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公開日:2017.03.25

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従業員の競業避止義務や引き抜き|誓約書で制限できる?|弁護士が解説

目次CONTENTS

従業員の競業避止義務という問題をご存知でしょうか。従業員は、職業選択(退職、転職等)の自由を有していますが、他方で、就業している会社の利益を損なうようなことはしてはいけません。そこで、従業員の権利と会社の利益をどう調整するかという問題が出てきます。競業避止義務について、桑原法律事務所の弁護士が解説いたします。

競業避止義務のポイント

競業避止義務のポイント

競業避止義務と一言でいっても、従業員の役職、競業避止特約の有無、競業の時期、競業の内容等によって様々です。

今回は、大まかなポイントのみをご説明します。

1. 従業員の役職

従業員は会社と雇用契約を結ぶことにより、雇用契約に付随する義務として、会社に対して競業避止義務を負うことになります。

また、取締役であった場合には、会社法に定められた義務として忠実義務、競業避止義務を負うことになります。

2. 競業の時期

従業員による競業が退職前の場合には、会社は従業員に対して、懲戒処分(懲戒解雇など)退職金の不支給競業の差止め訴訟損害賠償請求訴訟等で責任を追及することが考えられます。

他方、退職後の場合には、競業の差止め訴訟損害賠償請求訴訟等で責任を追及することが考えられます。

ただ、退職後の従業員については、退職した後の転職先、業務内容等は従業員の自由が保障されるべきであるため、社会的相当性を逸脱した行為のみについて責任を負うことになります。

3. 競業の内容

様々ありますが、従業員の引き抜き行為や取引先(顧客)の簒奪(さんだつ)行為が一般的な競業として挙げられることが多いです。

会社員の写真

従業員の引き抜きは競業避止義務に違反する?

Q. 家電量販店A社を経営しているXです。A社の営業本部長Yが、他の従業員達を連れてライバル会社のB社に転職してしまいました。Xが新人のころから手塩にかけて育ててきたのに悔しい気持ちでいっぱいです。どうにかならないのでしょうか。

Yの行為は、まさに従業員の引き抜きであり、競業避止義務に違反するとしてYに責任追及ができる可能性があります。

「うちにかぎってそんなことはない」と考える経営者の方も多いとは思いますが、競業避止義務は会社の経営を揺るがす問題にも発展しかねませんので、注意が必要です。

退職した従業員の競業避止義務|誓約書で制限できる?

Q. 学習塾を経営しています。独自のノウハウを構築し、子どもへの学習指導を行っていますので、難関校といわれる学校にも幾人もの子ども達を送り出しています。

この度、学習塾の講師Aが退職をしたいと申し出てきました。Aは、わが社の看板講師だったので、辞めないように説得したのですが叶わず、せめてもの措置ということで、Aが自分の塾を立ち上げ、そこでわが社のノウハウを活かすことだけは阻止しようと思い、「私は、退職したのち、自分で塾を発足しないことを誓約します」という内容の誓約書を書いてもらいました。

快く応じてくれたので安心していたのですが、なんと、このたびAが、うちの塾から数キロと離れていない場所で塾を立ち上げ、生徒を募集しているという話を聞きました。これって違法ではないのでしょうか?

多くの方は、「塾を発足しませんという内容の誓約書にサインをしたのだから、Aの行為は違法だ」と思われたのではないでしょうか。

確かに、Aの行為は、誓約書にて約束したことに正面から抵触します。よって、誓約書による誓約内容が有効である以上、Aの行為は違法ということになります。

内容を確認した上で誓約書にサインしたのだから有効だろうと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そう簡単ではありません。

なぜなら、この誓約書は、Aの職業選択の自由という憲法上の権利を過剰に誓約している可能性があるからです。人が経済活動をしていく上で約束は非常に大事なものですが、憲法上の権利を過剰に制限することまでは許されません。

近時、裁判所は、この争点について、誓約における制限の時間・範囲(地域・職種)を最小限にとどめることや一定の代償措置を求めるなど、厳しい態度をとる傾向にあるようです

もし、貴社の同種事案に関する規定が広範なものである場合は、見直しを検討されることをお勧めいたします。

誓約書を取り交わすイメージ

競業避止義務違反には慎重な対応を

従業員に対して競業避止義務違反を追及する場合には、慎重に対応する必要があります(従業員を解雇したものの証拠もなくかえって従業員から訴訟を起こされるなんてこともあるかもしれません)。

事前に弁護士にご相談のうえ、適切なアドバイスを受けることをおすすめいたします。

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※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。