公開日:2017.11.25 最終更新日:2021.10.21
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従業員から突然退職の申し入れがあったら|期間の定めのある労働契約 と 期間の定めのない労働契約
【本記事の監修】 福岡の弁護士 弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋 (代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。
目次CONTENTS
「育成中の従業員が、ある日突然、辞めると言って来なくなってしまった」「パート従業員が急に退職したいと言ってきた」といった場合、法律関係はどうなるでしょうか。
従業員の採用や育成には相当の労力とコストがかかります。企業側からすると、「ある程度任せていた仕事もあったのに、突然来なくなって現場が回らなくなってしまった」「顧客とトラブルが生じてしまった」など、突然辞められては困る場合もあるでしょう。
この場合法律上は、期間の定めのある雇用契約の場合と、期間の定めのない雇用契約の場合とで、まったく異なる規律となっています。
期間の定めのある雇用契約の場合
期間の定めのある雇用契約の場合、やむを得ない事由がない限り、期間途中での従業員からの解約申入れ(退職届)は法律上無効です(民法626条、628条、労働基準法14条参照)。つまり、従業員は原則として、辞められません。
例えば、【 4月1日に、1年の期間を定めて雇用した従業員が、7月31日に突然辞めると言い出し、8月1日から来なくなった 】というケースも、従業員の側で「やむを得ない事由」(例えば、自身の疾病により労務提供が困難になったとか、親の介護が必要になったなど)を証明できない限りは、企業の側は解約申入れ(退職届)を無効として、従業員に対して「労務を提供せよ」と請求をすることも、損害賠償請求をすることも可能です。
期間の定めない雇用契約の場合
期間の定めない雇用契約の場合、2週間前に予告をすればいつでも解約申入れをすることができます(民法627条)。
したがって、上記のケースの場合ですと、7月17日に今月末をもって辞めると意思表明すれば、8月1日からは出社する義務も労務提供する義務もなくなります。
しかし、7月31日に突然辞めると言って翌日から来なくなった場合には、2週間の予告期間の経過をもって雇用契約が終了しますので、企業としては、「その間は労務を提供せよ」と請求したり、企業に生じた損害を従業員に対して賠償請求したりすることができるわけです。
なお、期間の定めのない雇用契約の場合に、就業規則で例えば3か月前の予告期間を定めていた場合であっても、従業員は民法627条により、2週間前に予告すれば足りる(労働基準法13条参照)との考え方が有力なようです。
そのため、3か月前に予告しなかったから辞めさせないというのは違法と判断されそうなので、注意をしましょう(期間の定めのある雇用契約の場合は別です)。
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