公開日:2018.06.25
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私的独占とは
【本記事の監修】 福岡の弁護士 弁護士法人桑原法律事務所 弁護士 桑原貴洋 (代表/福岡オフィス所長)
- 保有資格: 弁護士・MBA(経営学修士)・税理士・家族信託専門士
- 略歴: 1998年弁護士登録。福岡県弁護士会所属。
日本弁護士連合会 理事、九州弁護士会連合会 理事、佐賀県弁護士会 会長などを歴任。
目次CONTENTS
この記事では、私的独占について、弁護士が解説いたします。
私的独占とは
私的独占とは、独占禁止法2条5項で
「事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法をもつてするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」
と定義されています。
上記の定義から、私的独占は、次の3つに分割することができます。
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① 行為者が事業者であること
行為者は事業者であれば足り、それ以上に市場において有力であることは明文では要求されていません。
もっとも、以下に説明するように、排除の要件と競争の実質的制限という対市場効果の要件から、事実上、市場で有力な地位を有する事業者でなければ、規制の対象にはなりません。
② 行為者の行為が、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配すること
「排除」または「支配」が行為要件となっています。
「排除」とは
「排除」とは、他の事業者の事業活動を継続困難にし、または新規参入を困難にすることと解釈されています。
排除行為の典型例は、取引拒絶、差別対価、低価格販売、抱き合わせ販売、排他条件付取引などです。
これらの行為類型については、今後、不公正な取引方法をテーマにする場合に解説したいと思います。
「支配」とは
「支配」とは、他の事業者についてその事業活動に関する意思決定を拘束し、自己の意思に従わせることと解釈されています。
支配の方法としては、株式保有・役員兼任などの会社組織上の手段による支配と、取引上の有利な地位を利用することによる支配があります。
③ 行為者の行為により、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること
「一定の取引分野」とは
まず、一定の取引分野についてですが、私的独占の場合、排除・支配という競争行動の直接の制約を伴うため、排除・支配による競争制限の及ぶ範囲が一定の取引分野となります。
「競争の実質的制限」とは
競争の実質的制限ですが、裁判例上、
「競争自体が減少して、特定の事業者又は事業者団体がその意思で、ある程度自由に、価格、品質、数量、その他各般の条件を左右することによって、市場を支配することができる状態を形成、維持、強化することをいう。」(東京高判平成21年5月29日)
とされています。
これを受けて、排除型私的独占ガイドラインは、行為者の地位及び競争者の状況、潜在的競争圧力、需要者の対抗的な交渉力等の要素を判断要素としてあげています。
さいごに
事業者の行為が私的独占に該当するか否かは、非常に難しい判断ですので、気になる方は当事務所までお気軽にご相談ください。
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※本記事は、公開日時点の法律や情報をもとに執筆しております。