベース」や自社のホームページなどを活用しましょう。

女性の活躍推進企業データベースはこちら

女性の写真

4:取り組みの効果を測定

定期的に数値目標の達成状況や、一般事業主行動計画にもとづいた取り組みの実施状況を点検・評価します。さらに、その結果をその後の取り組みや計画に反映させ、PDCAサイクル(計画:Plan、実⾏:Do、評価:Check、改善:Action)を確⽴しましょう。

詳しい流れはこちら(厚生労働省)

Q.女性活躍推進法に取り組む企業のメリットとは?

A. 企業が女性活躍推進法について積極的な取り組みを行うことで、以下のような効果も期待できます。

  • 人手不足の解消
  • 従業員の定着率やモチベーションの向上
  • 企業イメージや認知度の向上
  • 人材の多様性(ダイバーシティ経営)
  • 採用活動における競争力の向上

など

女性活躍推進法への対策は弁護士の活用もご検討ください

一般事業主行動計画の策定にあたってご不安な点があれば、ぜひ当事務所の弁護士にご相談ください。

また、顧問契約の活用もおすすめいたします。

企業活動においては、労働問題をはじめ、様々な法的問題が生じる可能性があります。問題が生じた場合への対応はもちろん、問題が生じる前であってもトラブル予防のために、包括的な法的アドバイスを提供し、安定した企業経営を支援いたします。

 

「医療・介護」「飲食・ホテル」「小売・店舗」「保育園」「タクシー」「士業」「不動産」「コンサルタント」「人材サービス」「フィットネス」など30名以下のサービス業に特化した顧問弁護士サービス
月額11,000円でお試し可能!詳しくはこちらをご覧ください >

 

※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。