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法律コラム

公開日:2023.04.17

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雇用保険制度とは | 料率0.2%引き上げへ | 弁護士が解説

目次CONTENTS

厚生労働省は2023年4月、労使が払う雇用保険料率を0.2%引き上げ、1.55%にする方針である、と報道されています。その負担は、企業側が0.95%、労働者が0.6%となります。雇用保険制度について、福岡・佐賀の弁護士法人 桑原法律事務所の弁護士が解説します。

雇用保険制度とは

雇用保険は政府が管掌する強制保険制度で、労災保険とともに「労働保険」を構成する保険のひとつです。事業主が労働者を1人でも雇う場合、「労働保険」に加入しなければなりません。

労災保険:業務上の事故や災害によるけがや業務に起因する病気、障害に対して補償する保険です。

雇用保険:失業した場合や教育訓練を受ける場合に給付されます。また労働者の生活や雇用の安定を図り、再就職の援助を行うことなどを目的としています。

 

雇用保険の適用事業所とは

原則として、労働者を1人でも雇用している事業所は、労働者を雇用保険に必ず加入させなければなりません。業種や労働者規模、法人や団体、個人といった業務形態を問わず、雇用保険の適用事業所として事業所を管轄するハローワークに届け出をする必要があります。

例外は、一部の農林水産業を営む個人経営の事業で、年間を通じて雇用する労働者が5人未満の場合、「暫定任意適用事業」として任意加入となります。

対象となる労働者とは

雇用保険の適用事業に雇用される労働者は、原則としてその意志にかかわらず被保険者となります。ただし例外として下記のいずれかの場合、適用から除外され、被保険者となりません。

  • 1週間の労働時間が20時間に満たない
  • 31日以上雇用されることが見込まれない
  • 会社の取締役、会社役員(例外あり)
  • 個人事業主や法人代表者と同居の親族(一定の条件を満たせば加入は可能)
  • 学生(夜間・定時制課程の学生は除く)

 

雇用保険、入社時の手続き

事業主は、雇い入れた労働者が雇用保険の被保険者となる場合、必ず「資格取得届」を、雇用した日(被保険者となった日)の属する月の翌月 10 日までに、公共職業安定所(ハローワーク)に提出します。

確認されると「雇用保険被保険者証」とあわせて「雇用保険資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」が交付されます。

この2つの書類は、労働者が、きちんと雇用保険の加入手続きがなされたことを確認できるようにする書類です。

事業主は、この2つを被保険者本人に確実に交付する必要があります。

雇用保険、退職時の手続き

雇用者が退職する場合、事業主は「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を公共職業安定所に提出します。

労働者には離職したあと「雇用保険被保険者離職票(通称<離職票>)」が交付されることが一般的です。

離職票は、労働者が交付を希望するときに作成されますが、59歳以上の労働者の場合、本人が希望しなくても必ず交付されることになっています。

この離職票は、基本手当など失業時の給付を受ける際の手続きで必要です。まだ再就職先が未定である場合など、失業する期間がある人が基本手当などの給付を受けるためには、離職票に必要書類を添えて手続きをする必要があります。

 

雇用保険料とは

雇用保険料の支払いは事業主と労働者の双方が負担します。労使折半ではなく、事業主が多く支払うようになっています。

雇用保険料の対象となる賃金には、給与だけでなく賞与も含まれます。雇用保険料の対象・対象外となる賃金は下記などです。

対象となる賃金:給与、賞与、通勤手当や残業(超過勤務)手当、深夜手当など

対象外の賃金:役員報酬や退職金、出張旅費や宿泊費など

雇用保険料は残業手当などにより、総賃金額が変わると金額が変わります。このため事業主は労働者の雇用保険料を毎月、計算する必要があります。

一方、労災保険料は事業主が負担し、労働者の負担はありません。

 

雇用保険料率とは

雇用保険料は、毎月の給与総額に「雇用保険料率」を掛けて算出されます。厚生労働省は失業率や実質賃金などを基準に財源に応じて、雇用保険料率を毎年、見直しています。

負担の割合は労働者と事業主で折半ではなく、事業主の負担が大きくなっています。業種が3種類あり、それぞれでも保険料率は異なります。

2022年10月~2023年3月における負担は、下記の通りとなっています。

 

  • 一般の事業:賃金の1.35%(労働者0.5%、事業主0.85%)
  • 農林水産・清酒製造の事業:賃金の1.55%(労働者0.6%、事業主0.95%)
  • 建設の事業:賃金の1.65%(労働者0.6%、事業主1.05%)

 

雇用保険料率の引き上げとは

2023年4月から雇用保険料率を0.2%引き上げられました。

コロナ禍が長引き、雇用調整助成金の給付や失業手当が増加し、財源不足が深刻化したためとされています。

一般の事業所では現在、前述のように保険料率が賃金の1.35%ですが、2023年4月から1.55%に引き上がります。分担の割合は事業主側が0.95%、労働者側は0.6%となる方針で、事業主・労働者のいずれにも影響があります。

月給20万円の場合、企業側は現在の月額1700円から1900円に、労働者側は1000円から1200円に負担が増える計算です。

 

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※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。